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コウヤボウキ/こうやぼうき/高野箒
Kouya-bouki tree
【コウヤボウキとは】
・関東以西の本州、四国及び九州に分布するキク科の落葉低木。暖地の乾いた尾根筋や山中の林内に自生する。コウヤボウキという名前は、かつて和歌山の高野山で本種の幹や枝を束にして箒を作ったことに由来し、皇室の伝統にちなんだタマボウキという別名もある。日本以外では中国大陸の温帯から暖帯に見られる。
・一見すると草のようだが、冬でも幹が地上に残るため「木」に分類される。箒に適するのは、繊細な幹や枝に弾力性があること、短毛があって枝分かれも多いことによる。学名にあるscandensは「よじ登る性質」を表すが、ツンベルクの誤解に基づくものであり、枝は四方へ這うように広がる。
・葉の形や出方は枝の新旧によって異なり、一年目の枝では卵形で枝から対になって生じ、二年目の枝では細長い葉が3~5枚ずつ束になって節ごとに生じる。いずれも長さ2~5センチで縁に浅いギザギザがまばらにあり、3本の葉脈が目立つ。
・コウヤボウキの花期は9~11月で、その年に伸びた枝の先に、キク科特有の筒状になった白、あるいは淡い紅色の小花が13輪ほど集まって一つの花序を形作る。花は長さ1~1.5センチほどで、1本の雌しべと5本の雄しべがあり、花弁の先端は五つに裂けて反り返る。地味な花だが、生け花では秋山の寂寥感を表すモチーフに使われ、イチモンジセセリという蝶の一種はこれに集まる。
・花の後にできる果実は長さ6ミリほどで「痩果(そうか)」と呼ばれるタイプのもの。綿毛が密生しており、風に乗って種子が拡散される。
・コウヤボウキで作った箒(タマボウキ)は、大伴家持が万葉集で詠じたほど由緒あるもので、中国の伝統に倣って正月の始めに天皇が朝臣に玉を飾って下賜した。正倉院にも「子日目利箒(ねのひのめどのははき)」として現存する。また、高野山でこれを箒に用いたのは、開祖の弘法大使(空海)の教えによって、果樹や竹など商品価値のある植物を植えることが禁じられていたことによる。
【コウヤボウキの育て方のポイント】
・多少の耐寒性はあるものの元来が暖地性であり、植栽の適地は関東地方以西となる。病害虫の被害は少なく、基本的に丈夫な性質を持つ。
・日当たりのよい場所を好むが夏の強い日差しは苦手であり、半日陰程度の場所が適する。日陰に耐える「陰樹」とされる場合もあり、日照が少なくても大きな問題はない。
・自生地は乾燥気味の場所が多く、地植えの場合はさほど水やりに配慮する必要がない。また、枝は横に広がりやすく、樹高は1m以下に収まるため、剪定の手間もあまりかからない。自然樹形を観賞する小木であり、下手に手を入れると貧相な樹姿になりやすい。
【コウヤボウキに似ている木】
・ナガバノコウヤボウキ
宮城県以西の本州、四国及び九州に分布するコウヤボウキ属の小低木で、名前のとおりコウヤボウキよりも幅の狭い葉になる。花や果実の様子はコウヤボウキと同じような感じだが、コウヤボウキよりも枝が紫色を帯びること、枝葉に毛がほとんどないこと、二年目の枝先に花が咲くことが異なる。
・オケラ
北海道を除く日本各地に分布するキク科の多年草。若菜を御屠蘇などに入れて食用することで知られる。
コウヤボウキに似た花を咲かせるが、葉はカシワに似た直径10センチ以上になるものであり、全く様子が異なる。
・ハマギク
全体の雰囲気に共通するものはないが、キク科でありながらコウヤボウキと同じように茎が木質化する。
キク科の多年草で秋に似たような果実(閉鎖花)ができる。
コウヤボウキの基本データ
【分類】キク科/コウヤボウキ属
落葉広葉/小低木
【漢字】高野箒(こうやぼうき)
【別名】タマボウキ/ウサギカクシ
キジカクシ/メンド/メンドウ
ネンド/ネンドウ
【学名】Pertya scandens
【英名】Kouya-bouki tree
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】60~100cm
【用途】花木
【値段】300円~