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タチツボスミレ/たちつぼすみれ/立壺菫
Japanese Violet
【タチツボスミレとは】
・北海道から沖縄まで、全国各地に自生するスミレ科スミレ属の多年草。日本に自生する50種類ほどのスミレの中で最も普通に見られるものであり、万葉集や枕草子に登場するスミレも本種とされる。
・タチツボスミレの開花は3~5月。葉の付け根から伸びた花柄は弧を描き、その先端に直径2センチほどの淡い青紫色の花を吊り下げる。花弁は5枚あるが、うち一つが大きく裏側に隆起し、全体の形が大工道具の墨入れ、あるいは隅取紙に似ているため、スミレと呼ばれるようになった。
・花の後ろに隆起した部分を「距」というが、かつての子供たちには2本のスミレの距を引っかける遊びがあり、これにちなんでスミレを「相撲草」「相撲取草」あるいは「喧嘩花」と呼ぶ。
・花は斜め下向きに咲くが、これはシベを下向きにして、受粉を媒介するハナバチやツリアブの身体に花粉を落とすため。5本ある雄しべは合体して筒状となり、先端にある褐色の膜の内側に花粉を溜め込んでいる。褐色の膜のさらに下にある白いものが雌しべ。
・春の花の後に実ができるが、これとは別に、夏にも閉鎖花と呼ばれる花が咲き、より純度の高い種子ができる。花や葉は酢の物やおひたし、天婦羅などにして食べることができる。
・スミレは大別すると地上に茎が出るタイプ(有茎種)と出ないタイプ(無茎種)があるが、タチツボスミレは地上に茎を生じる。葉は楕円形で、付け根付近がハート型に凹む。葉色は緑色が普通だが、標高の高い場所では紫色を帯びることもある。タチツボスミレは環境適応力が高く、花の色や茎葉の形態に個体差がある。
・タチツボスミレを始めとしたスミレ類(パンジー、ビオラを含む)はツマグロヒョウモン(蝶)の食草であり、若い幼虫は葉の裏にいるが、成長の進んだ幼虫は株から降りてスミレ類を食べ歩く。
【タチツボスミレの品種】
・ニオイタチツボスミレ
同じような場所に見られるスミレだが、花の香りが高く、花色は赤みを帯びるのが特徴。
タチツボスミレの基本データ
【分 類】スミレ科/スミレ属
多年草
【漢 字】立壺菫(たちつぼすみれ)
【別 名】相撲草/相撲取草/喧嘩花
【学 名】Viola grypoceras
【英 名】Japanese Violet
【開花期】3~5月
【花の色】青紫色
【草 丈】~30cm