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ヒサカキ/ひさかき/姫榊
Japanese Eurya
【ヒサカキとは】
・北海道及び青森県を除く日本全国に分布するサカキ科の常緑樹。多少乾燥した山中を好んで自生する。いかにも日本の木のようだが、原産地は中国南部であり、韓国や台湾にも見られる。
・年間を通じて艶のある葉をつけるためサカキ同様に縁起の良い木とされ、神棚へ供える玉串に使われる。サカキよりも耐寒性があり、サカキの少ない関東地方以北では本種をサカキと称することも多い。また、神事にのみ使われるサカキとは異なり、仏事にも用いられる。
・ヒサカキという名前の由来には諸説あるが、①小型のサカキを意味する「姫サカキ」、②サカキに似るがサカキではない「非サカキ」、③実が沢山なる「実サカキ」、④日当たりを好むため「陽サカキ」、などが転じたとされる。
・葉はやや厚い革質で枝から互い違いに生じる。長さ3~8センチ程度の長楕円形で先端が尖り、表面には光沢があるが裏面は白っぽい。なお、サカキは葉の縁にギザギザがないが、本種は細かなギザギザがある。
・ヒサカキには防火性、耐潮性があり、垣根としても多用される。サカキに比べて枝葉が密生し、移植もしやすいため、庭木としてはサカキよりヒサカキが幅広く使われている。また、自然環境に自生するヒサカキも多く、2020年に琉球大学の久保田康裕氏らが推定した結果によれば、日本の木で最も個体数が多いという。
・ヒサカキの開花は3~4月で、葉の脇にクリーム色の花が1~3個ずつまとまって下向きに咲く。花は壺型で直径は3~5ミリほどと小さいが5枚の花弁があり、近くで見ると綺麗だが、プロパンガスのような匂いがする。なお、ハマヒサカキにも同じような花が咲くが、ハマヒサカキの開花時期は10月~2月頃であり、本種とは異なる。
・雌雄異株であり、雌株に咲く雌花には雌しべ1個のみがあり、花弁は多少紫色を帯びる。雄株に咲く雄花には雌しべがなく、10~15個の雄しべがある。また、これら両方の性質を持つ両性花を咲かせる株もある。
・秋から初冬にかけて球形の果実ができ、10~11月になると黒紫色に熟す。果実の直径は5ミリほどでサカキよりも小さいが、数が多いためより目に付きやすい。種子は水分が多く、熟すと甘味がある。メジロ、カワラヒワ、ツグミ、ウソ、シロハラなどの野鳥が好んで食べに来る。
・ヒサカキの材は稀に建築、薪、細工物に、果実は精油や染料に使われる。材を燃やした灰汁は媒染剤(繊維に染料を固着させるもの)に使われる。別名のアクシバ(灰汁柴)はこれによるが、アクシバというスノキ科の落葉樹もあって紛らわしい。
【ヒサカキの育て方のポイント】
・神棚がある家庭ではお供え用として実用でき、サカキよりも扱いやすい。実生や挿し木で簡単に増やすことができる。
・雌雄異株で果実がなるのは雌株のみ。野鳥を呼ぶ誘鳥木とする場合は雌株を植える必要がある。
・日照を好むが、高木の下の薄暗い場所でも育てることができる。
・土質を選ばず丈夫に育つ。
・芽を出す力が強く、剪定によく耐える。
・庭木としては単独で植えて観賞するほどの魅力はないが、日陰に強く成長が遅いことから、日当たりの悪い場所や、建物の北側の垣根などに使われる。ただし、風通しの悪い場所ではカイガラムシの被害に遭うことが多い。
【サカキ類の見分け方】
細かなことを抜きにすれば葉が大きい順に、①サカキ、②ヒサカキ、③ハマヒサカキとなる。
・サカキとヒサカキの違い
ヒサカキの葉は長さ3センチ~7センチで縁に細かなギザギザがあるが、サカキの葉は長さ7センチ~10センチでより大きく、縁にギザギザがない。また、サカキは枝の出方が粗い(葉と葉の間隔が大きい)が、ヒサカキは枝葉が密生するため、垣根にはヒサカキが向く。
・ヒサカキとハマヒサカキの違い
ハマヒサカキはヒサカキに似るが、葉はより小さく肉厚で毛が密生している。60センチ以下の低い垣根や花壇の縁取りに使われることが多い。また上述のとおり両者は開花時期が異なる。
【ヒサカキの品種】
葉の形や大きさ、花の色によって以下のような品種がある。
白覆輪、イエローモトルド、ホソバヒサカキ、ベニヒサカキ、ツゲバヒサカキ、モチバヒサカキ、ヒメヒサカキ、マメヒサカキ、アマミヒサカキ、ヤエヤマヒサカキ、サキシマヒサカキ、クニガミヒサカキ
ヒサカキの基本データ
【分類】サカキ科/ヒサカキ属
常緑広葉/低木~小高木
【漢字】姫榊(ひさかき)
【別名】ビシャコ/アクシバ/コウヤシバ
イヌサカキ/ソメコノキ
インキノキ/ハナシバ/ハカシバ
【学名】Eurya japonica
【英名】Japanese Eurya
【成長】やや遅い
【移植】簡単(サカキに比べて扱いやすい)
【高さ】3~10m
【用途】垣根/公園/切り枝
【値段】500円~