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コケモモ/こけもも/苔桃
Cowberry
【コケモモとは】
・北海道~九州に分布するツツジ科の常緑低木。いわゆる高山植物であり、高山の岩場や雪国の湿原に見られる。コケモモという可愛らしい名前は、地面を這うように育つ様をコケに、秋に熟す果実をモモに例えたもの。日本以外でも北半球の北部に広く見られる。
・コケモモの葉は長さ10~20ミリ、幅5~13ミリほどの長楕円形~歪んだ卵形。先端は丸みを帯びて、縁にギザギザはない。硬い革質で表面には光沢があり、裏面には小さな黒点が散在する。
・葉は枝から対になって密生するが、環境によっては赤くなり、部分的に落葉することもある。葉には利尿作用のあるアルブチンという成分が含まれており、夏から秋にかけて採取した葉を煎じて飲めば、膀胱炎や尿道炎に効くという。
・高山に自生するコケモモは茎の下部が匍匐するように育つため、岩の間で這いつくばうようになるが、風の弱い場所で育てると立ち上がって樹高20センチほどになる。
・コケモモの開花は6~7月。前年に伸びた枝先に淡いピンク色を帯びた白い花が2~8輪ずつ、葉陰で隠れるように咲く。花は長さ、直径とも6~7ミリほどの小さな壺形で、花先は浅く四つに裂け、裏側にある赤い萼も4つに裂ける。
・花が終わると萼筒が肥大化して果皮と合着し、水分を含んだ球形の果実になる。直径5~7ミリほどで、中に小さな種子を含み、8~10月に熟すと鮮やかな紅色になる。
・コケモモの果実は、他のスノキ属の果実と同じように甘酸っぱい。寒冷地では有数の食糧であり、ライチョウなど野生の鳥獣もこれを食すが、人間にとっても格好の御馳走であり、食べれば疲労回復の効果があるとされる。
・古くからコケモモの果実は塩漬け、ジャム、シロップ、果実酒などで親しまれており、知床、美ヶ原、富士山などではコケモモのソフトクリームが売られている。
・果実自体の食感はモモよりもナシに近く、ナシにちなんだ別名、ハマナシ、オヤマナシなどもある。
【コケモモの育て方のポイント】
・暑さに弱く、平地の都会では生育不良で衰弱することが多い。どうしても栽培したい場合は、鉢で管理して直射日光や西日に留意する。
・ツツジの仲間は一般に酸性土壌を好むが、高地であれば土質を選ばず、湿地でも乾燥地でも育つ。
・開花や結実には日照と一定の寒さが必要であり、日当たりの悪い場所や通年で気温の高い場所では花が咲きにくい。
【コケモモの品種】
高山の湿地に見られる近縁種で、針金のような細い茎が横へ這うように育つ。花や果実はコケモモよりも小さく、花色はピンクに近い。
・ヒメツルコケモモ
文字どおり株全体が小さい品種で、高山の湿地に見られる。
・クランベリー
北米などに育つツルコケモモのことで、日本のものに比べると果実が大きいためジャムなどにして輸入されている。
・クロマメノキ
北海道や中部以北の本州に見られる近縁種だが、樹高は1mほどになり、果実は黒紫色に熟す。軽井沢の名物ジャム「アサマベリー」はこの木の実。
コケモモの基本データ
【分類】ツツジ科/スノキ属
常緑広葉/低木
【漢字】苔桃(こけもも)
【別名】イワモモ/フジモモ
ハマナシ/オヤマナシ
コバノコケモモ
オカマリンゴ
【学名】Vaccinium vitis-idaea L.
【英名】Cowberry
【成長】遅い
【移植】難しい
【高さ】5~20cm
【用途】果樹
【値段】500円~