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ウツボグサ/うつぼぐさ/靫草
Utsubo-gusa(all-heal/self-heal)
【ウツボグサとは】
・北海道から九州までの広い範囲に自生するシソ科ウツボグサ属の多年草。日本の在来種で、日当たりの良い低山の草地、原野、土手、道端など身近な場所に群生する。日本以外では中国、朝鮮半島、シベリアなどの東アジアに分布。
・ウツボグサの開花は6~8月。シソに似た紫色の花が人目を惹くが、別名「夏枯草(かごそう)」のとおり、夏至の頃に花が終わると花穂だけが急に枯れ、後に全草が立ち枯れるという特徴を持つ。古い名を「乃東」といい、七十二候の「乃東枯る(なつかれくさかるる)」はこれにちなむ。
・ウツボは海にいるウツボではなく、武士が背負って矢を収めた細長い箱の「靭(ウツボ)」を意味し、黒く枯れた花穂の色艶がこれに似ることによる。熊本ではこれを靭ではなく、虚無僧の笠に見立て「虚無僧花」と呼んだ。
・花は長さ2センチほどの唇形。上唇は前に曲がって笠型になり、下唇は三つに裂け、その中央はさらに細かく裂けてトゲ状になる。花は茎の先から伸びた3~8センチの花穂にまばらに咲き、よく見ると一つの苞に三つの花が咲いているのが分かる。
・雄しべと雌しべは上唇の下に集まって隠れているが、ハナバチが蜜を吸いに訪れると、その顔面を利用して受粉する。受粉後は上下に二つある萼が合わさって口を閉じたようになり、その内部で果実が守られる。
・ウツボグサは冬至の頃に出た芽が越冬し、翌春に葉を生じる。葉の長さは2~5センチ。細長い楕円形か菱形で茎から対になって生じ、茎は下半分ほどが地を這うように倒れるが、上部は直立する。茎の断面は四角形。茎や葉には全体に白い毛が生える。
・若葉や花は食用となり、生でも食べられるが、天婦羅、和え物、御浸し、酢の物にして食べるのが一般的。また、花穂から作るウツボグサ茶は古くから暑気払いに使われ、利尿、口内炎や扁桃腺炎の消炎に効能があるとされる。
・生薬「夏枯草(かごそう)」として薬用され、乾燥させた花穂を煎じて飲めば利尿、生の葉を揉んで塗布すれば湿疹、汗疹、かぶれに、また、全草を焼酎に漬け、滋養強壮の薬酒として飲用する。
【ウツボグサの品種】
・タテヤマウツボグサ(タテヤマウツボ)
本州中部~北部の高山に分布する品種。ウツボグサよりも花が大きいわりに草丈が低く、綺麗な花が咲く高山植物として人気がある。ウツボグサと違って茎の下部が地を這わない。
・ミヤマウツボグサ
本州北部に分布する小型の品種。花が小さく、花穂も細い。
・ヤクシマウツボグサ
これも大きくならない品種であり、園芸用に出回る。
【ウツボグサに似た花】
・クルマバナ
・イヌゴマ
ウツボグサの基本データ
【分 類】シソ科/ウツボグサ属
多年草
【漢 字】靫草(うつぼぐさ)
【別 名】夏枯草
(カゴソウ/カコソウ/カゴクサ)
チドメグサ/ジビョウクサ
【学 名】Prunella vulgaris
ssp. asiatica
【英 名】All-heal/Self-heal
【開花期】6~8月
【花の色】淡い紫、白
【草 丈】~30cm