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キンカン/きんかん/金柑
Kumquat(Chinese quince)
【キンカンとは】
・中国南部からマレー半島にかけた地域を原産とするミカン科キンカン属の常緑樹。江戸以前の古い時代に日本へ渡来し、冬季に熟す黄色い果実を観賞、あるいは実用するため庭木に使われる。
・中国名は「金橘」で、かつて日本ではキンキツと呼んでいたが、美しい果実がなるミカンであることを強調するため、ミカンと合わさってキンカンとなった。
・キンカンには様々な品種があり、かつては果実に苦みのあるナガキンカンが一般的だったが、現在ではネイハキンカン(=メイワキンカン、ニンポウキンカン)が主流となっている。このため本項では主に同種について記載。
・ネイハキンカンは、1828年に遠州灘で遭難した寧波(中国)の商船が、静岡県の清水に寄港した際にもたらした砂糖漬けの果実を起源としている。果実は少し大きくて甘味が強いのが特徴。
・キンカンの葉は長さ5~7センチの長楕円形あるいは卵形。革質で両端が尖り、枝から互い違いに生じる。ミカンの仲間は葉柄に「翼」があるが、キンカンの翼はごく小さく、葉脈もミカンより不明瞭となる。
・キンカンの開花は5~9月頃。品種によっては四季咲き性が強く、厳冬期と酷暑期を除けば通年にわたって花が咲くのも稀ではない。葉の脇に1~3輪ずつ咲き、キンカン特有の香りがある。
・花は両性花で直径5~8ミリ程度。白い花弁と萼が5枚ずつあり、子房よりも短い花柱(雌しべ)の周りには、16~20本の雄しべが合着して束状に生じる。
・キンカンの果実は直径2~3センチの球形あるいは楕円形。11~2月に黄色く熟すと内部には卵形をした長さ1センチほどの種子ができる。
・キンカンは最も小さいミカンとされるが、子房の室が少ないため分類上はミカンと区別され、キンカン属として独立している。未熟な果肉は酸味が強過ぎるため食用に向かないが、十分に熟せば甘味が出る。
・薄い果皮は実が熟す前から適度の酸味と甘みがあって食べやすく、ジャム、お節料理の甘露煮、焼酎に漬けて金柑酒とされる。また、ビタミンCを豊富に含むため、氷砂糖を入れた煎汁を作り、咳止めの風邪薬とした。
・キンカンは数ある果樹の中で最も背丈が低く、比較的扱いやすいが、葉の付け根や幹には短くて鋭い棘がある。幹は単独だが低い位置で分岐。枝葉が繁茂して全体としては盃状の樹形となる。
【キンカンの育て方のポイント】
・日当たりと風通しのよい場所が適地。ただし、西日の強い場所ではいわゆる「葉焼け」を起こしやすい。
・暖地性であり寒さにやや弱く、冬場の気温がマイナス5℃を下回る地方では生育が難しい。植栽の適地は関東以西。
・病害虫には強いが、風通しの悪い場所や水はけの悪い場所ではハダニやカイガラムシの被害に遭うこともある。
・キンカンは放任しても実がなりやすいが、実がならない場合は肥料を施すか、花数を減らして消費する養分を減らすのが良い。また、極度に乾燥した年や冷夏にも実がならないことがある。
・種から育てる「実生」よりも、カラタチを台木として作られた接木苗の方が丈夫な上、より早く収穫できる。
【キンカンの品種】
・ナガキンカン
楕円形で苦味のある果実ができる品種。葉は7~10センチでネイハキンカンよりも長く、枝に棘が少なく扱いやすい。
・マルキンカン(マルミキンカン)
果実が丸くて小さい品種。酸味が強い。
・マメキンカン(キンズ)
背丈が大きくならない矮性品種で、盆栽に使われることが多い。キンズの漢字表記は「金豆」で果実は豆粒ほど。
キンカンの基本データ
【分類】ミカン科/ミカン属
常緑広葉/低木
【漢字】金柑(きんかん)
金橘(キンキツ)
【別名】マルキンカン/マルミキンカン
メイワキンカン(寧波金柑)
キンキツ
【学名】Citrus japonica
【英名】Kumquat(Chinese quince)
【成長】普通
【移植】簡単
【高さ】1m~2m
【用途】果樹/鉢植え/盆栽
【値段】1000円~