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カラタチバナ/からたちばな/唐橘
Spear flower
【カラタチバナとは】
・関東以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するヤブコウジの仲間。やや薄暗い樹林内にひっそりと自生するが、秋から冬にかけて艶やかな赤い実がなるため、マンリョウ、センリョウ、ヤブコウジなどと共に冬の庭を彩る植物として、和風庭園に使われることが多い。
・庭木として使われるようになった当初は、中国(唐)から渡来したものと誤解されており、ミカン科のタチバナに似た花を咲かせる中国のタチバナとして、カラタチバナと名付けられた。よく似た名前の植物にミカン科のカラタチがあって紛らわしいが、直接的な関係はない。庭師の間では単にタチバナと呼ばれることもあるが、別名のヒャクリョウ(百両)がより知られる。
・ヒャクリョウという名は、マンリョウやセンリョウよりも実の数が少ないことに由来し、果実はそれらに比べるとまばらになるが、本種よりも実が少ないイチリョウ(アリドオシ)やジュウリョウ(ヤブコウジ)、あるいはマンリョウよりも縁起が良いとされるオクリョウ(ミヤマシキミ)もある。
・カラタチバナの葉は長さ8~20センチ、幅2~4センチほど。枝から互い違いに生じるが、枝先に多いため輪生に見える。質厚の長楕円形で両端が尖り、葉先へいくほど細くなる。表面は艶やかな濃緑色だが裏面はやや白っぽい。
・幹(茎)は柔らかで地際から直立し、枝分かれは少ない。若い木の樹皮は緑色だが褐色の微毛があり、樹齢を重ねると灰色を帯びた褐色になる。樹高は最大でも1mほどで、木というより草に見える。
・カラタチバナの開花は7~8月。葉の脇から斜上する長さ3~6センチの花柄に10輪ほどがまとまって咲く。直径7~8ミリの合弁花で、花先は深く五つに裂けて反り返り、5本の雄しべと1本の雌しべが現れる。
・カラタチバナの成長は極めて遅く、開花までに3年を要する。自生は薄暗い場所が多く、せっかく開花しても気付かれないことも多い。
・果実は直径7mmほどの球形で10~11月頃に熟す。鳥が食べなければ翌年の4月頃まで枝に残ることから、代々橘(ダイダイタチバナ)といった別名もある。果実の内部には種子一粒を含む。
・果実の色、葉の形や模様に個体差が大きく、園芸品種も多い。このため品種改良が盛んだった江戸時代には、珍品が投機の対象になったという。しかしその地味さゆえ、今では存在しない品種もある。
【カラタチバナの育て方のポイント】
・自然環境では常緑樹林の薄暗い場所に自生しており、庭園においても高木の下など直射日光があたらない場所に植栽した方がよい。
・マンリョウなどに比べると、やや耐寒性は低いが、関東以西であれば問題なく地植えできる。成長が遅いためまったく手を掛けずに育てられる。
・樹形は単純で枝分かれせず、マンリョウと同じように主幹が直立する。あくまでも実を楽しむ庭木とする。
・連作障害が起きやすく、マンリョウ、ヤブコウジを含めて同類の植物が育った跡地では生育が悪い。
【カラタチバナの園芸品種】
・シロミタチバナ
果実が白色の品種
・キミタチバナ
果実が黄色い品種。なお、赤い実がなる品種は赤橘、黄色い実がなるものは金橘と呼んで区別することもある。
カラタチバナの基本データ
【分類】サクラソウ科/ヤブコウジ属
常緑広葉/低木
【漢字】唐橘(からたちばな)
【別名】ヒャクリョウ/コウジ
タチバナ/ダイダイタチバナ
アカタチバナ/キンタチバナ
【学名】Ardisia crispa
【英名】Spear flower
【成長】遅い
【移植】やや難しい
【高さ】0.2m~1m
【用途】庭木/鉢植え/花材
【値段】1000円~