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カタクリ/かたくり/片栗
Dogtooth violet
【カタクリとは】
・日本各地の山地に分布するユリ科カタクリ属の多年草。雪解けと共に一斉に咲き、立夏には消え去る儚さが魅力で、青紫系の花を咲かせる山野草の中では最も人気が高い。
・落葉樹林の下や明るい草地などに見られるが、北海道や本州北中部など寒冷な地方ほど群生地が多く、花の時期には観光名所となる。日本以外でも韓国や中国に分布。
・カタクリという名の由来には諸説あるが、本種の葉がクリの子葉の一片に似ることから「片栗」になったという説が特に知られる。地方によっては万葉時代のまま、「傾いた篭」を意味するカタカゴ、あるいはカタコ、カタゴ、カタガコなどと呼ぶ。ユリイモ、ホウホケキョ、ゲンゴバなどの別名もある。
・カタクリの根茎は多肉質の鱗片状で、数個が連なるようにできる。ここに蓄えられたデンプンを精製したものが本来の片栗粉。根茎は長さ5~15センチほどの長楕円形で、年月をかけて地下30センチまで潜り込む。
・かつてカタクリは東京近郊の雑木林にも群生するほどありふれていたが、開発や乱獲が進んだため個体数が激減し、自生地の多くは保護の対象となった。大量生産ができないため、現在市販される片栗粉の多くはカタクリではなく、ジャガイモから作られている。
・民間療法ではカタクリのデンプンを薬用とし、湿疹、切り傷などの外用薬にした。また、江戸時代には、葛湯状にしたカタクリのデンプンを飲用し、整腸や病後の滋養強壮に使った。
・早春になると根茎の先端から花茎が伸び、その先端に一輪ずつ、うつむくように花を咲かせる。淡い紫色の花弁は6枚あり、太陽が昇るにつれて外側へ反り返る。花はサラダや御浸しにして食べることができるが、カタクリの成長は非常に遅く、発芽から開花まで平均7~8年もかかることを想えば食は進まないであろう。
・カタクリは開花期間の短さから、「スプリング エフェメラル=春の妖精」と呼ばれる。他にニリンソウ、フクジュソウ、ムラサキケマンなども同じように儚い花として人気がある。
・花の後には三つの角がある袋状の果実ができるが、季節が進むと自重で茎ごと倒れる。これは種子をアリに運んでもらうためで、明るい褐色のイモ虫のような種子は、アリの大好物であるエライオソームという物質に包まれている。
・カタクリの葉は長楕円形で花茎の途中から生じる。質厚だが触れると柔らかで、開花前の早い時期に摘んだ葉は天婦羅、油炒め、煮物などにして食べることができる。
・花が咲く株の葉は通常2枚で長い柄があるが、未熟な株の葉は1枚だけ。表面は淡い緑色だが、普通は黒紫の模様が入る。これを鹿の子の模様になぞらえ、「片葉鹿の子(かたがかのこ)」と呼び、それが転じてカタクリになったという説もある。
【カタクリの品種】
・キバナカタクリ
北アメリカを原産とする種で、黄色い花を咲かせ、葉に白と紫の模様が入る。
・シロバナカタクリ
群生地で稀に見られる花の色素が抜けた個体。
カタクリの基本データ
【分 類】ユリ科/カタクリ属
多年草
【漢 字】片栗(かたくり)
【別 名】カタカゴ/カタコ
カタゴ/カタガコ
カタコユリ/カッコバナ
ユリイモ/ウバユリ
ホウホケキョ/ゲンゴバ
【学 名】Erythronium japonicum
【英 名】Dogtooth violet
【開花期】3~6月
【花の色】淡い紫色
【草 丈】~20cm