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オニバス/おにばす/鬼蓮
Prickly water lily
【オニバスとは】
・宮城県以南の本州、四国及び九州に自生するスイレン科の一年生浮葉植物。ハスと名乗るが葉は水面に浮かび、スイレンに近い。オニバス属を構成する一属一種の植物であり、繁殖や葉の様子は原初的だが、日本以外でもアジアの東北部~インドに分布する。
・「葉が大きいためオニバス」と思われがちだが、名前の由来は株全体に生じる鋭いトゲにあり、特に葉の表面のトゲはオニバスの名にふさわしい。清少納言は枕草子でオニバス(水ふぶき)を「恐ろしげなるもの」としている。
・葉の形は目覚ましく変化し、春先、最初に浮かぶ葉は基部に切れ込みのある長楕円形で、オニバスらしさは乏しい。十数枚目の葉から楯状の円形になり、季節が進むと直径30~150センチほどに巨大化する。生育環境にもよるが、葉の直径は200センチを超えることもある。
・葉の表面にはスイレンやハスには見られないシワがある。裏面は赤紫を帯び、隆起した葉脈はハチの巣のようになる。見た目はよろしくないが葉柄は食用となり、別名をミズブキ(水苳)という。
・オニバスの開花は7~9月。花には開放花と閉鎖花があり、前者は水面より上で咲くため人目に触れる。直径4センチほどだが綺麗な青紫色で、控えめに半開する姿は美しい。ただし、花茎にもトゲがある。
・青紫の花とは別に水中にはタマネギのような閉鎖花が咲き、自家受粉した後に楕円形の果実となる。閉鎖花の開花期は開放花(青紫の花)より前後1か月ほど長い。種子はデンプン質が多くて食用になり、漢方では「芡実(けつじつ)」として滋養強壮に用いる。
・オニバスの自生地は低地にある浅い湖沼、ため池、河川、水路など。やや富栄養化した水質を好むが、近代では水質の汚濁や開発行為によって個体数が激減し、環境省では絶滅危惧Ⅱ類に指定している。東京の水元公園には「水元のオニバス」と呼ばれる自生地が残っており、昭和59年に都の天然記念物に指定されている。
【オニバスに似ている草花】
・オオオニバス
アマゾン川流域を原産とするオオオニバス属の植物。子供が乗る画像で馴染みの葉は直径2mにも達し、縁は直角に立ち上がって器のようになる。夕方から翌朝にかけて咲く花も観賞の対象であり、日本では植物園で見ることができる。
オニバスの基本データ
【分 類】スイレン科/オニバス属
一年生浮葉植物
【漢 字】鬼蓮(おにばす)
【別 名】ミズブキ
【学 名】Euryale ferox salisb.
【英 名】Prickly water lily
【開花期】7~9月
【花の色】青紫
【草 丈】─