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クマノミズキ/くまのみずき/熊野水木
Large leaf dogwood
【クマノミズキとは】
・本州南部、四国及び九州の山野に分布するミズキ科の落葉高木。クマノは「熊野」で、最初に発見された紀伊半島の熊野地方にちなみ、ミズキは春先に枝を切ると樹液が滴ることによる。日本以外でも中国本土、台湾、朝鮮半島、ヒマラヤなどアジア各地に見られる。
・庭木としての利用は少ないが、時折公園等に植栽される。庭木としより広く普及するハナミズキやヤマボウシは同じミズキ科だがヤマボウシ属で、それらに比べると本種の葉は遥かに大きく、花の様子はまったく異なる。
・葉は長さは6~15センチ、幅3~7センチの楕円形。近縁のミズキよりも葉の幅は狭く、先端は尾状に尖る。表面は濃緑色で裏面は白っぽく、6~8対ある葉脈が目立つ。縁のギザギザはほとんどない。
・幹や枝葉の様子はミズキによく似ており、遠めに見ると区別が難しいが、ミズキは枝から互い違いに葉が生じるのに対し、本種は対になって生じる。クマノミズキの葉は枝先付近に多く、若い枝は赤みを帯びる。
・花期は6~7月で、5~6月に咲くミズキよりも遅い。その年に伸びた枝先に白い小花が多数集まって棚状になり、葉を覆うようにして咲く。小花は4本の雄しべと4枚の花弁が目立ち、近付いてみると芳香があるものの、概して高い位置に開花するため、香りを楽しむのはやや難しい。シベの基部となる花盤には蜜があって虫がよく集まり、ハチの蜜源となる。
・花が終わると直径5~7ミリほどの球形の実ができる。黒紫に熟すのはミズキよりも遅い、9~11月頃。花序及び果序(果実の集り)の枝は、始め緑色だが、実がなる頃には赤くなり、遠目から見ると珊瑚のような花が咲いているように見える。カラス、ムクドリ、ヒヨドリ、エゾビタキ、オオルリ、コゲラなど多くの野鳥がこれを好んで採食する。
・果実の核(種子)に穴がないのもミズキとの違い。果実はミズキよりも小さいが、より長い間枝に残り、種子を蒔けばよく発芽する。
・幹は直立して分岐が多く、直径は最大で40センチほどになる。樹皮は緑色を帯びた灰色で、樹齢を重ねると浅く割れ目が入る。材はミズキよりも硬く、薪炭としてはミズキより適する。稀に建築、彫刻、櫛などに利用される。
【クマノミズキの育て方のポイント】
・煙害に強く都市部の街路や公園に植えることができるが、寒さには弱く、東北地方の北部や北海道では植栽が難しい。
・肥沃な土を好むが、あまりこだわらずに育つ。
・大木となるため植栽には広いスペースが必要。
・剪定に耐えるが、刈り込んで仕上げるような木ではない。ミズキよりは樹形が劣るとされる。
【クマノミズキとミズキの違い】
英名を見る限り、葉の大きさで見分けられそうだが、実際は個体差があって難しい。
最も簡単な見分け方は、葉の出方で、クマノミズキの葉は一箇所から左右に葉が生じる「対生」であるのに対し、ミズキは互い違いに生じる「互生」となる。ただし、クマノミズキでも稀に互生になる。
葉以外では、枝の断面がミズキは真ん丸でクマノミズキが崩れた円形で角があること、ミズキの冬芽は芽鱗に包まれるが、クマノミズキの冬芽は裸芽で褐色の毛があることなどの違いもある。
クマノミズキの基本データ
【分類】ミズキ科/ミズキ属
落葉広葉/高木
【漢字】熊野水木(くまのみずき)
【別名】サワミズキ
【学名】Cornus macrophylia
【英名】Large leaf dogwood
【成長】早い
【移植】やや難しい
【高さ】5~18m
【用途】公園/雑木の庭
【値段】5000円~