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キリシマツツジ/きりしまつつじ/霧島躑躅
Kirishima tsutsuji tree
【キリシマツツジとは】
・ツツジ科の常緑低木であるツツジの代表的な園芸品種の総称。日本最古の園芸書「花壇綱目(1681年)」に掲載されるほど古くから栽培される。現代でも庭木としての利用は非常に多く、町を歩けば普通に目にすることができる。
・キリシマツツジの来歴には、①ヤマツツジから選抜して改良された栽培品種、②ヤマツツジとミヤマキリシマの交配種、③サタツツジの変種、④サタツツジそのもの、といった説があるが、現在では④が有力とされる。なお、サタツツジは鹿児島県南部及び宮崎県に自生するヤマツツジの変種。
・いずれにしても本種は九州南部の産であり、ツツジの名所として知られる同地の火山群「霧島山」にちなんで、キリシマツツジと名付けられた。本種が京都や江戸に普及したのは、薩摩藩がこれを持ち込んだことによる。
・葉は長さ1~3センチで枝から互い違いに生じるが、枝先では車輪状に集まる。質厚で表面は濃緑色。両面に毛を生じるが、春の葉と夏の葉では形状が微妙に異なり、前者は細長くて先が鈍く尖り、後者は縁に毛を生じる。
・一枚の葉の寿命は短いが断続的に入れ替わり、ギリギリの常緑性を保つが、冬季は暗い紅色となり、寒冷地では落葉することもある。
・キリシマツツジの開花は4~5月。前年に伸びた枝先に2~3輪ずつ咲くが、枝数が多いため全体としてはびっしりと花が咲く。
・花の直径は3~5センチほど。花先が五つに深く裂けた漏斗型で、上の裂片に濃い紅色の斑点がある。両性花で、雌しべは1本、雄しべは5本。雌しべには毛がある。萼は小型の長楕円形で、これも五つに裂ける。
・キリシマツツジの園芸品種は200を超え、突然変異も多い。花の色や形は品種によって微妙に異なり、花色は紅、紅紫、ピンク、朱色、白など。
・花の後にできる果実は、長さ6~10ミリの楕円形で粗い毛がある。果実が熟すのは10月頃で、多数の種子を含む。実生や挿し木で容易に増やすことができる。
・幹は株立ち状で多数が乱立し、枝も分岐が多くて密生する。若い枝に褐色の毛があるのが特徴。枝はしなやかで扱いやすいため、盆栽や生け花にも使われる。
【キリシマツツジの育て方のポイント】
・土質を問わず丈夫に育つが、弱酸性がよりよい。また、半日陰にも耐えるが、花を十分に楽しむには日向に植える必要がある。
・剪定の時期(花の直後)を間違えると花数が少なくなる。花の後には肥料を施した方がよい。
・既述のとおり寒冷地では冬季に葉を落として枯れたようになるが、翌春には新葉を生じる。
【キリシマツツジの品種】
・代表的な園芸品種は「麒麟(きりん)」で花弁は二重で厚く、淡い紅色となる。その他、「早乙女(さおとめ)」「紅麒麟(べにきりん)」「福寿(ふくじゅ)」「志賀の里(しがのさと)」「静ノ舞(しずのまい)」「常夏(とこなつ)」など多数。
・ミヤマキリシマ
九州に分布する変種。普通、標高1000m以上の火山地帯に自生する。植物学者である牧野富太郎氏が新婚旅行中に霧島山(鹿児島県/宮崎県)で発見したもので、葉の両面に剛毛があり、4~6月に紅紫または白の花を咲かせる。
【キリシマツツジに似た花木】
・クルメツツジ
キリシマツツジの基本データ
【分類】ツツジ科/ツツジ属
常緑(半常緑)広葉/低木
【漢字】霧島躑躅(きりしまつつじ)
【別名】キリシマ/ウンゼンツツジ
ホンキリシマ/サタツツジ
イマショウジョウキリシマ
クルメツツジ
【学名】Rhododendron
obtsum Planch
【英名】Kirishima tsutsuji tree
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】0.5m~4m
【用途】公園/街路樹/盆栽/花材
【値段】400円~