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Mochinoki Holly
【モチノキとは】
・東北地方南部(福島県)以西の本州、四国、九州及び沖縄の山地や海辺の林内に自生するモチノキ科の常緑樹。派手な庭木が増えた現代においてその知名度は低いものの、日本庭園には欠かせない植木であり、モッコク、モクセイと共に「庭木の三大名木」とされる。日本のほか朝鮮半島の南部や中国の暖地に分布。
・雌の木に赤い実ができること以外は年間を通じて変化が少なく、庭の背景を作るために使われることが多い。幹が太くて風格のあるものは主木として使われることもある。
・シラカシやシイなどと同様に高生垣として使われることもある。モチノキは葉が堅いため特に整然とした垣根になる。また、潮風に強いことから海岸沿いの防風、防潮用として、葉に水分が多いことから防火用として使われることもある。大気汚染にも強い。
・モチノキの葉は両端の尖った楕円形で長さ4~8センチ、幅2~3センチほど。枝から互い違いに生じ、革質で表面には光沢があり裏面は淡い緑色になる。稚樹のうちは葉の縁に多少のギザギザがあるが、成木の葉の縁にはギザギザがない。
・実のなる時期には赤と緑のコントラストが美しいが、果実はくすんだ朱色になりがちで、葉の緑色が濃すぎるため暗い印象を与えることも多い。
・モチノキは雌雄異株で、開花期の4月になると雌の木には雌しべ1つと退化した4つの雄しべを持つ雌花が咲く。雌花はたいてい1~4輪がまばらに咲くだけであまり目立たない。
・雄の木に咲く雄花には4本の雄しべがある。雄花は同じモチノキ科のタラヨウのように葉の付け根に2~15輪がこんもりと咲くため、見付けやすい。
・雌の木には秋(11~12月頃)になると直径1センチ程度の朱色の果実ができる。無味で食用にならないが、ヒヨドリ、ツグミ、メジロ、ジョウビタキなど野鳥がこれを採食する。しかし、画像のように年明けまで枝に残るものもあり、人気の品とはいえない。
・果実には種子が四つ入っており、モチノキの繁殖はこの実生によることが多い。
・モチノキという名は樹皮から鳥糯(とりもち)が採れることによるが、より良質の鳥糯ができるヤマグルマと共にトリモチノキという場合もある。
・現在は法律で禁止されているが、かつての子供たちはシノダケなどの先に鳥糯を付け、野鳥や昆虫を捕まえるのに用いた。トリモチは、夏に剥いだ樹皮を2~3か月ほど水に漬け込んで腐らせ、臼等で砕いて作る。
・庭木として小さく管理されるのが普通だが、放任すれば樹高は最大で20m以上、幹の直径は1mを超える。樹皮は画像のような灰褐色で滑らかだが、樹齢を重ねると細かな筋模様が入る。
・モチノキの材は堅くて緻密であり、その白さを生かして彫刻、ソロバンの珠(播州のものが有名)、数珠、ツゲの代用として櫛、印鑑などに使われる。樹皮は上記の鳥黐に使うほか、薬用、染料にされる。
【モチノキの育て方のポイント】
・暖地性の木であり、植栽の適地は東北南部以南となる。場所を選べば東北中部でも育てられるが、冬に葉が黄変して見苦しくなる。
・日照を好む木であるが、半日陰でも育つため家の北側にも使用できる。乾燥した場所よりは湿気のある場所の方が葉色は良くなる。やや粘土質で保水性と養分のある場所が理想的。
・成長が遅く、樹形が乱れにくいことがモチノキの長所だが、枝葉が密生するとカイガラムシが発生し、それに起因するスス病が起こりやすい。 また、ハマキムシ、ツノロウムシ、ルビーロウムシなどの発生も見られる。
・自然樹形はほぼ楕円形だが、庭で使う場合、多くは画像のとおり球状に刈り込まれる。刈り込まれた後の復元性は高いが、イヌツゲなどと比べれば葉が大きく、刈り込んだ直後の葉は見苦しくなる。
・剪定の適期は6月~7月と11月~12月で、年に二回行えばより良い。ただし、刈り込むのはかなり大きくなった個体に限り、樹齢の低いものは不要な枝を元から切除する程度にとどめる。また、上述の病害虫の被害を防ぐためには時折、枝を透かすような剪定が必要となる。花は前年に伸びた枝葉の付け根に咲くため、頻繁に刈り込むと開花、結実は望めない。
【モチノキの品種】
・園芸品種では、葉が黄色いオウゴンモチノキ(黄金葉モチノキ)や葉に模様が入る「白覆輪」や「斑入りモチ」、黄色い実がなる「キミノモチノキ」などが知られる。
・野生種では、西日本の一部地域に見られるシイモチ、日本海側の山地にのみ見られるヒメモチ、小笠原諸島に分布するシマモチ、その変種であるムニンモチなどがある。ヒメモチは積雪の多い環境に対応した変種で、多くの雪を乗せないよう葉幅を狭く、降雪で倒木しないよう幹や枝葉を横方向に伸ばす。
【モチと名の付く木】
モチノキの仲間であるもの、そうでないもの含めていろいろな「~モチ」がある。
モチノキは葉の付け根や軸が黄緑色だが、クロガネモチは紫がかった色になる。葉の色はクロガネモチの方が明るめ。かつてはモチノキ同様、鳥糯に使われ、現在は公園や街路に植栽される。
別名を「シナヒイラギ」といい、同じモチノキ科だがモチというよりはヒイラギに似た棘のある葉を持つ。
葉の縁にギザギザ(鋸歯)があること、新芽が赤いことで区別できる。よく似たレッドロビンと同じバラ科であり、モチノキとの直接の関連はない。
いずれもモクセイ科の常緑樹で、葉はツバキ並みに艶々し、葉脈が透けて見えるほど薄め。実はネズミの糞に例えられる黒色になる。
モチノキの基本データ
【分類】モチノキ科/モチノキ属
常緑広葉/小高木~高木
【漢字】黐の木(もちのき)
【別名】モチ/トリモチノキ/トリモチ
【学名】Ilex integra
【英名】Mochinoki Holly
【成長】遅い
【移植】簡単
【高さ】5m~30m
【用途】垣根/公園/シンボルツリー
【値段】500円~