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ゲッケイジュ/げっけいじゅ/月桂樹

Victor's Laurel / Baytree

月桂樹,樹木図鑑,画像
勝利の象徴とされるゲッケイジュの葉と果実
げっけいじゅ,新芽,ローリエ
ゲッケイジュの冬芽 新葉の葉柄は赤~紫色を帯びる
ローリエ,葉っぱ,げっけいじゅ
新葉はライトグリーン
ローリエの葉,げっけいじゅ
葉の裏面の様子
げっけいじゅ,ローリエ,ツボミ
ゲッケイジュの蕾
月桂樹の木,げっけいじゅ
ゲッケイジュの蕾2
開花時期
剪定せずにおけば、こんな感じになる
げっけいじゅ,ローリエの花,雌雄
ゲッケイジュの花(雌花)
ローリエの花,げっけいじゅ,画像
ゲッケイジュの花(雄花)
Victor's Laurel
雌花の後には果実ができる
げっけいじゅ,ローリエの実,画像
ゲッケイジュの実
ローリエの実,げっけいじゅ
果肉には油分が多い
ローリエ,げっけいじゅ,特徴
成長が早く、枝葉は鬱蒼としやすい
げっけいじゅ,植物
幹の様子
月桂樹,幹,画像,げっけいじゅ
ゲッケイジュの樹皮

 

【ゲッケイジュとは】

・ヨーロッパ南部の地中海沿岸域を原産地とするクスノキ科ゲッケイジュ属の常緑樹。葉を料理の香りづけに、果実をオイルに使うことで知られるが、枝葉がよく茂ることから樹形を整えやすく、庭木として育てられる例も多い。

 

 

・ゲッケイジュが日本に渡来したのは明治38年(1905年)頃で、フランスからとされる。その名を一躍有名にしたのは、当時世界最強とされたロシアのバルチック艦隊を撃破した東郷平八郎(海軍大将)で、日露戦争の戦勝記念として日比谷公園に手植えしたとされる。

 

 

・ゲッケイジュという名前は漢名「月桂樹」の音読み。中国では、永遠の命を象徴する桂の木が月にあるとの伝説があり、常緑かつ葉に香りのある本種を月桂樹としたという。ちなみに日本では桂をカツラの木にあてているが、中国ではモクセイを桂花とする。

 

 

・ゲッケイジュは勝利や栄誉の象徴としても知られるが、これは古代ギリシャにおいて、競技の勝者に本種の枝葉で作った冠(=月桂冠)を贈る習慣があったこと、ローマ帝国においてシーザーが戦勝を記念して月桂冠を被っていたこと、あるいはローマ時代、森までのレースで森へ行った証拠としてゲッケイジュの枝を持ち帰ったことによる。 

 

 

・月桂冠はスポーツや戦争に限らず、名高い詩人にも授与され、「桂冠詩人」という言葉もある。今日の日本においてもゲッケイジュを記念樹として使う例があるのは、こうしたエピソードが背景にある。

 

 

・ゲッケイジュの葉は長さ5~12センチ、幅2~5センチの長楕円形で両端が尖り、枝から互い違いに生じる。質は革質で硬く、表面は深緑色で光沢があり、裏面は淡い緑色。中央にある葉脈は両面とも色が薄い。葉の縁は波状になるが、若葉では細かなギザギザがある。

 

 

・葉に鼻を近付けても匂わないが、傷付けると果物のような香りがある。ゲッケイジュをカレーやシチューなどの料理に使うのは、この香りに肉などの臭みを消す効果や健胃の作用があるためで、陰干しした葉は「ローリエ」「ベイリーフ」として流通し、ゲッケイジュをクッキングハーブと呼ぶこともある。

 

 

・ゲッケイジュの開花は4~5月。葉の脇に伸びた短い花序に直径1センチ前後の小花が二輪ずつ垂れ下がって咲く。雌雄異株で、雄株に咲く雄花には雄しべが8~12本あり、黄色い葯が目立つ。

 

 

・雌株に咲く雌花は雄花よりも小さく、1本の雌しべと退化した4本の雄しべがある。花弁(花被片)はいずれも4枚。花には特有の香りがある。 

 

 

・雄株と雌株を比べると雌株の葉の幅がより狭いとする説があるが、花のない時季に両者を見分けるのは難しい。

 

 

・花が終わると雌株には直径8~11ミリほどの楕円形の果実ができ、10月頃になると光沢のある黒紫色に熟す。果皮は薄く、中には茶褐色の種子が一粒入る。 

 

 

・果肉には芳香があり、月桂油として健胃、リウマチ、疥癬の治療に使われる。かつて日本には雌木が少ないとされたが、現代ではさほど珍しくない。 

 

 

・成木の樹皮は黒灰色で、皮目と呼ばれる点々が見られるものの、樹齢を重ねても滑らかさを保つ。幹の直径は最大30センチほど。幹は真っすぐに伸びるが、ヒコバエ(ヤゴ)が多数発生し、株立ち状になりやすい。 

 

 

【ゲッケイジュの育て方のポイント】 

・成長がたいへん早く、苗木を植えても5年ほどすれば背丈が3m程度にまでなるため、広い場所あるいは剪定する時間を確保できることが求められる。

 

 

・幹と枝が直立し、樹形は円錐形にまとまりやすいため、広い場所であれば大きく育ててもよいが、刈り込みによって形を整えやすい木でもあり、原産国では幾何学模様に刈り込まれることが多い。ただし、やたらと刈り込むと花や実はならない。剪定の適期は4月中旬、10月中下旬。

 

 

・日陰、塩害、大気汚染に強いが、寒さにはやや弱く、冬の乾燥した強風で葉が傷みやすい。植栽の適地は関東以西の暖地となる。土質はあまり選ばないが、本来は肥沃な深層土を好む。栄養の乏しい土壌であれば堆肥、腐葉土、鶏糞などを漉き込んで改善したい。

 

 

・寒風に弱いとはいえ、風通しが悪いと病害虫(カイガラムシ、すす病、ハマキムシ)の被害に遭いやすい。

 

 

・個体によってそれほど葉に香りのないものもあるため料理用に植栽するなら、購入前に香りを確認しておきたい。 

 

 

【ゲッケイジュの品種】

・斑入りゲッケイジュ

 葉にクリーム色の模様が入る品種。明るい雰囲気を持ち、園芸用として稀に流通する。

 

斑入りゲッケイジュの葉
葉に模様が入る品種(バリエガタ)

 

 

【ゲッケイジュに似た木】

・カナリーゲッケイジュ

 ポルトガル領アゾレス諸島、マディラ島、カナリア諸島に分布する近縁種で、葉が楕円形になる。自生種は絶滅が危惧されているが、ヨーロッパの暖地には栽培品が見られる。 

 

 

オリーブ

 分類上は全く関係がないが、ゲッケイジュと同様に記念樹として使われることが多い。

 

ゲッケイジュの基本データ

 

【分類】クスノキ科/ゲッケイジュ属

    常緑広葉/中高木

【漢字】月桂樹(げっけいじゅ) 

【別名】ローリエ/ローレル/ベイツリー

【学名】Laurus nobilis Linn.

【英名】Victor's Laurel

    Baytree/Bay laurel

【成長】早い

【移植】やや難しい

【高さ】6~18m

【用途】シンボルツリー/公園/垣根

【値段】300円~

 

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