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イネ/いね/稲
Rice plant
【イネとは】
・熱帯アジアを原産とするイネ科の多年草(日本では一年草)。秋に稔るイネの実を精製したコメは日本を含めたアジア各地で主食とされ、これを取り巻く文化や政治にも多大な影響を与えてきた。
・イネは最も古い作物の一つであり、オリザルフィポゴンを原種として作出され、中国やインドでは紀元前3000年以前から栽培される。日本の稲作が始まったのは紀元前10世紀で、揚子江流域から伝わった。
・イネの語源には以下の説などがある。①古くは「シネ」と呼んでいたものがイネに転訛した。「シ」は神聖なものを「ネ」は物事の根本を表し、「物事の根本にあたる神聖な植物」を意味する。②「イ」は「慈しみ」を「ネ」は「苗」を表し、「大切にすべき苗」を意味する。イネの別名は民の草、富の草など。古くは伊奈、志泥、之弥と呼んでいた。
・開花は8~9月で、茎の先端から伸びた花茎に円錐状の花序(花の集り)ができ、緑色の「穎(えい)」に包まれた白い小花が密生する。開花は午前中のみで、正午前の一時間が最も盛ん。穂の上から下へと咲き進むが、雌しべ1本と雄しべ6本からなる地味な花であり、見落としやすい。また、温度や日照時間によって開花時期は大きく異なる。
・イネを含むイネ科の植物は自家受粉の性質を持ち、受粉後に子房が発達して実となる。熟した稲穂が垂れ下がって黄色あるいは暗い紫色などに変わるが、開花や受粉が遅れるといわゆる凶作となるため、例年、開花状況が注視される。
・手を加えないイネの実は籾(もみ)、籾の殻を取ったものが玄米、そして玄米から米糠(こめぬか)の部分を取り除いたものが白米と呼ばれる。白米を蒔いてもイネは生えないが、籾を蒔けば発芽する。播種に使う籾を種籾といい、昔の農村ではコブシの開花などを目安に種蒔きをしていた。
・イネの葉は線形で茎から互い違いに生じ、先端にいくほど細い。質は粗く、表面や縁はザラつき、基部はサヤ状で葉を包み込む。苗は春から夏にかけてグングン育つが、この時季に多い雷の光がイネを実らせると考えられたため、雷を稲妻と呼ぶようになった。
・茎は緑色の円柱形で根元から多数生じ、枝分かれせずに直立する。太さはエンピツほどで内部は空洞になり、節がある。刈り取った茎葉は「ワラ」と呼ばれ、燃料や飼料、縄、俵、蓑、筵(むしろ)などの日用品に用いる。
・イネは熱帯で育てると多年草であるが、日本では冬季に霜が降りて枯れるため一年草として扱っている。収穫後の田んぼに再びイネが生え、時には大きな草丈になることもあるが、この再生したイネのことを「穭(ひつじ)」あるいは「二番はえ」といい、一面に穭が伸びた田を「穭田(ひつじた)」という。
【イネの品種】
・イネ属は野生種20種と栽培種2種からなり、後者には米粒が短いジャポニカ種と、米粒が長いインディカ種がある。日本では専らジャポニカ種を育てているが、世界的にはインディカ種が主流である。
・日本では縄文時代以降、日本の環境に合うようにイネの改良が重ねられており、その品種は極めて多いが、「うるち米」と「もち米」に大別され、主食には前者を用いることが多い。また、イネは花期=収穫時期によって「早稲」、「中稲(なかて)」、「晩稲(おくて)」に、栽培方法によって水稲、陸稲(おかば=畑で育てる)に区別される。
【イネに似た草花】
イネを山野草と呼ぶのは無理があるが、日本の風景を構成する不可欠な植物として本項で取り上げた。野山で見られるイネ科の植物にはスズメノテッポウ、スズメノカタビラ、イヌムギ、エノコログサ、ジュズダマ、アシ、ススキ、チカラシバ、マコモなど多数ある。
イネの基本データ
【分 類】イネ科/イネ属
多年草(日本では一年草)
【漢 字】稲(いね)
【別 名】禾稲(かとう)
【学 名】Oryza sativa
【英 名】Rice plant
【開花期】8~9月
【花の色】白と黄緑
【草 丈】~100cm