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カラタチ/からたち/枳殻
Trifoliate orange
【カラタチとは】
・中国北部あるいは中部を原産地とするミカンの仲間。万葉集や枕草子にもその名が登場しており、奈良時代以前に朝鮮半島を経由して渡来したと考えられている。
・当初は果実を薬用するために栽培されていたが、後に野生化し、本州中部以南の暖地の山中に見られる。最も寒さや病気に強い柑橘類であり、庭木あるいは他のミカン類の台木にも使われる。
・日本には似た花を咲かせるタチバナが古くから自生しており、中国(古い名を唐という)から来た本種を「唐橘(カラタチ)」と名付けた。開花は芽吹き前後の4~5月で、「枳殻の花」は春の季語。白い花弁と萼が5枚ずつあり、1本の雌しべを20本の雄しべが囲んでいる。
・花弁は反り返るように生じる上、基部がくぼんでいるため、タチバナよりも疎らな印象がある。花の直径は3.5~5センチで甘い香りがある。
・花の後には水分の多い果実ができる。直径3~5センチほどの球形 で、でき始めは緑色かつ軟毛に覆われるのが他のミカン類との最大の違い。果実は10月頃に黄熟し、葉が落ちた後も枝に残る。
・カラタチの果実は苦味が強く、果皮に独特の臭いがあるため生で食べることはない。未熟な果実を乾燥させたものは薬用となり、健胃や利尿に用いる。生薬名は枳殻(キコク)。種子はクリーム色をした楕円形で、長さは1センチほど。
・葉は直径4~7センチの小葉が3枚が一組(稀に5枚一組)になって枝から互い違いに生じる。小葉は楕円形で縁に粗いギザギザがあり、表面は光沢のある濃緑色。3枚ある小葉のうち先端にある葉が最も大きく、葉柄には細長い翼がある。一般的に落葉樹として扱われるが、暖地では冬でも葉を落とさず緑を保つ。
・枝は緑色で角ばり、多数に分岐して繁茂する。落葉期でも青々としており見栄えはするが、枝や幹には葉から変形した長さ1~5センチにも及ぶ鋭いトゲが交互に並ぶため扱いにくい。カラタチが垣根として使われるのは、これを防犯目的としたもの。
・カラタチの若い樹皮は緑色だが、樹齢を重ねると灰褐色となり、部分的に剥離する。他のミカン類と同じような雰囲気であり、樹皮だけで見分けるは難しい。幹の直径は最大で30センチほど。
・かつては畑や農家の境界などに使われ、童謡(「カラタチの花」作詞/北原白秋・作曲/山田耕作)にも歌われた。花はもとより晩秋に黄金色の果実が鈴なりにできる様子には風情があるが、トゲの扱いが厄介なことや、他にもトゲのある樹種が知られるようになり、近年ではカラタチを見ることが少なくなった。
【カラタチの育て方のポイント】
・暑さ寒さに強く、北海道西南部から沖縄までの広い範囲に植栽できる。ただし冬の寒風がまともに当たる場所は避けた方がよい。
・半日陰程度なら耐えられるが、日照が少ないと花付きが悪く、実も少なくなる。
・本来は湿気のある肥沃な石灰岩地を好むが、栽培品の場合は土質を選ばずに育つ。ミカン類の台木に使われるほど丈夫な性質を持つ。
・垣根に使われることからも分かるとおり、芽を出す力は強く、剪定にもよく耐える。ただし、トゲだらけであり、覚悟を決めて作業する必要がある。剪定後の屑の扱いも現代社会では悩ましい。
・カラタチのトゲには、アリやハチの毒腺と同じギ酸(蟻酸)を含む。肌が弱い場合はこれによってかぶれることもある。
・他のミカン類と同様、アゲハやクロアゲハの幼虫によって葉を食害されることがある。地面に糞を確認したら、葉裏を探して早めに捕獲した方がよい。
【カラタチの品種】
・雲竜カラタチ
枝が「雲竜型」にくねくねと曲がるタイプのもの。普通のカラタチに比べると実のなりは劣るが、成長が遅く枝振りがユニークなことから盆栽などに使われる。
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カラタチの基本データ
【分類】ミカン科/カラタチ属
落葉広葉/低木
【漢字】枳殻/唐橘/枸橘
【別名】キコク
【学名】Citrus trifoliata
【英名】Trifoliate orange
【成長】早い
【移植】普通
【高さ】2~6m
【用途】果樹/垣根/柑橘類の台木
【値段】1000円~