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キンモクセイ/きんもくせい/金木犀
Chinese Sweet Osmanthus
【キンモクセイとは】
・モクセイ科の常緑広葉樹であるギンモクセイ(銀木犀)の変種。古くから観賞を目的として庭や公園に使われるが、中国から渡来したものであり、日本の野山には自生しない。関東地方以北ではギンモクセイより数多く植栽される。
・「キンモクセイ」の「キン」は花の黄色を金色に見立てたもので、「モクセイ」は樹皮が動物のサイ(犀)の肌に似た木という意味。淡い灰褐色の樹皮は樹齢を重ねるに従ってそれらしくなる。
・本来中国でいう「木犀」はギンモクセイ(銀桂とも)のことであり、キンモクセイには「丹桂」という漢字を用いる。
・キンモクセイの葉は濃緑色で革質だがギンモクセイよりは薄く、触れるとカサカサする。長さ6~12センチほどで葉の幅はギンモクセイよりも狭いとされるが、個体差があって見分けるのは難しい。
・多くの場合、葉の縁にギザギザはないが、個体や環境によっては先端付近にのみ細かなギザギザができる。葉は枝から対になって生じるが、枝分かれが多いため密生する。
・キンモクセイの開花は9~10月で、その年にできた葉の付け根にオレンジ色の小花を密生させる。
・花は直径4~5ミリ。先端が四つに裂ける「合弁花」と呼ばれるタイプで、雄花には二個の雄しべと先の尖った不完全な雌しべが一つある。花の裏側にある萼は緑色で、これも四つに裂ける。
・花の香りはギンモクセイよりも強く、中国では「千里香」とも表現され、花を漬け込んだ「桂花陳酒」や「桂花茶」を作って香りを楽しむという。
・花の寿命は意外と短く、開花期間は7~10日ほどだが、9月と10月の二度にわたって咲く「二度咲き」も近年は珍しくない。
・花が終わると地面がオレンジに染まって美しいが、パラパラと落花しやすいキンモクセイは、生け花の花材などには使いにくい。学名のOsmanthusは匂う花を意味し、日本ではジンチョウゲ、クチナシと共に三香木とされる。
・キンモクセイは雌雄異株であり、雄株には雄花が、雌株には雌花が咲く。日本にはより花数の多い雄株だけが渡来し、その後いつまで経っても雌株がほとんどないため、素人が果実を見ることはできない。
・果実がならないため、キンモクセイの繁殖はヒイラギを台木とした接ぎ木や挿し木による。ちなみにキンモクセイの果実はヒイラギと似たような楕円形。近縁種のウスギモクセイ(薄黄木犀)には同じような果実ができるため参考になる。
【キンモクセイの育て方のポイント】
・土地を選ばずに育つが、花をより多く咲かせるには日向に植える必要がある。
・病害虫に強いが乾燥、潮風、煙害には弱く、空気が汚れていると花付きは悪くなる。東京の都心部では開花しないことが少なくない。
・成長は遅めであり、20年程度であればそれほど広い庭でなくとも垣根に使うことができる。樹齢を重ねるにつれて下枝がなくなりやすいため、上部を常に刈り込んで成長を抑制させると同時に、下から出た細い枝は、シュロ縄で誘引するなどして大事に育てたい。ただし、通路に植えた場合は通行の妨げになりやすいため、背丈くらいまでの下枝を切り落とした方がよい。
・剪定の適期は花の直後あるいは早春。キンモクセイはその年に伸びた枝に花が咲くため、春から晩夏に刈り込むと花数が少なくなる。
【キンモクセイの仲間】
キンモクセイの原種で白い花が咲くが、香りはキンモクセイよりも劣る。開花期以外は見分けにくいが、葉を縁取るギザギザ(細鋸歯)がキンモクセイよりも目立つのが見分けるポイントの一つ。
関西地方に多いキンモクセイの仲間で薄い黄色の花が咲く。日本にも雌株があるため花の後に結果し、翌春になるとダークブルーの実を見ることができる。花の香りはキンモクセイより劣る。
ギンモクセイよりさらに葉のギザギザが大きい。
・四季咲きキンモクセイ
「スイートオリーブ」と名乗って流通する品種で、背丈が大きくならず、真夏以外は花をつけるというが、樹齢を重ねるとウスギモクセイとほぼ変わらなくなる。
キンモクセイの基本データ
【分類】モクセイ科/モクセイ属
常緑広葉/小高木
【漢字】金木犀(きんもくせい)
【別名】丹桂(タンケイ)
モクセイ/千里香
【学名】Osmanthus fragrans
var.aurantiacus
f.aurantiacus
【英名】Chinese Sweet Osmanthus
【成長】やや遅い
【移植】簡単
【高さ】3~10m
【用途】垣根/公園/街路樹
【値段】300円~