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クロモジ/くろもじ/黒文字
Spicebush
【クロモジとは】
・関東地方以西の本州、四国(瀬戸内海側)及び九州の雑木林に見られるクスノキの仲間。ダークグリーンの樹皮にできる黒い斑点を文字に見立てて「黒文字」と名付けられた(諸説あり)。日本のほか中国にも分布する。
・樹皮や葉にはテルペネオールやリモネンという芳香成分が含まれ、枝葉を折ると柑橘系に似た特有の香りがする。樹皮を残したクロモジの枝や材で作られた爪楊枝(切り箸)は高級品として茶席の和菓子などに添えられる。また材が白くて美しく、緻密かつ均質で加工しやすいことから細工物や雪国で使う「輪かんじき」などにも使われる。
・葉は細長い楕円形で、多くの場合、先端が尖る。長さ5~10センチ、幅2~5センチほどで、枝から互い違いに生じる。成葉の表面は濃緑色で毛もないため、触れるとツルツルしている。名前の由来となる文字のような黒いものは藻類。
・クロモジの開花は葉の展開とほぼ同じ3~4月。花びらは半透明でその繊細さが美しく、生け花の花材にも使われる。雌雄異株で花には雄花と雌花があり、それぞれの花序(花の集り)は球形になる。
・雌花の後には直径5ミリほどの果実ができ、9~10月になると黒く熟す。外見もピカピカであるが果肉にも脂分が多い。果実や枝葉から採取される「クロモジ油」には抗菌や鎮静に効果があるリナロールが含まれ、化粧品、香料、入浴剤に使われる。
・クロモジの枝には止血や口臭を消す作用があり、歯ブラシのない時代にはクロモジの枝の一端をブラシのように裂き、「総楊枝」を作って常用した。また、クロモジの根を煎じたものは「鳥樟脳」あるいは「釣楠」という生薬となり、薬用酒などに使われる。
・独特の味わいがある枝を束ねて作った垣根や袖垣は「クロモジ垣」と呼ばれ、日本庭園好きの間では人気が高い。見た目だけではなく上述の油分があることから耐久性も高い。
・本来は庭に用いるような樹木ではなかったが、あまり大きくならないこと(直径は最大で10センチほど)や、日陰でも育つこと、そして雑木人気の高まりとともに普及してきた。
【クロモジの育て方】
・自然環境では明るい雑木林に見られることが多く、腐葉土があるようなやや湿った土地を好む。ただし、環境適応力はあり、それほど土質は選ばない。
・枝数が多く芽を出す力も強いため、ついつい刈り込みたくなるが、自然樹形を鑑賞する樹木であり、人工的な剪定は似合わない。
・沖縄や九州を中心に分布する同属のアオモジと比べれば寒さに強い。また、クスノキ科の特徴として病害虫はつきにくい。
【クロモジの品種】
・斑入りクロモジ
葉に緑色の模様が不規則に入る品種。園芸用として稀に流通する。
・オオバクロモジ
北海道南西部及び東北地方の日本海側に分布する変種。葉は文字どおり大きいが薄い。積雪地帯のブナ林に見られ、現地では単にクロモジと呼ぶ。
【クロモジに似ている木】
・シロモジ
似たような雰囲気を持つが、シロモジの葉は三つに裂けるので、まったく異なる。また、クロモジは花の後に若葉が展開するのに対して、シロモジは花と同時に若葉が開く。ちなみにクロモジ同様、爪楊枝に使われるダンコウバイは、シロモジと似た葉を持つ。また、カナクギノキ、アブラチャン、ヤマコウバシなどクスノキ科の近縁種は似たような花を咲かせる。
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クロモジの基本データ
【分類】クスノキ科/クロモジ属
落葉広葉/低木
【漢字】黒文字(くろもじ)
【別名】オオバクロモジ/クロキ
トリシバ/トリキ
【学名】Lindera umbellata
【英名】Spicebush
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】2~6m
【用途】雑木の庭
【値段】1000円~