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カキ/かき/柿
Persimmon tree
【カキとは】
・中国を原産とするカキノキ科の落葉樹。奈良時代以前に日本へ渡来し、野生化したものが本州~九州の山地に見られる。天高い秋の青空に映える朱色の果実には、カロチンやビタミンが豊富に含まれており食用される。
・カキは果実の甘味によって渋柿と甘柿に大別されるが、東日本には渋柿が、関東以西には甘柿が多いとされる。甘柿は原産地の中国に見られないため、日本原産のヤマガキが改良されたものとする説もある。なお、自生の国産のカキには沖縄に分布するリュウキュウマメガキもある。
・あまり注目されないが5~6月には画像のような花が、その年に伸びた枝葉の脇に咲く。雌雄同株で花には雌雄があり、雌花には1本の雌しべと退化した8本の雄しべが、雄花には雄しべだけが16本ある。
・花は雌雄いづれもクリーム色をした釣鐘型で、先端が四つに裂けて反り返る。花の裏側にある緑色の萼は、雌花の方がより大きく、雄花の萼は目立たない。カキの実は秋の季語だが、カキの花は夏の季語であり、これを表す「柿の薹(とう)」という言葉もある。
・葉は大きな卵形あるいは楕円形。皮質で光沢が美しく、品種によっては紅葉にも観賞価値がある。若葉はレモン以上にビタミンCを含み、殺菌作用もあることから「柿の葉茶」や「柿の葉寿司(釣瓶寿司とも)」に使われる。葉は長さ7~15センチ、幅5~10センチ、葉柄は長さ1~2センチほど。枝から互い違いに生じ、葉の裏面は短毛で覆われる。
・カキの実が熟すのは10~11月。交配や突然変異によって甘柿と渋柿とに分かれるが、いずれも未熟なうちは渋く、前者は熟すにつれて甘味が出る。渋柿の渋は水に溶ける性質を持つため、干し柿として食すのが普通で、収穫した渋柿の実全体にアルコールを噴霧し、密閉して作る。
・渋柿の渋は薬用となり、下痢止め、血圧降下、毛細血管の老化防止に効能があるとされる。また、民間療法では虫刺され、打ち身、霜焼けなどに外用する。
・カキの実は野鳥に大人気であり、ツグミ、ヒヨドリ、オナガ、メジロ、キツツキ、ショウビタキ、シロハラを始めとしてほぼ全ての野鳥が集まるが、人間とは違って渋柿を好むものが多い。
・渋柿を絞って発酵、熟成させたものは「柿渋」と呼ばれ、昔から防腐、防水用の塗料として使われてきた。
・樹高は品種によって様々だが、全般にカキの木は折れやすく植木屋泣かせで知られる。しかし、その材は硬く、ゴルフクラブのヘッドに使われ、「硬き木」がカキの語源になったという説もある。なお、カキの材でクロガキというものがあるが、これは品種ではなく、黒い材あるいは黒い縞模様が入った材そのものをいう。
・日本産の材木で黒いものは珍しく、模様が味わい深い上、普通のカキよりも硬質であるため重用されるが、立木の段階ではクロガキかどうか判別できない。クロガキは茶室の床柱、茶道具、家具などに使われる。なお、優良な材として知られるコクタン(黒檀)はインドから東南アジアにかけて自生するカキノキ属数種類の総称であり、黒色をした材が珍重される。
・カキの語源については、「赤木」(赤い実がなる木の意)、「赤き実」あるいは「赤き葉」が転訛したとする説、朝鮮語の「kam」が変化したとする説などがある。
【カキの育て方のポイント】
・日当たりさえ良ければ、土質を選ばず丈夫に育つが、寒さや降雪の激しい北海道では育てられない。
・実がなる年とならない年の差が大きいため、摘果(間引き)を行う。他の枝よりも明らかに長い枝(徒長枝)や細くて元気がない枝は、果実が稔る前に剪定するのがよい。
・異なる品種を複数植えると実のなりが良くなる。
・葉の裏や葉先にイラガ(蛾)やヒロヘリアオイラガの幼虫が潜み、小枝にオオミノガ(ミノムシ)の蓑がぶら下がることがある。イラガ類は触れると激痛を引き起こす危険な害虫の一つであり、注意を要する。スズメノショウベンタゴと呼ばれる白黒ツートンの繭は冬場に見付けやすい。
【カキの園芸品種】
・多数の園芸品種がある。甘柿としては「次郎」「富有」「駿河」「御所」「禅寺丸」が有名。渋柿としては「祇園坊」「平核無」「西條」「堂上蜂屋」「四ツ溝」などが知られる。
また、実が小ぶりなヤマガキ、マメガキ、ロウヤガキ、シセントキワガキなど、もっぱら生け花や盆栽に使われる品種もある。
渋柿(しぶがき)
甘柿(あまがき)
カキの基本データ
【分類】カキノキ科/カキノキ属
落葉広葉/中高木
【漢字】柿(かき)
【別名】カキノキ/朱果(シュカ)
赤実果(セキジツカ)
ヤマガキ/シナノガキ
【学名】Diospyros kaki
【英名】Persimmon tree
【成長】難しい
【移植】やや早い
【高さ】3~20m
【用途】果樹/盆栽/鉢植え
【値段】800円~