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コヤスノキ/こやすのき/子安の木
Koyasunoki tree/Few-fruited pittosporum
【コヤスノキとは】
・兵庫県の西播磨と岡山県東部に分布するトベラ科の常緑樹。主にこれら地域の社寺林に見られるが絶滅が危惧されており、天然記念物に指定される個体もある。庭木として使われる例は少なく、一部の植物園等で稀に植栽される。
・コヤスノキは1930年(明治33年)に大上宇市氏(現兵庫県たつの市生まれの博物学者)が発見し、牧野富太郎氏が新種として世界の学会に発表した。日本以外では中国本土や台湾に分布することが知られ、漢名に「海金子」「尖葉海桐花」「岸花海桐」などがある。
・名前の由来は不詳だが、枝が折れた場所から新たな芽が出てくるという本種の丈夫な性質を、安産祈願に用いたとする説がある。ただし、コヤスノキという呼名は本種に固有ではなく、エンジュ、エゴノキ、アブラチャンにも同様の別名がある。
・コヤスノキの葉は長さ4~15センチ、幅1.5~4センチほどの楕円形。枝先に集まって生じるように見えるが、枝から互い違いに出ている。表面は光沢があるが裏面はやや白く、網目状の葉脈が見える。
・トベラの仲間ではあるが、葉はトベラよりもアセビやシキミに似ており、ヒメシキミという別名がある。葉の両端は細く尖り、縁は波打つ。枝分かれは多いが、小枝は細くて毛がないのもトベラとは異なる。
・コヤスノキの開花は5月頃。地味で目立たないが、直径8ミリほどの小さな黄色い花が咲く。花には花弁と萼片が5個ずつあり、花の下部は筒状。雌雄異株であり、雌株に咲く雌花の雄しべは短い。花は2~12輪ほどが枝先に集まって咲くが、トベラよりも花数は少なく、まばらな印象を受ける。
・花の後には球形の果実ができる。直径1センチほどで、秋(10~11月)に黒く熟すとトベラと同じように三つに裂け、朱色の種子が糸を引きながら垂れ落ちる。
・樹皮は灰褐色で皮目と呼ばれる点々がある。幹の直径は最大10センチ程度だが、岡山県美作市の土居神社には、直径40センチを超すような古木があり、大切に保護されている。
【コヤスノキの育て方のポイント】
・寒さに弱く、東北南部より北で育てるのは難しい。東京近郊では問題なく育てられるが、寒さが厳しい年には開花や結実が悪い。
・日当たりがよく、かつ湿気のあるところを好むが、半日陰程度なら問題なく育つ。
・剪定に強く、枝がよく分岐するが、自然樹形を鑑賞するのが基本。やむを得ず剪定する場合は一度に刈り込まず、弱めの手入れを定期的に行うのがよい。
・潮風、乾燥、大気汚染に耐え、病害虫にも比較的強い。
【コヤスノキに似ている木】
・トベラ
・アセビ
・シキミ
コヤスノキの基本データ
【分類】トベラ科/トベラ属
常緑広葉/低木
【漢字】子安の木(こやすのき)
【別名】ヒメシキミ
【学名】Pittosporum illicioides
Makino
【英名】Koyasunoki tree
Few-fruited pittosporum
【成長】やや遅い
【移植】簡単
【高さ】2~5m
【用途】庭木
【値段】─(市販は稀)