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クヌギ/くぬぎ/橡
Sawtooth oak
【クヌギとは】
・青森県を除く本州、四国、九州及び沖縄に自生するブナ科の落葉高木。日本に限らずアジア東北部~ヒマラヤの山地や丘陵に分布するが日本では身近な雑木林に多い。
・本種の果実(ドングリ)は縄文時代から食用され、「国の木」が語源とされるほど日本人には馴染みが深く、古事記や万葉集にもその名が登場する。漢字表記は椢、橡、椚、椡、栩、櫪、櫟、檞など多数。
・クヌギの語源は他にも、果実を食用にしたことによる「食乃木(クノギ)」、葉や実がクリに似ることから「栗似木(クリニギ)」がある。
・葉は先端の尖った細長い楕円形。縁はノコギリ状にギザギザしているが、クリとは違ってギザギザした部分が白い。葉は枝から互い違いに生じ、若い枝には灰色の軟毛を生じる。環境が良ければ秋になると綺麗に黄葉する。
・切り倒しても20年ほどで元どおりになるという再生力の高さから、薪炭やシイタケの原木として使われ、何度も伐採されて株立ち状になったものが多い。シイタケ栽培に使われるのは8~15年生のクヌギで、シイタケが育つ養分を多量に含むため、カシよりも収量が多い。薪炭材としてもクヌギは優秀であり、かつては優れた産地の名前を冠して佐倉炭、池田炭などと称した。
・現代ではブナ、カシ、コナラなど複数の木の実をドングリというが、本来ドングリ(団栗)は真ん丸の実=クヌギの実を意味していた。ドングリは直径2~3センチほどの球形で、コナラ属の中では最も大きい。ドングリの半分は殻斗と呼ばれる帽子で覆われ、その鱗片は外側へ伸びて反り返り、独特の形状からオカメドングリとの通称がある。ドングリが褐色に熟すのは花が咲いた翌年の秋。
・あまり話題にならないが、ソメイヨシノが咲く頃、ミズナラと似たような花を咲かせ、開花中に新葉を展開させる。花には雌雄あり、雌花は新枝の上部にある葉の脇にひっそりと咲き、目立たない。
・雄花は長さ10センチほどの紐状。新枝の下部に垂れ下がり、多少の風でも花粉を飛ばすため、辺りが黄色くなる。また花自体もほどなく落下し、地面を黄色(薄茶色)に覆いつくす。
・幹は直立し、樹齢を重ねると樹皮には縦の裂け目ができ、底部はオレンジ色を帯びるのが特徴。クヌギの樹皮やドングリの皮、新芽を使って赤紫色に染めた衣服は「橡染め(つるばみぞめ)」といい、古代には身分の低い者や若年者が身にまとった。樹液は言わずと知れたカブトムシやクワガタの大好物であるが、本種の天敵であるカミキリムシもやって来る。
【クヌギの育て方のポイント】
・基本的には日当たりと水はけのよい場所を好むが、半日陰には耐える。土質は選ばず丈夫に育つ。
・放任すれば株立ちの雄大な樹形になるが、一般家庭で育てるには定期的な剪定が欠かせない。薪に使われたことで分かるように、本体を切り倒しても新梢(ひこばえ)が生じ、株を更新することができる。
・剪定によって人工的な形にするのは難しく、自然風の手入れが望まれる。
・ヤママユガやマイマイガなど、蛾の幼虫(ブランコケムシ)によって葉を食害されることがある。被害がひどくなるのはこれらが大きく育つ6月上旬頃。昼間、枝葉や幹に潜んでいるとこころを捕獲したい。
・カミキリムシ(シロスジカミキリ)の幼虫が材を食害し、枯死に至ることがある。カミキリムシの産卵痕は複数の穴が幹を一周するように並ぶ特有のものだが、内部で育つ幼虫を見付けるのは難しい。
【クヌギとコナラ等の見分け方】
・クヌギとコナラは混同されがちだが、葉の形、色味や大きさは下の画像のように異なる。また、コナラは黄葉後すぐに葉を落とすが、クヌギは翌春に葉を入れ替えるまで枝に残るという大きな違いがある。
・クヌギはクリやアベマキにも似るが、クリは葉のギザギザの先端が白くないこと、アベマキは葉の幅がより広く、裏面に毛があることで見分けられる。
【クヌギの品種】
葉に模様が入る斑入りクヌギがある。
クヌギの基本データ
【分類】ブナ科/コナラ属
落葉広葉/高木
【漢字】橡/櫟/椚(くぬぎ)
【別名】クノギ/ツルバミ
【学名】Quercus acutissima
【英名】Sawtooth oak
【成長】早い
【移植】難しい(根が深い)
【高さ】5~17m
【用途】公園/雑木の庭
【値段】800円~