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ハマヒサカキ/はまひさかき/浜姫榊
Hamahisakaki(Eurya japonica)
【ハマヒサカキとは】
・本州(千葉県と愛知県以西)、四国、九州及び沖縄に分布するツバキ科ヒサカキ属の常緑低木。サカキやヒサカキの仲間だが、山地に自生するそれらとは異なり、暖い海岸沿いを好んで育つ。日本以外では韓国や台湾に自生。
・文字どおり「浜に生えるヒサカキ」という意味合いでハマヒサカキと名付けられた。潮風、乾燥、大気汚染に強いため沿岸部の道路や工業地帯の緑化のみならず、オフィス街の植込みにも使われるが、日陰にも強いため鬱蒼とした寺社の境内などにも植栽される。
・ハマヒサカキの葉は長さ2~4センチ、幅1~1.5センチ。表面は濃い緑色で光沢があり、裏面は隆起した葉脈(主脈)が目立つ。葉の縁には波状のギザギザがあり、やや反り返るため、実際よりも厚く見える。
・葉は両面とも無毛で、触れるとツルツルしているが、小枝にはヒサカキにない黄褐色の短毛が密生する。葉先が丸くて小さいことや、光沢の著しい葉が行儀よく並ぶことから、サカキやヒサカキよりも品があるとされる。
・ハマヒサカキの開花は晩秋から初冬で、春に咲くヒサカキとは異なるが、翌年の2月頃まで断続的に咲くこともあり、開花時期は分かりづらい。花は葉の付け根付近に2~3輪ずつ下向きに咲き、都市ガスのような異臭を放って冬の訪れを告げるため、ガス漏れと勘違いされることもある。
・雌雄異株で雄株には雄花が、雌株には雌花が咲く。いずれも花弁と萼が5個ずつあり、直径は5ミリほどだが、雌花は雄花よりも小さい。雄花は花弁が白く、黄色い雄しべが10~15個あり、雌しべは退化している。雌花の花弁は紫を帯びた白で、先端が三つに裂けた雌しべが1本だけあり、雄しべは退化している。
・雌花の後にはヒサカキと同じような球形の果実ができる。直径5ミリほどで、でき始めは緑色だが10月頃に黒く熟す。実生や挿し木によって容易に繁殖する。
【ハマヒサカキの育て方のポイント】
・土質を選ばず丈夫に育つが、成長が遅く、管理の手間が少なくてすむ。また、日陰に強い代表的な植木であるため、手が届きにくい場所の植栽にも重宝する。
・樹形は整いにくく、単体で鑑賞するよりは寄せ植えにして大木の根締めや低い生垣にするような使い方が望ましい。また、岩場の崖地にも自生する丈夫な性質を利用し、庭の石組や手水の装飾に使うこともできる。
・海辺では匍匐するように育つが、内陸では年月をかけて高さ5m~7m程度まで達することもある。剪定は可能だが成長が遅いため、表面を刈り込むような雑な手入れをすると樹勢が衰える場合がある。
・大気汚染、病害虫、乾燥に強いものの、まれにスス病にかかる。枝葉は密生しやすいため、時折、枝抜きをして通気性を確保したい。
【ハマヒサカキの品種】
・ヒメハマヒサカキ(シタンボク)
瀬戸内海に面した地方を中心に見られる小型の品種。葉は長さ1センチ弱でハマヒサカキよりも小さい。
【サカキの仲間の見分け方】
大雑把にいえば葉が大きい順にサカキ→ヒサカキ→ハマヒサカキとなる。葉が小さくなるに従って葉の密度が高まる。特にヒサカキとハマヒサカキは混同しやすいが、見分けのポイントは葉先と小枝。ハマヒサカキは葉の先端が丸いものが多く、小枝に短毛がある。
ハマヒサカキの基本データ
【分類】ツバキ科 ヒサカキ属
常緑広葉 低木
【漢字】浜姫榊(はまひさかき)
【別名】イソヒサカキ/イソシバ
シタンノキ/シタン
【学名】Eurya emarginata
【英名】Hamahisakaki(Eurya japonica)
【成長】遅い
【移植】簡単
【高さ】2m~5m程度
【用途】垣根/公園/工場
【値段】500円~