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ヤブガラシ/やぶがらし/藪枯
Bushkiller
【ヤブガラシとは】
・北海道西南部、本州、四国及び九州に分布するブドウ科の蔓性多年草。日当たりの良い道端や藪の縁、除草後の空き地などに見られ、時に他の草木を覆って枯らし尽くすほどの高い繁殖力を持つため、ヤブガラシと名付けられた。日本以外でも中国、インド、マレーシアなどアジア各地に分布する。
・正式にはヤブカラシでkaは濁らないが、ヤブガラシと呼ばれることも多い。別名にはヤブタオシ、ビンボウカズラなどだが、何れも好意的な名前ではなく、除草剤による駆除の対象になる。しかし、ヤブガラシは生薬名を「烏蘞苺(うれんぼ)」といい、民間療法では葉の汁を虫刺されに使うなどの利用価値もある。
・葉は5枚の小さな葉からなるように見えるが、5枚で一つの葉であり、先端の小葉(裂片)が最も大きく、それぞれの縁には細かなギザギザがある。5枚の小葉は鳥の足跡のように三つに分かれた長い葉柄でつながり、よく観察すると葉柄の基部には「托葉」と呼ばれる2枚の小さな葉がある。イメージのよくない「雑草」だが、十分にアク抜きした新芽や若菜は、御浸し、油炒め、和え物などにして食べることができる。
・茎(蔓)は赤紫色で縦筋が入って角ばるが、カナムグラのようにチクチクすることはない。蔓から伸びる触手のような巻きヒゲは葉と対になって生じ、他物に絡みついて生長する。この蔓にも利用価値があり、切り口から出てくる液を集めてグリセリンと薬用アルコールを加えたものは肌荒れを抑える効果があり、ヘチマ水のように化粧水として使うことができる。
・ヤブガラシの開花は夏で、葉と対になって生じた花軸が幾何学的に分岐し、直径5ミリほどの花を咲かせる。ヤブカラシは雌雄同株だが、同じ一つの花が時間の経過とともに雄から雌に変わる「雌雄異熟」という性質を持つ。花弁と雄しべは四つで雌しべは一つ。花盤と呼ばれるシベの基部はオレンジ色からピンクへと変わる。
・ヤブカラシの花盤には蜜が溜まりやすく、アオスジアゲハ、ツマグロヒョウモン、スズメバチ、マメコガネなど多くの昆虫が訪れる。ヤブガラシはブドウの仲間であり、花の後には水分を含んだ球形の果実ができ、稀に黒く熟す。
・ヤブガラシは太くて長い地下茎に栄養を溜め込み、その節々から地上に芽を出す。切断された箇所からも芽を出すほど丈夫であり、抜本的に駆除するには地下15~20センチのところにある地下茎を全て掘り出すか、根まで枯らすような除草剤を使用する必要がある。ちなみに葉や蔓と同様、根にも利用価値があり、盛夏に採取した根を煎じたものは利尿剤に、生のままで擂り潰したものは、虫刺され薬や冷湿布として使うことができる。
【ヤブガラシに似ている草花】
・クズ
【カナムグラとヤブガラシの違い】
・カナムグラは一年生で、葉は茎から対になって生じ、茎や葉柄に逆向きの棘があるため触れると痛い。ヤブガラシは多年草で、葉は茎から互い違いに生じ、茎は滑らか。庭園管理の宿敵として似たような存在だが、よく見ると両者は全く異なる。
ヤブガラシの基本データ
【分 類】ブドウ科/ヤブカラシ属
つる性多年草
【漢 字】藪枯(やぶがらし)
【別 名】ヤブカラシ/ヤブタオシ
ビンボウカズラ(貧乏葛)
ウレンボ(烏蘞苺)
【学 名】Cayratia japonica
【英 名】Bushkiller
【開花期】7~9月
【花の色】黄緑色
【草 丈】~3m