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ツワブキ/つわぶき/石蕗
Japanese silver leaf
【ツワブキとは】
・中部以西の本州、四国及び九州に分布するキク科の多年草。一年を通じて光沢のある葉が美しく、他に花が少ない時季に黄色い花を咲かせる。葉と花のコントラストが明瞭であり、かつては晩秋のモチーフとして絵画や漆器類にデザインされることも多かった。
・ツワブキの自生は海岸沿いの岩場や林の縁などで、時に大きな群落を作る。海辺の厳しい環境や日陰にも耐える丈夫な性質を持つため、日本庭園や寺院のみならず、都市部の緑化にも使われる。地方名はイソブキ、ヤマブキ、ツワ、ツワナ、ツバ、ツヤなど。
・開花は10~12月頃で長く伸びた花茎の先に、直径5センチほどのキクのような花を咲かせる。花は周辺部にある多数の雌性花と中心部にある両性花からなり、いずれも実を結ぶ。熟した実は自然に開裂し、タンポポのような淡い褐色の綿毛を持つ種子が、風に吹かれて飛んでいく。
・葉は肉厚で艶があり、深い切れ込みがある。フキとは別のツワブキ属だが、フキに似た円形で同じように食べられることからツワブキ、あるいは津辺(=海辺)に生える葉を意味する「津葉」が転じてツワブキと呼ばれるようになった。若い葉や葉柄は茶色の産毛に覆われ、葉柄の内部はフキと違って空洞にならない。
・葉には抗菌力のあるヘキセナール・ヘネシオ酸が含まれ、病害虫の発生もほとんどない。炙った葉は打撲、湿疹、化膿止め、さらにはワキガの薬になるという。また、根茎に解毒作用があり、乾燥させたものは胃腸薬や解毒剤になるという。
・食用にするのは主に葉が開く前の若い茎(葉柄)。クセが強くて苦みがあるため、重曹や灰でアク抜きしたものを、キンピラ、和え物、梅酢漬けなどにして食用する。醤油とみりんで煮詰めた「伽羅蕗(きゃらぶき)」は特に有名。蕾も天婦羅にして食べることができる。
・氷点下5度までなら寒さに耐えられるが、庭に地植えできるのは、太平洋側では福島県以南、日本海側では石川県以南となる。日本以外では台湾や韓国等に自生する。
【ツワブキの品種】
・オオツワブキ
九州の西海岸(長崎の女島など)に見られる品種。1mを超す茎にツワブキより大きな葉と花を生じ、アキタブキのようになる。地元では葉を塩漬け(粕漬)にして食べることで知られる。
・リュウキュウツワブキ
沖縄や奄美諸島に見られる品種。幅の狭い扇形の葉を持ち、通年開花する。
・カンツワブキ
屋久島と種子島に分布する品種で、葉の縁がギザギザになる。カンツワブキとツワブキの雑種で、ヤクシマツワブキという品種もある。
・このほか葉に模様が入るキモンツワブキやフクリンツワブキ、八重咲のヤエツワブキ、葉が波状になるボタンツワブキなど、江戸時代から数多くの品種が作り出されている。
ツワブキの基本データ
【分 類】キク科/ツワブキ属
多年草
【漢 字】石蕗(つわぶき)
【別 名】イソブキ/イシブキ
ヤマブキ/ツワ/ツワナ
ツバ/ツヤ/ツヤブキ
ハマブキ
【学 名】Farfugium japonicum
【英 名】Japanese silver leaf
【開花期】10~12月
【花の色】黄色
【草 丈】~80cm