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カスミザクラ/かすみざくら/霞桜
Kasumi-zakura
【カスミザクラとは】
・北海道~九州北部の寒冷地に分布するバラ科の落葉高木。日本に自生する限られた野生のサクラの一つであり、開花期の様子を山野に立ち込める春の霞に見立てて、カスミザクラと名付けられた。日本以外では朝鮮半島や中国の東北部に見られる。
・カスミザクラの開花は4~5月。よく似たヤマザクラに比べると半月~ひと月ほど遅く、平地のサクラが一通り咲き終わった頃に咲く。ヤマザクラ同様に開花と新葉の展開が同時に進むが、カスミザクラの花柄には毛があること、新葉が赤くなるヤマザクラと違って緑色になることなどを特徴とする。
・花は前年枝の葉の脇から伸びた花序に2~3輪ずつ垂れ下がり、1本の雌しべと35~40本の雄しべがある。直径2~3センチで5枚ある花弁は白あるいは微かにピンク色を帯び、先端に切れ込みがある。花の裏側の萼は5つで基部は筒形。萼筒にも細かな毛があるが萼片には毛がなく、その縁にギザギザがない。
・花の後にできる果実は球形で、5~6月頃になると赤から黒紫色に熟す。食べることはできるが、少し苦味があって美味しくないため積極的に食用されることはない。
・葉は長さ8~12センチの楕円形で、半分より先の方で幅が最大になる。先端は尾状に鋭く尖り、縁にある細かなギザギザは一重の部分と二重になる部分がある。両面とも光沢があり、裏面には立った毛があるが、淡い緑色であり白っぽくはならない。葉柄はやや赤みを帯び、若い枝は黄褐色。寒冷地では秋になると綺麗に色付く。
・カスミザクラの樹高は最大25mほどで、幹の直径は1m弱にも達する。樹皮は紫がかった褐色だが、ヤマザクラのような赤みは乏しい。樹齢を重ねると樹皮は灰褐色になり、横長の皮目(シワ)が目立つようになる。材は稀に建築や器具、彫刻などに使われる。
【カスミザクラの育て方のポイント】
・ヤマザクラに似るがより標高の高い場所に見られる。基本的に丈夫な性質を持ち、他のサクラよりも乾燥に強いが、暑さにはやや弱い。
・日向を好む陽樹であり、日陰では花が咲かず、生育も悪い。また、有機質の多い肥沃な土地を好むが、街路樹に使われるほどの適応力がある。
・他のサクラ類と同様に剪定を好まず、切り口から腐食しやすい。剪定の適期は落葉期であり、切り口は石灰硫黄合剤などで手当てをした方がよい。
【カスミザクラの品種】
・ミヤマカスミザクラ
山形市野草園の職員であった志鎌節郎氏が同園で発見した、カスミザクラとミヤマザクラの自然交配種。花弁の先端が二つに裂け、花軸が分岐するという特徴を持つが、山形市野草園でしか見ることができない。
【カスミザクラに似たサクラ】
花の直径は3~4センチでカスミザクラより大きく、花色が濃い。葉もカスミザクラより大きく、緑が濃い。
開花はカスミザクラよりもひと月ほど早く、花は直径3~4センチで大きい。
・ナラノヤエザクラ
カスミザクラの八重咲き種。葉に毛がある。
カスミザクラの基本データ
【分類】バラ科/サクラ属
落葉広葉/高木
【学名】Cerasus leveilleana
【別名】ケヤマザクラ(毛山桜)
【成長】早い
【移植】難しい
【高さ】15~25m
【用途】庭木/公園/街路樹/花材
【値段】8000円~