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ハマゴウ/はまごう/浜香
Round leaf chaste tree
【ハマゴウとは】
・北海道を除いた日本全国の海岸砂地に自生するシソ科の常緑低木。暖地の海岸に多いことから、北の海浜植物の代表であるハマナスとの対比において、南を代表する海浜植物とされる。木全体にミントやユーカリのような香りがあり、古来からハーブのように親しまれる。
・名所は世界遺産として知られる広島の宮島や香川の有明浜など。海岸の開発によって自生の群落は激減しているが、丈夫な性質と複雑に入り組む根を持つため、海岸の砂防を目的として人為的に植栽されることも。日本以外でも東南アジアの各地やオーストラリアに分布する。
・ハマゴウという名は「花が香る=花香」に由来するという説もあるが、香りが強いのは葉や果実であり、「浜に育つ香りの良い植物=浜香」が有力。別名のハマボウやハマハイは、砂地を這う(はう)様子による。なお、ムクゲに似た花を咲かせ、沖縄でユウナと呼ばれるのはアオキ科のハマボウであり、本種とは異なる。
・枝(茎)は砂の上を這って伸び、地面との接点では新たに根を生じながら繁茂していく。葉は縁にギザギザのない楕円形で、枝から対になって生じ、長さは2~5センチほど。先端は尖り両面とも毛があるが、裏面特に銀白の柔らかな毛で覆われており、白っぽく見える。ハマゴウが潮風や乾燥に耐えるのはこの毛による。
・ハマゴウの開花時期は7~9月で、枝先から伸びた円錐状の花序には、唇型をした青紫色の花が数輪ずつ集まって咲く。花の長さは2~3センチほど。暑い盛りに咲く花は涼しげだが、晩秋に返り咲きすることもある。
・ハマゴウの受粉を媒介するのはミツバチなどのハナバチ。長く伸びる下の花弁を足場とし、白いガイドマークに従って奥へ進むと蜜にありつけるが、この際に雄しべや雌しべに触れて受粉の仲介役となる。雄しべは4本で先端の葯は濃い紫色。雌しべの先端はY字型に裂けている。
・9~10月に熟す果実はアズキくらいの大きさで、他の部位よりも強い芳香がある。中に含まれる直径5ミリほどの種子は、漢方において蔓荊子(まんけいし)と呼び、これを煎じて飲めば、強壮、鎮痛に薬効があるという。また、花や実は果実酒に、材は線香に、灰汁は染料に使うことができる。
【ハマゴウの育て方のポイント】
・性質はかなり丈夫であり、根が砂から飛び出しても枯れず、砂浜の波打ち際まで這って広がるほど耐潮性があるが、日当たりの良い暖地を好み、北海道では育たない。
・一般的には一年じゅう葉のある常緑樹として扱われるが、地域によっては冬季に落葉することもある。
【ハマゴウの品種】
・ミツバハマゴウ
奄美大島以南に分布するハマゴウの近縁種で葉が三つ葉状になり、茎が直立する。葉の裏に灰白色の毛があるのを特徴とするが、これが紫がかったプルプレアという園芸品種もある。
ハマゴウの基本データ
【分類】シソ科(クマツヅラ科)
ハマゴウ属
常緑広葉/低木 (時に落葉性)
【漢字】浜香/蔓荊
(はまごう)
【別名】ハマボウ/ハマホウ/ハマカズラ
ハマハイ/ハマシキミ
【学名】Vitex rotundifolia
【英名】Round leaf chaste tree
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】0.3~0.6m
【用途】海浜公園/洋風庭園/アロマ
【値段】500円~