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ハス/はす/蓮
Lotus
【ハスとは】
・中国、インドあるいはエジプトを原産とするハス科の多年草。日本では、古事記に登場するほど古くから観賞用として池沼や水田に植栽されており、在来種もあったとする説がある。
・花弁の色形や数、大きさなどによって多くの品種に分類される。ハスとレンコン(蓮根)は同じだが、レンコンとして地下茎を食用するのは、明治初期に中国から導入された一部の品種。
・ハスが寺社の庭園に植栽されたり、仏花に用いられたりするのは、誕生直後の釈迦が七歩あゆんでハスの花の中に立ち、「天上天下唯我独尊」と第一声を上げたというエピソードにちなむ。なぜハスなのかについては諸説あるが、仏教の教えをハスが持つ性質にたとえた「蓮華の五徳」が知られる。
・「蓮華の五徳」とは、①泥の中にあっても綺麗な花を咲かせること(どんな環境でも誠実に生きる)、②一つの茎に一つの花を咲かせること(人生は唯一無二)、③花ができると同時に果実ができること(人は生まれながら仏性を持つ)、④たくさんの種子を含むこと(自分が悟ることで多くの人を幸福にする)、⑤中空の茎が真っすぐに伸びること(我欲を捨てて真っすぐに生きる)、であるが実際のハスの性質は多少異なる。
・ハスの開花は7~8月頃で、水上に突き出た花茎に、直径10~25センチにもなる大きな花を咲かせる。花弁は多数あり、花の裏側にある萼(がく)よりもはるかに大きい点が、似たようなイメージを持つスイレンとは異なる。ちなみに、中華料理を食べる際に使うレンゲ(蓮華)は、その形がハスの花(一枚の花弁)に似ることによる。
・花色は紅色、淡い黄色、白などで品種によって微妙に異なる。一輪当たりの花期は4日間で その間に開閉を繰り返す。古い時代の中国ではハスをフヨウと呼び、日本ではレンゲ(蓮華)と呼んだ。
・花が終わると花床は種子を落としてハチの巣のような穴ができるため、蜂巣が転じてハスと呼ばれるようになったという。台湾には皮を剥いて砂糖漬けにした菓子があり、漢方では蓮芯あるいは石連子(せきれんし)と呼んで血管の拡張に用いる。食用になるのは胚乳の部分であり、胚芽はアルカロイドを含むため苦味がある。種子の寿命はとても長く、1951年に2000年前の種子を発芽させた「大賀ハス」は世界を震撼させた。
・葉は地下茎から生じ、長い柄を立てて、直径60センチもある大きな傘状に広がる。葉が大きい分、生育期にはその瑞々しさが際立つが、秋になると葉は破れて見すぼらしい姿となる。俳句の世界では「敗れ蓮」「敗荷(やれはす)」と呼んで、侘しさの象徴とする。
・ハスの葉が水をはじくのは表面にワックスで覆われた微細な突起物があるためで、泥水が気孔に侵入するのを防いでいる(これをロータス効果という。)。葉柄は秋に葉が茶変して枯れた後も水中に立つほど丈夫であり、この繊維からなる蓮糸を幾重にも束ねたもので、上質な衣服を作ることができる。
・ハスが育つ水底には、白くて節の多い地下茎が泥の中を這うように伸びる。花が咲いている時期の地下茎は細長い円柱形だが、秋が終わる頃になると先端が肥大化し、いわゆるレンコンらしくなる。
・レンコンの旬は晩秋~初冬で筍の都合もあるが、穴が多くて見通しが良いため、未来の予測が立つとの縁起から正月料理に、「ン」がつく食べ物を冬至に食べると縁起が良いという俗信から冬至の行事食に使われる。ハスが泥の中でも育つのは、レンコンの穴が空気の通り道になっているため。
・ハスの漢字表記は「蓮」だが、これはソーセージのようにくびれた節で連なる地下茎の様子にちなむ。地下茎は伸びるにつれて太くなり、地中深くに潜りこむ。ハスの特徴 汚泥、一つの茎に一つの花 花と果実が同時(生まれた時から仏の心が備わっていること)、一花多果(沢山の人を幸せに) 中空(欲に支配されず真っすぐに生きる)
【ハスの品種】
ハスの基本データ
【分 類】ハス科/ハス属
多年草
【漢 字】蓮(はす)
【別 名】スイフヨウ(水芙蓉)
イケミグサ(池見草)
フゴセン(不語仙)
ハチス
【学 名】Nelumbo nucifera
【英 名】Lotus/Indian lotus
Egyptian lotus
Sacred lotus
【開花期】7~8月
【花の色】紅色、白、クリーム色など
【草 丈】~150cm