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ツブラジイ/つぶらじい/円ら椎
Tsubura-jii tree(Japanese chinquapin)
【ツブラジイとは】
・関東以西の本州、四国及び九州に見られるブナ科の常緑樹。類種のスダジイと併せて一般にシイノキと呼ばれる。西日本の山地に多いが、庭木としても江戸時代から防火用の垣根などに使われ、現代においても大きな屋敷や寺院にその名残が見られる。日本以外では朝鮮半島の南部に自生。
・名前の由来には、果実(=堅果=ドングリ)に円みがあるためという説、ドングリの様子がツブ(タニシの古語)に似ているためという説がある。スダジイやマテバシイに比べれば丸みを帯びるが、球形というわけではない。
・ツブラジイの葉は長さ4~10センチの長楕円形で枝から互い違いに生じる。スダジイに比べると小型でやや細長く、質は薄い。葉の縁の上半分にギザギザ(鋸歯)があるものと、ないものがある。
・ツブラジイの開花は5~6月。花には雌雄があり、よく目立つのはクリーム色をした紐状の雄花。雄花序(花の集り)は長さ5~10センチで、新枝の下部にある葉の脇から垂れ下がる。シイの仲間は昆虫によって受粉を促される虫媒花であり、雄花はクリやイボタノキのような匂いを放って虫をおびき寄せる。
・雌花の花序は長さ8センチほどで、上方にある葉の脇から直立する。雌花はその後、ドングリとなり、翌年の10~11月に熟す。ドングリは直径6~12ミリほどでスダジイより小さい。このため「コジイ(小椎)という別名がある。
・ドングリを覆う「殻斗」は三つに裂けるが、それぞれの裂片がさらに二つに裂けるため、六つに裂けるように見える。殻斗の中から顔を出した堅果は、スダジイと同様に食用となる。渋味がないため、アク抜きせずにそのまま炒めて食べることができるが、ヤマガラなどの野鳥もこれを好んで食べる。
・樹皮はスダジイに比べると一般に亀裂が少なく平滑になりがち。材は稀に器具や建材に使われる。材木とした場合の材質はスダジイと異なるというが、遜色がないものもあり、個体差が大きい。ちなみにスダジイとツブラジイの雑種「ニタリジイ」というものもあり、見分けはつけにくい。
【ツブラジイの育て方のポイント】
・自生地は土地の肥えた山野であり、肥沃な土を好む。性質はスダジイと同様。大木となるため、一般家庭で庭木として維持するには、定期的な手入れと相応のスペースが必要となるが、スダジイに比べると寿命は短い。
・剪定にはある程度耐えるが、強度の剪定を繰り返すと衰弱しやすい。また、基本的には暖地性であり、関東北部より北では育ちが悪い。
【ツブラジイに似ている木】
ツブラジイの基本データ
【分類】ブナ科/シイノキ属
常緑広葉/高木
【漢字】円ら椎(つぶらじい)
【別名】コジイ(小椎)/タイコジイ
【学名】Castanopsis cuspidata
Schottky
【英名】Tsubura-jii tree
(Japanese chinquapin)
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】10m~25m
【用途】主木/垣根/街路樹
【値段】1500円~