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ケンポナシ/けんぽなし/玄圃梨
Japanese raisin tree
【ケンポナシとは】
・北海道(奥尻島)、本州、四国及び九州に分布するクロウメモドキ科の落葉高木。東北地方の野山に多く、中国や韓国にも自生が見られる。学名のHovenia dulcis はケンポナシ属を設立したツンベルクのパトロンDavid ten Hoven の名にちなむ。
・ケンポナシという変わった名前の由来には諸説あるが、①実の様子が病気やケガで手を患った状態「手棒(てんぼう)」に似ていることから、②中国で神仙の住む山「懸圃(けんぽ)」に見られたことから、との説がある。②の説にちなんで中国では、この実を食べると水難を逃れることができるとされる。
・枝葉や実から抽出される「ケンポナシエキス」は二日酔い防止に効果があるとされ、健康補助食品に使われる。この果実酒を飲めば酒に酔わない、あるいは酒が嫌いになるという俗説がある。
・葉の直径10センチ前後の卵形で、先端が少しだけ尖り、縁には不規則なギザギザがある。一見すると分かりにくいが葉の出方は独特であり、コクサギと同じように枝から2枚単位で互い違いに生じる(左左右右左左・・という感じ)。乾燥してもしばらくは緑色を保つのが特徴。枝を切ると正露丸のような独特な香りがする。
・ケンポナシの開花は6~7月で、淡い緑色の両性花が葉の脇に咲く。花の直径は7ミリほどで目立たないが、蜜を求めて蜂などがよく集まる。ケンポナシの蜜で作ったハチミツは質が良いとして好まれる。
・花の後に、「花梗」が肉質化し、そこに直径7~10ミリほどの球形の果実ができる。果実と肉質化した花梗にはナシのような味があり、ニホンザルが好んで食べる。霜が降りる頃になれば生食できるが、風で枝ごと飛ばされやすく、食べるタイミングは難しい。自然の甘味料として漬物や煮物、果実酒に利用できる。種子(核)は黒光りする楕円球で、果実の丸い部分に3粒ほど入っている。
・ケンポナシの樹皮は淡い灰色で画像のような網目模様が入り、樹齢を重ねると鱗状に剥げ落ち、直径は最大で1mほどになる。材はケヤキやクリに似て木目が美しく、程良い硬さがあるため建材、家具、楽器、彫刻、工芸品などに使われる。
【ケンポナシの育て方のポイント】
・土質を選ばず丈夫に育ち、ほとんど手がかからない。
・風通しの良い、乾燥気味の場所を好むが、川沿いに植えられることも多く、適応力はある。
・花や実を存分に楽しむためには日向に限るが、半日蔭でも育つ。
・樹形が大きくなるため、一般家庭には向かない。進んで庭木として使うようなものではなく、公園や寺社に昔の木が残っているケースが多い。
【ケンポナシの品種】
・ケケンポナシ
誤植に見えかねない妙な名だが漢字表記は「毛玄圃梨」で、葉の裏や果実等に褐色の毛が密生する。葉はより薄く、縁のギザギザはより浅くて目立たないが、生体を見ても違いは分かりにくい。西日本ではケンポナシよりも個体数が多く、材木としては両者を区別せずに扱う。
・ヒロハケンポナシ(広葉玄圃梨)
葉の幅が広い品種で、東北地方に見られる。
・フイリケンポナシ(斑入り玄圃梨)
葉に模様が入る品種
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ケンポナシの基本データ
【分類】クロウメモドキ科/ケンポナシ属
落葉広葉/高木
【漢字】玄圃梨(けんぽなし)
【別名】テンポノナシ/ケンポコナシ
テンボナシ/テンポナシ/テンプナシ
ケンポ/ケンノミ/アマザケ
【学名】Hovenia dulcis
【英名】Japanese raisin tree
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】5~20m
【用途】花木/公園
【値段】500円~