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ピラカンサ/ぴらかんさ
Firethorn
【ピラカンサとは】
・バラ科トキワサンザシ属の総称。日本で「ピラカンサ」と呼ばれるのは主にトキワサンザシ、タチバナモドキ、ヒマラヤトキワサンザシの3種だが、ここでは最も目にする機会の多いトキワサンザシを便宜上、ピラカンサとして扱う。
・ピラカンサは南ヨーロッパ及び西アジアを原産とするバラ科の常緑樹で、明治時代中期に日本へ渡来した。花数が多く、赤い実がたわわに稔るため庭木として愛好され、盆栽や生け花にも使われる。
・花や秋にできる実がサンザシに似ていること、冬季にも葉を落とさない常緑性であることから、和名をトキワサンザシという。
・ピラカンサの葉は直径3センチほどの歪んだ卵型で先端は丸く、縁には細かなギザギザがある。質は厚く、両面とも無毛で表面は光沢のある濃緑色となり、枝から互い違いに生じる。
・枝には葉の変化したトゲが多いため、防犯を兼ねた垣根に利用されることがある。
・ピラカンサの開花は5~6月。短い枝の先に直径8ミリほどの小花が多数集まって花序を作り、木全体に咲く。花弁と萼は5枚ずつでサンザシ同様に多数ある雄しべが目立つ。
・花の後にできる果実(偽果)は直径6ミリほどの球形。10~11月頃になると真っ赤に熟す。生け花、切花に利用され艶やかで美しいが、有毒なタンニンを含むため食用にならない。タチバナモドキの実は黄色く、ヒマラヤトキワサンザシ(カザンデマリ)は本種よりも全体に大振りで、実の数が多い。
・霜に当たって果実の毒性が弱くなった頃、ツグミ、ムクドリ、オナガ、ヒヨドリ、メジロ、ジョウビタキ、シロハラ、カワラヒワなど多数の野鳥がついばみ、これらの糞によって種子が拡散される。
【ピラカンサの育て方のポイント】
・原産地は暖地だが耐寒性があり、東北地方でも植栽できる。土質を選ばず元気に育つが、日陰では花や実がならないため、日向に植える必要がある。
・成長が早く、樹形が乱れやすいため、定期的な剪定が不可欠。放任すれば高さ6mにも達する上、枝が四方八方に広がって手のつけようがなくなる。よほどのスペースがない限り、剪定は強め(短め)に行った方がよい。
・枝葉が茂る初夏から秋にかけてハマキムシ、アブラムシ、カイガラムシなどの被害に遭うことがある。
・実生や挿し木で容易に増やすことができるもののトゲが多く、植える場所には気を付ける必要がある。また、剪定後の切り屑の扱いが厄介。
【ピラカンサの品種】
・ハーレークイーン
葉にピンクなどの模様が入る、いわゆるカラーリーフの品種。葉色が明るく見えるため現代的な家屋にはより調和する。このほか、黄色い果実が稔るゴールデンチャーマーや、紅色の果実ができるローズデールなどの品種がある。
【ピラカンサに似ている木】
季節になると一緒に店頭に並ぶオレンジ色の果実がなる木。タチバナモドキの果実は扁平しており、葉の裏側に綿毛があるのが特徴。果実の色と形がミカン(タチバナ)に似ていることからタチバナモドキと呼ばれる。また、トキワサンザシに比べると葉の幅が狭いため、ホソバノトキワサンザシという別名がある。
・ヒマラヤトキワサンザシ
中国~中央アジアを原産とする常緑樹。トキワサンザシと似たような花や葉を持つが、果実が押しつぶされたような形になる。日本へ渡来したのは昭和初期でトキワサンザシ同様に庭木として使われ、カザンデマリとも呼ばれる。
ピラカンサの基本データ
【分類】バラ科/トキワサンザシ属
常緑広葉/低木
【漢字】─(ぴらかんさ)
【別名】ピラカンサス
ピラカンタ
トキワサンザシ(常盤山査子)
【学名】Pyracatha coccinea
【英名】Firethorn
【成長】早い
【移植】困難
【高さ】2~6m
【用途】垣根/公園/盆栽/花材
【値段】1000円~