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キササゲ/きささげ/木大角豆
Japanese Catalpa
【キササゲとは】
・揚子江以北の中国中部及び南部を原産とするノウゼンカズラ科の落葉樹。果実を薬用するため日本に渡来し、庭木として暖地に植栽されるほか、野生化したものが各地の川岸や林縁で見られる。
・キササゲの特徴は細くて長い豆果にあり、野菜として馴染みのササゲ(豆)のような実がなる木であるとして命名された。別名はアズサ、ライデンボクなど。
・万葉集には梓(あずさ)あるいは梓弓を詠んだ歌が数多く掲載され、本種をその梓とする説もあるが、本種が日本へ渡来したのは江戸時代初期で、本来のアズサはアカメガシワやミズメであると考えられている。
・別名の「ライデンボク(雷電木)」あるいは「雷の木」は、この木を庭の片隅に植えると雷が落ちないという迷信にちなんでおり、これにならって神社仏閣に植えられる例もある。ただしこの迷信は中国の文献を誤読したもので、チャンチンやナナカマドにもライデンボクという別名がある。
・葉は直径9~25センチの広い卵形で、浅く3~5つに裂けるものが多い。先端は尖って、縁にギザギザはなく、表面は濃緑色で質厚。葉脈上には柔らかな毛を生じる。5~18センチの長い柄があって枝から対になって生じ、葉をちぎると特有の臭いがあるが、民間療法ではこれを煎じて塗布すれば、白癬菌(水虫、いんきん、たむし)に効果があるとされる。
・キササゲの開花は6月~7月。淡いクリーム色をした花が、キリのような円錐状に集まって立ち上がる。花は直径は2センチ程度の漏斗型で先端は五つに裂けて唇状となり、裂片の縁は縮れる。下部の内側に暗い紫色の斑点があって美しい。萼も唇状に二つに裂け、水分を含む。
・雌雄同株で花には雌しべ1本と雄しべ5本がある。雌しべの先端(柱頭)は二つに裂け、その長さは雄しべと同じ。5本ある雄しべは下2本がより長く、先端に葯(花粉)を持つが、残りの3本は退化している。
・花の後にできる果実は長さ30センチ、太さ4~5ミリほどで、一箇所から多数がぶら下がる。実は10月頃になると褐色に熟し、自然に裂けて種子を放出するが、抜け殻は葉が落ちても長い期間にわたって枝に残り、冬の青空に映える。
・種子は長さ9ミリほどの扁平した線形。両端にある細長い絹毛を使って風に舞う。キササゲの果皮(サヤ)はカリウムを含んでおり、利尿作用を持つ。生薬名を「梓実(シジツ)」といい、完熟前の9月に採取して乾燥させたものを、煎じて飲用する。
・幹は真っすぐに伸び、樹高は最大で15mほどに、直径は60センチほどになる。樹皮は灰褐色で、樹齢を重ねると縦に裂け目が入る。樹皮は生薬名を「梓白皮」といい、解熱や除虫に用いる。
【キササゲの育て方のポイント】
・暑さ寒さに強く、北海道から九州まで幅広い地域に植えることができる。肥沃かつ湿気のある場所を好むため、植え付け前に腐葉土等を施すのがよい。
・日向を好むが、半日陰でも育つ。病害虫には強く、これといった被害は見られない。また、大気汚染にも強い。全体に大振りな木であり、家庭に植栽することは少ないが、葉が大きくて木陰を作りやすいため、街路樹に使われることがある。ただし、落下する豆果を嫌ってかあまり普及していない。
・特徴的な豆実を鑑賞し、薬用とする木であって剪定によって樹形を鑑賞するような木ではないが、風に弱く、放置すると枝が折れやすいため適宜剪定する必要がある。
【キササゲの品種】
・トウキササゲ
中国産で葉先が長く尖る。果実は薬用にならないが、良質な材を版木とした。本の出版を難しい言葉で「上梓」というのはこれにちなむ。
北アメリカ産のキササゲで、より大きな白花がより多く咲く。明治時代に新宿御苑に植えられたのが始まりで、その後、各地に広がっている。葉はキササゲのように裂けず、果実の直径は1センチもあってキササゲより太い。
・オオアメリカキササゲ(ハナキササゲ/カタルパ)
花は4~5センチでアメリカキササゲ(3センチ)より大きく、内側に紫色の筋模様が入る。樹高は30m、幹の直径は50センチにもなり、果実も大形。なお、アメリカキササゲの花は花弁が縮れるが、オオアメリカキササゲの花弁は縮れない。
キササゲの基本データ
【分類】ノウゼンカズラ科
キササゲ属
落葉広葉/高木
【漢字】木大角豆(きささげ)
檟/木豇豆
【別名】シジツ/アズサ/ライデンボク
カミナリノキ/ショウグンボク
カワラササギ
【学名】Catalpa ovata
【英名】Catalpa
【成長】早い
【移植】難しい
【高さ】5~15m
【用途】公園/薬用樹
【値段】1500円~