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ネズミモチ/ねずみもち/鼠黐
Japanese privet
【ネズミモチとは】
・関東地方以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するモクセイ科の常緑樹。秋にできる果実がネズミの糞に似ていること、葉や木全体の雰囲気がモチノキに似ていることから、ネズミモチと命名された。日本以外では台湾に分布。
・暖地の山地に自生するが、丈夫な性質を持つため庭木としても使われる。大きな魅力はないものの、都市部の劣悪な環境にも耐えて育ち、比較的安価に入手できることから、垣根や緑地の「植えつぶし」として多用される。
・ネズミモチの葉は長さ4~10センチの楕円形で厚みがある。葉先は尖るが縁にギザギザはなく、表面は無毛で皮質の光沢があり、裏面の葉脈がはっきり見えないという特徴を持つ。
・ネズミモチは枝から対になって生じる「対生」で、互い違いに生じる「互生」のモチノキとは明らかに異なる。あまりお勧めできないが、ネズミモチの葉を噛むと甘味がある。
・ネズミモチの漢名は「女貞」。ネズミの糞には結びつかない強そうな名前だが、これは貞節な淑女を意味し、冬になっても葉が青々としており、病害虫によって傷みにくく艶やかなことに由来する。
・ネズミモチの開花は5~6月で、その年に伸びた枝の先に長さ5~12センチの花序を出し、白い小花を円錐状に密生させる。
・花は長さ5~8ミリほどの筒状漏斗型で、先端は四つに裂けて反り返る。二つの雄しべと花柱(雌しべ)は花先から突き出し、クリの花のような精臭がある。花にはチョウやハチよりもアリの姿が目立つ。
・果実は長さ7~10ミリ程度の楕円形で多数つき、10~12月になると黒紫に熟して表面に白い粉を吹く。熟した果実を日干ししたものを漢方では「女貞子」といい、韓国では「女貞丸」という妙薬が作られている。
・ネズミモチの果実を服用し続ければ、滋養強壮やアンチエイジングに効果があるとされる。果実には直径5ミリほどの暗褐色の種子一粒を含むが、食糧が不足していた戦時中には、これを炒ってコーヒーの代用としたという。
・幹は直立し、直径は最大30センチほど。樹皮は灰色で平滑だが、樹齢を重ねれば皮目と呼ばれる粒々を生じる。材は緻密で加工しやすいが名前が良くないためか、タマツバキという美名で家具や工芸品に使われる。
【ネズミモチの育て方のポイント】
・日陰に強く、土質を選ばず、成長も早い。潮風にも強く、海岸沿いの植栽にも使える。
・病害虫に強い(まれにスス病、うどんこ病)
・枝分かれが多くて枝葉がよく生い茂るため、目隠しになる。刈り込みにも強いが、頻繁に刈り込まないと、樹形が崩れる。
・本州から沖縄まで広い範囲に分布するが、寒さにやや弱く、植栽適地は関東以西となる。
【ネズミモチの品種や見分け方】
・トウネズミモチ(唐鼠黐)
公園などで見かける中国原産の品種。画像のとおり、ネズミモチより葉が大きく、葉を太陽に透かすと葉脈が見えることで簡単に区別できる。ネズミモチは暖地性だが、トウネズミモチは寒さにより強く、日本全国で植栽できる。
・キマダラネズミモチ
葉に模様が入る品種。雰囲気が暗くならないため今風の建物に合わせることもできる。
・ムニンネズミモチ
小笠原諸島に固有の種で、潮風を凌ぐためネズミモチよりも葉が厚くなっているのが特徴。花はより小さいが、同じように咲き、同じように実がなる。
・フクロモチ(フクラモチ)
丸みを帯びた葉が著しく密生し、葉の縁が波状に反り返る品種。花も密生しやすく、ネズミモチよりは観賞価値があるとされる。
このほか、花序や枝に短毛を生じるケネズミモチや、葉が丸くて小枝に短毛のあるイワキなどがある。
ネズミモチの基本データ
【分類】モクセイ科/イボタノキ属
常緑広葉/小高木~高木
【漢字】鼠黐(ねずみもち)
【別名】タマツバキ/テラツバキ
ヤブツバキ
【学名】Ligustrum japonicum
【英名】Japanese privet
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】2m~6m
【用途】垣根/公園/工場/防風
【値段】300円~