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トチノキ/とちのき/栃の木・橡

Horse chestnut

栃ノ木,とちのき
トチノキの実は縄文時代から食糧にされた
栃ノ木.冬芽,画像,とちのき
トチノキの冬芽はネットリと黒光りする
トチノキの芽吹き,画像
芽吹きの時期は刻一刻と変化していく
とちのき,植物,トチノキ
新葉の様子
馬栗の木,葉,とちのき
冬芽を突き破って大きな葉が展開する
Horse chestnut,leaves
新葉の様子 
Horse chestnut,leaf
日陰の葉は巨大化し、ホオノキに似る
トチノキ,開花時期,とちのき
5~6月に咲く花はソフトクリームやシャンデリアに喩えられる
とちのき,花
花は高い場所に咲くため観察しにくいが・・・
トチノキの花,画像
近くで見ると複雑な形をしている 花言葉は「豪奢」など
Horse chestnut,picture
花の時期の様子
栃ノ木の葉っぱ
成葉は表面がピカピカになる(7月)
とちのき,解説,トチノキ
裏面の様子
Horse chestnut
花が終わるとこんな感じで実ができ始める
橡の実,写真
花同様ソフトクリーム状になるが、風で落下しやすく
トチノミ,画像
枝に長く残るのは一つか二つ
トチノミ,栃の実
それでも、実がたくさんできるのが名前の由来
とちもち,トチモチ
トチの実を使った栃餅
Horse chestnut,fruits
灰汁抜きをしなければ食べられず「馬栗」と呼ぶ
トチノキ,黄葉,紅葉
乾燥地では8月ころから黄葉し、そのまま落葉するが・・・
トチノキ,紅葉
寒い場所では綺麗に紅葉する
杤,漢字,とちのき
紅葉期の葉の様子
Horse chestnut
堂々たる樹形だが、暖地での葉の寿命は相当短い
栃ノ木,橡,漢字
「木へん」に「象」という漢字は、幹からの連想か
トチノキの樹皮
幹は直径1mを超すが、加工しやすく、臼などを作る
とちのき,材木
幹の断面

 

【トチノキとは】

・北海道西南部から九州中北部までの山地に見られる落葉高木で日本の特産樹。文字どおり栃木県では木の県として指定している。樹形が自然に整いやすく、新緑や秋の黄葉が美しいことなどから全国の街路樹、公園に利用されてきたが、秋に落ちる実が往来の妨げになるとして、近年は利用が減っている。

 

・晩夏から初秋にできる果実は直径3~5センチの球形で、熟すと三つに裂け、クリのような種子が顔を出す。種子は蛋白質を豊富に含み食用になる。縄文時代の遺跡からも出土されるなど日本人とは関係が深く、江戸の飢饉や戦後の食糧難には庶民の貴重な栄養源となり、嫁入りの財産にした地方もあるほどだった。そうした名残から各地で天然記念物に指定される大木がある。

 

・トチノキの材は広葉樹としては柔らかくて加工しやすく、栃杢と呼ばれる美しい木目が入るため、国産材としての人気はケヤキに並ぶ。耐久性が不足するため建材としてはケヤキに劣るが、家具、算盤、擂粉木、臼、盆、椀などの細工物や伝統工芸品に使われ、蕎麦粉を練る木鉢としては特に好まれる。樹皮は灰色で縦に皺が入り、樹齢を重ねると画像のような模様ができる。

 

・栃の実は現代でも「栃餅」として餅米と共についた物や、粥にしたものが食用される。ただし、栃の実にはエゴノキサイカチと同様にサポニンやエスクリンといった毒性の物質が含まれ、味も苦味がある。十分な灰汁抜き(精製)をしないと下痢、胃腸炎、脱水症状に陥ることがあり、こうしたことから栃の実はクリよりも劣るという意味で「馬栗」と呼ばれる。(英語名はこの馬栗に由来する)

 

・実は食用のみならず、上記のサポニンを利用して石鹸代わりに使ったり、焼酎に漬け込んだものや焼いて油で練ったものを塗り薬に使っうなど用途が多い。ただし、トチノキは実がなるのに三代かかり、植えてもすぐには収穫できないため、「トチを刈る馬鹿、植える馬鹿」という諺がある。

 

・トチノキの開花は5~6月。多数の小花が円錐状に集まり、枝先で上向きに咲くが、ある程度の大木にならないと花を見ることはできないため観賞はしにくい。花は高さ25センチほどになるが、よく見ると直径1.5センチほどの小さな花の集合体になっている。

 

・小花には両性花と雄花があり、一つの花序(花の集り)の上部に雄花が、下部に両性花が咲くがほとんどが雄花からなる。いずれも花弁は4枚あり、中央は薄紫色。7本の雄しべを持つ。両性花には雄しべが1本あり、雄花の雌しべは退化している。花は蜜を多量に出し、ミツバチ等が集まる「蜜源」となるため、トチノキの開花に合わせて移動する養蜂家もいる。

 

・トチノキの冬芽は1センチほどと大きく、樹木の冬芽の話題になると必ず登場する。冬の庭園で異彩を放つ冬芽は、粘液に覆われて黒光りし、その粘液は生薬に使われる。

 

・観葉植物「パキラ」を大きくしたような葉は、5枚~9枚の小葉が1セットになっているため漢字名で「七葉樹(しちようじゅ)」と表記することもある(実際の七葉樹は中国の類種であり、本種とは異なる。)。

 

・葉は大きなもので長さ30cmほどだが、全体に日が当たるよう上部の葉ほど小さくなっている。葉の縁には緩やかなギザギザがあり、同じように大きな葉のできるホオノキと見分けるポイントになる。葉を食用することはできないが、埼玉県の秩父には赤飯をトチノキの葉で包んだ「ツトッコ」という伝承料理がある。

 

・トチノキという名の由来は諸説あるが、たくさんの実がなる木という意味合いを持つとされる(トは「十」を、チは「千」を表す。ただし、奈良時代には「止知」と表記されていた。)。樹齢を重ねたトチノキには豊作、凶作の波がなく、毎年安定してたくさんの収穫が期待できるが、強風で落下しやすいのが難点。

 

・漢字表記は「栃の木」「杤」「橡」などだが、明治時代に栃木県ができた以降は「栃」を使うことが多い。中国で「橡」はクヌギを意味する。

 

【トチノキの育て方のポイント】

・高さ30m、直径2m以上にもなる大木で、横枝も張るため、狭い庭にはあまり向いていない。木陰を作ることを目的に街路樹や公園樹として使われることが多いが、上述のとおり実の落下が問題視されることもある。

 

・基本的には日向を好むが、日陰にもやや強い。病害虫にはかなり強いが、強風、潮風、排気ガスには弱い。

 

・自生地は湿潤な沢沿いなどであり、乾燥にはやや弱く、湿気の乏しい場所では8月ころから黄葉し始める。

 

【トチノキの品種】

・斑入りトチノキ 

 葉に「三光斑」と呼ばれる模様が入る。  

品種,模様
斑入りトチノキ

 

【トチノキに似ている木】

マロニエ(西洋トチノキ)

 バルカン半島を原産とする近縁種でパリの街路樹が有名。葉はトチノキよりも小さくて皺が多く、縁のギザギザが大きい。また、トチノキの冬芽がネバネバしているのに対して、マロニエの冬芽は乾いている。果皮にトゲがあるのも大きな違い。

 

アカバナトチノキ(アカバナアメリカトチノキ)

 北アメリカ南部原産で、花は鮮やかな紅色をしている。

 

ベニバナトチノキ 

 マロニエとアカバナトチノキの雑種。マロニエ同様、果実の皮にトゲがある。トチノキに比べて葉の表面の皺が多い。花色はアカバナトチノキよりも薄い。

トチノキとマロニエの違い
マロニエの葉はシワシワ
アメリカトチノキ
アカバナトチノキは背が低く、花は当然だが、真っ赤
べにばなとちのき,画像
上の二つの雑種であるベニバナトチノキの花色はこんな感じ

トチノキの基本データ

 

【分類】ムクロジ科/トチノキ属

    落葉広葉樹/高木

【漢字】橡/杤/栃木(とちのき)

【別名】クリトチ/ウマグリ 

【学名】Aesculus turbinata  

【英名】Horse chestnut

【成長】やや早い 

【移植】やや難しい 

【高さ】10m~35m 

【用途】公園/街路樹 

【値段】1000円~

 

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