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ビワ/びわ/枇杷
Japanese loquat
【ビワとは】
・関東以西の本州、四国及び九州の暖地に分布するバラ科の常緑広葉樹。原産地については、古い時代に中国から日本へ渡来し、民家で栽培していたものが野生化したする説、日本に古くから自生していたとする説があり、山口県秋吉町、福井県の冠者島、大分県本匠村などでは野生種が確認されたとしている。
・ビワという名は中国名「枇杷」の音読みに由来し、果実あるいは葉の形が楽器の琵琶に似ることによる。しかし、楽器の琵琶が日本へ渡来したのは奈良時代のことであり、それ以前から食用されていたビワは何と呼ばれていたのか定かではない。
・中国では最も古くから栽培される果樹の一つ。日本のビワ栽培が始まったのは奈良時代だが、当初のビワは小粒で酸味が強く、果実としての利用は乏しかった。江戸時代後期に中国から大粒の唐ビワが入ると、長崎県を中心に栽培が本格化。現在流通するビワは唐ビワを原種とし、日本で改良されたもの。
・食用として多くのビワが商業栽培されるがその主流は、長めの果実ができる茂木ビワと大きな実ができる田中ビワ。前者の主たる産地は長崎や鹿児島で、後者は千葉や愛媛。
・長さ20センチ近くになる大きな葉は枝から互い違いに生じ、上半分には縁にギザギザがある。葉には独特のシワ模様があり、触れるとゴワゴワする。表面は他の樹木に比べて緑色が濃く、裏面には褐色の細かな縮れ毛が密生するため黄色く見える。新芽は淡い褐色でアワブキに似る。
・ビワの葉は薬用(美肌など)になることで知られ、生の葉を身体に貼り、その上からお灸をする「ビワ葉温灸療法」や、乾燥させた葉を煎じて入浴剤などに使う民間療法、葉を焼酎に漬けて飲用する健康法などがある。
・江戸時代に無料の試飲によって流行した「枇杷葉湯(びわようとう)」は、ビワ、ニッケイ、アマチャなどの葉を煎じたもので、夏バテ対策として人気を博した。また、大型の種子も「杏仁」の代用として薬用になる。
・ビワの開花は11月~2月。花は直径1センチほどで花弁は5枚。多数が円錐状に集まって甘い香りを放つ。果樹の中で最も花が遅いが、寒さを防ぐため、蕾や花柄は淡い褐色の毛に覆われ、個々の開花をずらすことで、寒害による全滅を防いでいる。
・花が咲くのは他に花が少ない時季であるため、ハチやアブなど多くの昆虫やメジロなどの小鳥が集まり、花蜜を吸っている。
・ビワの実が熟すのは初夏(5~6月)。直径3~4センチの楕円形で、でき始めは毛に覆われるが後に脱落する。近年では、シラカバなどハンノキ属の花粉症を持つ人がビワを食べると、食物アレルギーを起こすことが知られるようになった。中国では熱い麵や焼き肉と一緒にビワを食べると病気になるという俗説がある。
・種子が大きくて食べにくいが美味であり、手頃な果樹として親しまれ、果実酒や缶詰などにも利用され、自然界ではメジロ、ヒヨドリ、ムクドリ、スズメなどの野鳥が集まる。
・樹皮は茶色がかった灰色でシワ模様が入る。材は硬くて耐久性があり、光沢のある美しい仕上がりになる。女性用の木刀や杖、櫛、印鑑などに使われる。
・ビワの材で作った琵琶(楽器)は音が良いので、ビワと名付けられたという説もある。
【ビワの育て方のポイント】
・温暖な地の石灰岩地帯に自生する。
・花が寒さに弱いため北海道や東北では栽培が難しく、植栽の適地は関東南部以西とされてきたが、改良が進み、積雪のある地方でも対応できる品種がある。
・基本的には手間をかけずに実を収穫できることがビワの醍醐味だが、間引きや袋がけをすればより大きな実を楽しめる。ただし、樹齢を重ねると結実は隔年になりがち。
・枝は横へ横へと広がり、濃緑の葉がよく茂るため、ほうっておくと鬱蒼とする。家庭栽培では定期的に剪定する必要がある。
・地方によっては、家にビワの木を植えると病人が出る、凶事が起きるといったジンクスがあり、忌み嫌われることも。
【イヌビワとビワ】
・イヌビワ(犬枇杷)はイチジクの仲間。ビワの実は初夏にできるが、イヌビワの実は秋にできる。色も黒紫色で、ビワとはまったく異なる。熟せば食べられるが、イチジク味で、生食には不向き。
【ビワに似ている木】
似たような葉を持つ木には、タイサンボク、マテバシイがあり、初心者は混同しやすい。また、西日本の海辺に多いハマビワや暖地の照葉樹林内に見られるヤマビワも似たような葉を持つ。インド~マレー半島には葉の雰囲気が似たビワモドキが自生するが、日本で目にすることはほとんどない。
ビワの基本データ
【分類】バラ科/ビワ属
常緑広葉/高木
【漢字】枇杷/比波(びわ)
【別名】ヒワ/コフクベ
【学名】Eriobotrya japonica
【英名】Japanese loquat
【成長】普通
【移植】簡単
【高さ】3m~10m
【用途】果樹、公園
【値段】1500円~