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クサノオウ/くさのおう/瘡の王・草の黄
Swallow wort
【クサノオウとは】
・北海道から九州の広い範囲に分布するケシ科の越年草(二年草)。草としては大きめの鮮やかな黄色い花がよく目立ち、一見すると外来種のようだが在来種。林の縁や草地のみならず、道端や荒れ地、石垣の隙間などでも普通に見られる。日本以外でもアジアの温帯地方に広く自生。
・茎や葉をちぎると黄色~オレンジの乳液が生じ、これを古くから皮膚炎の治療に用いた。薬草として優れているため「草の王」となったという説が馴染みやすいが、クサは「草」ではなく、「瘡(くさ=皮膚が炎症を起こした状態)」を意味するというのが定説。また、乳液の色にちなんだ「草の黄」とする説もある。
・乳液にはケリドニンなど20種類以上のアルカロイドを含んでおり、鎮痛作用がある。胃痛や腹痛に、さらには胃癌に効くと噂されて飲用されたこともあったが、服用すると胃腸がただれ、嘔吐や下痢、身体の痺れを引き起こす。大量に摂取すると昏睡、そして呼吸麻痺から死に至ることもあり、実際に人や家畜の死亡例があるという。明治時代の文豪である尾崎紅葉はこれを胃癌の治療に使ったという。
・クサノオウの開花は5~6月。葉の脇から伸びた花茎に直径2~3センチほどの黄色い四弁花が数輪ずつ、時間をかけて次々と咲いていく咲く。英名のswallow wort、学名のChelidonium majus var. asiaticumは共に、燕が来る初夏に咲き始めることに由来するが、環境によっては秋まで開花することもある。
・花の後にできる果実は長さ3~4センチの細長い棒状で、画像のように直立するのが特徴。果実は熟すと自然に二つに裂け、直径1ミリほどの黒い種子が飛び出す。半球形の種子にはカタバミと同じようなエライオソームというゼリー状のものが付随し、これによってアリを誘引、運搬されることで繁殖する。
・葉はヨモギのような羽根状で、縁には不規則な切れ込みがある。両面とも毛があるが、特に裏面は白っぽく見える。茎は中空で柔らかく、これにも多数の白い縮毛があるため株全体が白っぽく、雰囲気は同じケシ科のタケニグサに似る。
・別名はタムシクサ、イボクサ、チドメクサ、ヒゼングサ(皮癬草) などで、いずれも皮膚病の治療薬になることに由来。生薬名を「白屈菜(はっくつさい)」といい、イボ取り、虫刺され、疥癬、タムシなどの白癬に外用する。
・湿疹には春から夏に採取した全草を日干、乾燥させたものを用い、煎汁あるいは焼酎に漬け込んだものを患部に塗布する。イボ取りには生汁を直接塗布する方法があるが、肌に触れるとかぶれる人もいるため、不用意に使用するのは避けた方がよい。
【クサノオウに似ている植物】
ヤマブキソウ タケニグサ ケマン
クサノオウの基本データ
【分 類】ケシ科/クサノオウ属
越年草(二年草)
【漢 字】草の王(くさのおう)
【別 名】タムシクサ/イボクサ
チドメクサ/ヒゼングサ(皮癬草)
【学 名】Chelidonium majus
var. asiaticumは
【英 名】Swallow wort
【開花期】4~6月(地域によっては11月まで)
【花の色】黄色
【草 丈】~80cm