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カナメモチ/かなめもち/要黐
Japanese photinia
【カナメモチとは】
・東海地方以西の本州、四国及び九州に分布するバラ科の常緑広葉樹。自生は山地の沢沿いや海辺の丘陵で稀に見られる程度だが、赤みを帯びた新芽や光沢のある葉が美しく、庭木として垣根などに使われることが多い。
・名前の由来には、葉がモチノキに似て、材質が堅く、扇子の要(かなめ)や骨に使われたことに由来するという説と、赤い芽のモチノキを意味する「アカメモチ」からの転訛とする説がある。
・カナメモチの葉は長さ6~10センチの長楕円形で先端が尖り、縁には細かなギザギザが目立つ。基部はクサビ形で葉柄は長さ1~1.8センチほど。モチノキよりも革質で大きく、枝から互い違いに生じる。
・若葉の紅色は地域や環境によって異なり、レッドロビンと違わぬほど赤いものもあれば、黄緑色のものもある。また、成葉においても紅色をとどめるものもあれば、展開するにつれて色褪せるものもある。カナメモチのうち特に新芽が紅色になるものをベニカナメと呼ぶ。
・垣根に多用されるレッドロビンは、昭和40年代に導入された本種とオオカナメモチの交配種。本種よりも葉が大きく、新葉の赤味がより鮮明になる。ただし、カナメモチとレッドロビンを見分けるのは難しく、専門業者も混同している場合がある。
・カナメモチの開花は初夏(5~6月)で、小枝の先に直径10センチほどの傘形をした花序ができる。
・花序は直径1センチほどの小花の集りで、それぞれの小花には5枚の白い花弁と2本の雌しべがあり、その周囲を20本ほどの雄しべが囲む。花の裏側にある萼は三角形で萼片は5つ。
・花はソバの花に似ており、「枕草子」(清少納言)では本種をソバノキと呼んでいる。
・花の後には直径5mm弱の楕円形の果実がなり、11~12月になると赤く熟す。
・果実は堅くて無味だが、他に木の実が少なくなる初冬にはヒヨドリ、ツグミ、メジロ、カワラヒワなどがこれを採食する。果実の中には光沢のある淡いクリーム色をした種子が1~4粒ずつ入っている。
・普通は垣根などに使われ、頻繁に剪定されるため、街中にあふれているわりにはカナメモチやレッドロビンの花及び果実を目にする機会は少ない。
・幹はヒョロヒョロと頼りなく伸びるが分岐が多く、枝葉は繁茂しやすい。樹皮は暗い褐色で樹齢を重ねると鱗状に剥離する。幹の直径は最大30センチほど。材は硬質で、かつては鎌の柄、扇子の骨、牛の鼻輪、車軸などに使われた。
【カナメモチの育て方のポイント】
・基本的には日向を好むが、半日陰でもよく育つ。ただし、日陰では新芽がきれいな赤にならないことが多い。
・肥沃な土を好むが、園芸用に出回るものは土質を選ばずに育つ。あらかじめ植穴に鶏糞、腐葉土等の有機質肥料を入れれば尚可。
・成長が早いため、マメに剪定する必要があるが、上記のとおり材質は硬いため手入れは多少しにくい。また、樹形は乱れやすく、単独で植えた場合は樹形をまとめにくい。
・寒さに弱く、降雪地帯では生育が不良となる。
・根頭がん種病、斑点病など病気が多い。本種よりもレッドロビンの方が病気や害虫に強い。
【カナメモチの近縁種】
・ベニカナメモチ(アカメモチ)
カナメモチのうち特に新葉の紅が美しいものを品種として扱う場合がある。
本州では西日本のごく一部に自生する種で、カナメモチの倍ほどの大きさの葉を持つ。希少種であり公園や庭園で見かけることは稀。奄美大島、沖縄、台湾、フィリピンなどにも自生する。
・五色の彩
葉に模様が入るカナメモチの園芸品種で、新芽は御覧のように蛍光ピンクのようになる。和風の印象が強いカナメモチだが、これならば洋風住宅にも違和感なく使用できる。ただし、主張が強いため好みは分かれる。
カナメモチの基本データ
【分類】バラ科/カナメモチ属
常緑広葉/小高木
【漢字】要黐(かなめもち)
【別名】アカメモチ/ベニカナメ
ソバノキ/扇骨木
【学名】Photinia glabra
【英名】Japanese photinia
【成長】やや早い
【移植】やや難しい
【高さ】5~10m
【用途】垣根/公園
【値段】500円~