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ヤドリギ/やどりぎ/寄生木・宿木
Japanese mistletoe
【ヤドリギとは】
・北海道~九州に分布する半寄生性の常緑樹。本種の果実を食べた鳥の糞が落葉樹の樹皮に着床し、そのままそこで宿るように育つためヤドリギと名付けられた。街中のケヤキやエノキにも着床しており、特に冬季は鳥の巣のような大きな塊が、木の上でよく目立つ。日本以外では中国や朝鮮半島に分布。
・日本のヤドリギは、ヨーロッパや西アジアに分布するオウシュウヤドリギ(セイヨウヤドリギ)の亜種とされる。白い実がなるオウシュウヤドリギは、森の精霊あるいは春の女神が宿る木として神聖視され、ヨーロッパではクリスマスになるとこれでリースを作り、玄関口に飾る習慣がある。
・日本では一年を通じて葉を落とさない常磐の植物とし、祝賀の際の呪物として使った。古い時代にはヤドリギの塊を、天狗の巣だと信じていたという説も。
・葉は皮質で先端は丸く、縁にもギザギザはない。両面とも無毛で同じような表情。葉柄はなく枝から対になって生じる。枝は緑色の円柱状で柔らかいが強靭。規則的に2~3つに分岐しながら伸び、ところどころに節がある。
・ヤドリギの開花は2~3月。花は直径3ミリほどで柄はなく、質厚の萼は四つに裂ける。雄しべには花糸がなく、葯は萼片に付き、黄色い花粉を出す。雌雄異株で雄花は3~5個、雌花は1~3個ずつ枝の頂部に咲く。
・果実は直径7ミリほどの球形で、10~12月になると半透明のクリーム色に熟す。中には深緑色の平たい種子が一粒入る。果実はシベリアからの渡り鳥であるキレンジャクの好物。
・ヤドリギの種子は粘液に包まれている。鳥の体内で消化されず、糸を引いた状態で落下し、その粘り気によって着床し、宿主から養分や水分を吸収して育つ。ヤドリギの宿主となるのは上記のほか、サクラ、クリ、ミズナラ、ブナなど。
・ヤドリギの漢名は「冬青」、生薬名は「桑寄生(そうきせい)」。漢方では枝葉を刻んで乾燥させ、煎じて飲めば腰痛や産後の疲労回復など女性特有の病に効果があるとされる。また、ヤドリギの果実をホワイトリカーに漬け込めばヤドリギ酒ができるが、味や香りはほとんどない。
・「ヤドリギ」という言葉は、他の樹木に寄生して育つ植物の総称として使われることもある。
【ヤドリギの育て方のポイント】
・人為的に着床させることは難しいが、ベトベトの種子を樹皮に付着させれば育てるができる。ただし、成長はかなり遅く、画像のような塊になるには数年を要する。
・ヤドリギは「半寄生性」であり、自分自身でも葉を使って光合成するため、宿主を枯らすことはない。
【ヤドリギの品種】
・アカミヤドリギ
「赤実」という名前だが、オレンジ色の果実ができる。
【ヤドリギに似た植物】
・オオバヤドリギ
暖地の常緑樹に寄生するホザキヤドリギ属の常緑低木。枝葉に赤褐色の毛が密生し、株全体が赤っぽい。開花は秋で、果実は赤。
・ヒノキバヤドリギ
同じく常緑樹に寄生するホザキヤドリギ属の常緑低木。葉は小さな突起状でヒノキの新葉のように見える。果実は黄緑色で直径は2ミリほど。
・ホザキヤドリギ
東北~中部地方に分布する落葉性のヤドリギ。6~7月に黄緑色の花が穂状に咲く。果実は淡い黄色で花よりも大きく、落葉期にはよく目立つ。
・マツグミ
関東地方以西に分布するヤドリギ科マツグミ属の落葉小低木。文字どおりマツやツガ、モミなどの針葉樹に寄生。果実は直径5ミリほどの球形で赤く熟す。
・ツクバネ
ビャクダン科の落葉低木。ヤドリギとの直接的な関係はなく形態も異なるが、他の樹木に寄生して育つ。
・セッコク
ヤドリギの基本データ
【分類】ビャクダン科/ヤドリギ属
半寄生の常緑性/小低木
【漢字】寄生木/宿木
【別名】トビヅタ/ホヤ/ヒョウ
ツギホ/テングノコシカケ
【学名】Viscum album subsp.
coloratum
【英名】Japanese Mistletoe
【成長】遅い
【移植】困難
【高さ】40~80cm
【用途】クリスマスリース
【値段】─