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イカリソウ/いかりそう
錨草
Large flowered barrenwort
【イカリソウとは】
・東北地方以南の太平洋側を中心に分布するメギ科の多年草。初夏に咲く花が船の錨/碇(いかり)のようになるためイカリソウと命名された。主に日本海沿岸を除いた山間の樹林下など半日陰地を好んで生じる。別名はサンショクソウ、カンザシグサ、オトコトリアシなど。
・開花は葉の展開と同時期の4~5月で、茎先から伸びた花序に数輪が下向きに咲く。花色は淡い紫色のものが多いが、純白や赤紫色など地域によって様々なバリエーションがあり、中には日本の花とは思えないほど鮮やかなものも。
・花弁は白色で4枚あり、裏側の「距」は長さ1.5~2センチもあって花弁より長い。先端に向かってパイプ状に細くなり、内部に蜜腺を持つ。8枚ある萼は紅紫の花弁状。内側の4枚は大きいが、外側の4枚は小さい上、早期に脱落する。花言葉は「君を離さない」など。
・葉は2回3出複葉と呼ばれるタイプのもの。小葉は細長く歪んだ卵形で先端が尖り、縁はギザギザで細かな毛がある。表面は緑色で裏面は白い細毛があるため粉白色になる。針金のような茎は三つに分かれ、さらに三つに分岐した先に葉を一枚ずつつける。このため「三枝九葉草(サンシクヨウソウ)」という別名があるが、実際はさらに分岐するものも多い。
・新葉と茎は赤みを帯び、葉の裏面に毛が多い。地下にある硬い根茎は褐色で横に這い、多数のヒゲ根がある。冬季に地上部が枯れるため「草」であるが、環境によっては葉をつけたまま越冬する常緑性になることもある。
・中国(明)の李時珍が集成した図鑑「本草綱目」には、同属のホザキノイカリソウの葉を食べた雄の羊が精力旺盛になったという逸話があるが、茎葉に含まれるイカリインというフラボノール配糖体には強精や催淫、老化防止の効果があることが科学的に立証されている。
・イカリソウは生薬として古くは「仙霊脾酒」に、現代ではユンケルなどの強壮薬に使われるが、日本産のものは効力が低い。また、薬用には茎葉ではなく根茎を乾燥させたものが使われる。
【イカリソウの種類】
イカリソウの仲間は多く、自生種だけでも国内に10以上ある。
・バイカイカリソウ
中国地方以西に分布する品種。葉に円みがあって花弁は白く、イカリソウ特有の距がない。
・トキワイカリソウ
イカリソウよりもやや大型になる品種で日本海側に多い。「常緑」のとおり冬でも葉が枯れず、翌年の開花期まで残る。花色は白や赤紫。同じように常緑のイカリソウにはウラジロイカリソウがある。
・キバナイカリソウ
北日本を中心に分布する品種で、名前のとおり淡いクリーム色の花を咲かせる。
・ヒメイカリソウ
バイカイカリソウとイカリソウの雑種で背丈が低く、白~紅紫の花が咲く。距は短く、花弁より少し長い程度。
・ヤチマタイカリソウ
葉の裏面に毛がない品種。近畿や四国に見られる。
・クモイイカリソウ
蛇紋岩地帯に見られる品種。小型で葉の縁に毛がない。
イカリソウの基本データ
【分 類】メギ科/イカリソウ属
多年草
【漢 字】錨草/碇草(いかりそう)
【別 名】サンシクヨウソウ
カンザシグサ
オトコトリアシ
淫羊藿(インヨウカク)
【学 名】Epimedium grandiflorum
var. thunbergianum
【英 名】Large flowered barrenwort
【開花期】4~5月
【花の色】薄紫、白、赤紫、黄色
【草 丈】~50cm