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クリ/くり/栗
Chestnut tree
【クリとは】
・秋の味覚を代表するクリの実がなるブナ科の落葉樹。日本人の生活に密着した樹木であり、その名は「古事記」にも登場する。農耕が始まる以前の古代には重要な食糧とされ、奈良、平安時代においてもコメやムギなどと共に常食された。
・クリは北海道西南部、本州、四国及び九州に野山で普通に見られるが、これは果実が小さくて不味い。現在われわれが食べるクリの実は外国産あるいは、大きな実をつける国産の突然変異種を選抜して栽培してきた園芸品種。栽培品と区別するため自生のものはシバグリ(ヤマグリ)と呼んでいる。
・病害虫に係る防疫の関係から、国内で栽培されるクリの木はほとんどがシバグリを改良した国産種で、その園芸品種として丹波栗が特に知られる。クリの仲間は北半球に広く分布するが、食用として果実のみを輸入する海外産のクリには、「マロングラッセ」で知られるヨーロッパグリや、「天津甘栗」で知られる中国栗などがある。
・クリの食べ頃は、イガが枝から落下したときで、落ちるのは実が熟した証拠。通常、イガの中には2~3個の実が入っている。御存知のとおりトゲトゲの実だが、リス、ムササビ、クマなどの野生動物もこれを好んで食べる。
・かつては殻のまま干しておいた野生のクリ(シバグリ)を臼で突き、「搗栗(かちぐり)」を作る風習があった。「搗つ(かつ)」とは臼で突くことをいうが、これに「勝つ」をかけ、出陣や戦勝の祝いに「勝栗」を食べて縁起を担ぐ習慣ができた。現代でも正月に縁起物として勝栗を食べる地域がある。
・クリという名の由来は諸説あるが、実の皮が黒っぽい色をしていることから「クロ」→「クリ」と呼ばれるようになった、あるいは黒を表す古語の「涅(クリ)」に由来するという説が代表的なもの。
・クリの葉は枝から互い違いに生じ、長さ8~15センチ、幅3~4センチほどの細長い楕円形になる。表面は濃緑色で裏面は淡い緑色。縁には細かなトゲがあるが、よく似たクヌギの葉とは、その色合いが異なる。クリの葉のトゲは緑色で、クヌギの葉は先端の色が抜けている。
・クリの開花は初夏(6~7月)で、雌雄が同じ穂にできる。独特の匂いを放つ雄花は長さ10~15センチで垂れ下がり、遠くからも識別できるが、雌花は葉の付け根にあってあまり目立たない。花の時季が過ぎると雄花は枯れ落ち、受粉後に小さなイガ状になった雌花が目立つようになる。
・タンニンを含むクリの材は防虫処理なしでも耐久性があるため、建築物の基礎、枕木や船の材料、家具や浴室の板、シイタケ栽培の原木として使われる。樹皮はコナラのような外観で、染料(茶色、黒鼡)や皮なめしに使うことができる。
・狩猟と採集が中心であった縄文時代においても、集落の周辺にクリの木を植え、建材及び食用として長期的な計画を持って管理していた。青森県の三内丸山遺跡でも大きなクリの柱の基部が出土しており、クリの栽培が行われていたことが、DNA解析によって明らかになっている。
【クリの育て方のポイント】
・日本のクリの栽培適地は関東以西の温暖な地方。寒すぎると胴枯病に、暑すぎるとカミキリムシ(シロスジカミキリ)の被害に遭いやすい。カミキリムシの雌は幹を一周する特有の産卵痕を残すため見付けやすいが、内部で食害している幼虫を採り出すのは難しい。
・日当たりと水はけのよい場所を好む。
・一本植えでは受粉しにくい(=実がなりにくい)ため、種類の異なるものを複数植えるのが基本。また、「桃栗三年柿八年~」というように種から育てると収穫まで時間がかかるため、普通は接ぎ木した苗を使う。
・大木となるため相応のスペースが必要。狭い場所で育てる場合は「シダレグリ仕立て」と呼ばれる方法で剪定する。
・クリの成長や収穫は病害虫の影響を受けやすい。枝にはクリオオアブラムシが群生し、葉はオオミズアオ、イラガ、ヒロヘリアオイラガ、クスサンなど蛾の幼虫に食害されることがある。特に6月後半頃に大きくなったクスサンの幼虫は、木を丸坊主にすることがある。
・オトシブミという甲虫はクリやコナラの新葉で粽(ちまき)のような巣(揺籃)を作り、「落とし文」のように丸めた葉を切り落とす。オトシブミを観察できるのは5月下旬~6月上旬。
【クリに似た木】
・クリ属の樹木は他にないが、クリに似た葉を持つ木にはクヌギやアベマキなどがある。実を見なくてもクヌギとクリを見分ける方法は以下のとおり。
クリの基本データ
【分類】ブナ科/クリ属
落葉広葉/高木
【漢字】栗(くり)
【別名】シバグリ/ヤマグリ
ニホングリ(日本栗)
【学名】Castanea crenata
【英名】Chestnut tree
【成長】早い
【移植】困難
【高さ】5~20m
【用途】果樹
【値段】1000円~