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ガマ/がま/蒲
Great cat-tail
【ガマとは】
・日本全国の浅い水辺や水路、休耕田などに見られるガマ科の多年草。細長い葉の垂れ下がる様子を農具の「鎌」に見立てて、ガマと名付けられた。その品種は世界で15種以上に及ぶが、日本では因幡の白兎の伝説として古事記にも登場するほど古くから親しまれる。
・茎は泥の中を這う白い根茎から束になって立ち上がる。長さ1mほどの滑らかな円柱状になり、硬質かつ軽量であることや、太さが均一で扱いやすいことから、かつてはこれを集めて簾(すだれ)を作った。ガマは別名を御簾草(みすぐさ)という。
・葉は幅1~2センチ、長さ1~2mに達し、下部はサヤ状となり茎を包み込むように生じる。厚みがあり丈夫なことから、蒲ムシロと呼ばれる敷物や笠、蓑、山菜やキノコを採取する際に腰に着けて使う籠であるハケゴの材料とされた。
・ガマの開花は6~8月。葉を超えるように突き出した花穂に、アメリカンドックのような花が咲く。花は二段作りで、上段に黄色い雄花、下段に緑褐色の雌花が咲く。いずれも花弁はなく、雄花は3本の雄しべと剛毛からできる。雄花の花粉は「蒲黄(ほおう)」と呼ばれ、漢方では止血や利尿に効果があるとされ、長年内服すれば神仙になるとされた。
・雌花はそのまま果穂となり、たくさんの果実を抱えて赤褐色に熟す。果穂の上部には雄花の名残である穂軸が残り、この状態を俗に「蒲鉾(がまぼこ)」と呼びカマボコの語源になった。果穂は熟しきると自然に裂け、綿毛を持った種子が飛んでいく。因幡の白兎の話は、この綿毛がウサギの毛に似ることからの発想とされる。
・シンプルかつどこにでも見られる雑草のようなガマだが、上記以外にもその使い道は多く、かつては新芽や根のデンプンを食用に、茎や葉をパルプの原料に、穂にできる綿を座布団に、果穂は油を注いで蝋燭代わりにしたという。現代でもアフリカでは根を食べ、葉で住居の屋根や壁を作る。
【ガマの品種】
・斑入りガマ
葉に白い模様が入る品種。園芸用として稀に流通する。
休耕田などによく見られるガマの一つで、名前のとおり草丈や葉の幅がガマよりも小さい。花もガマより明らかに細く、花材としてはより好まれる。
・ヒメガマ
ガマやコヒメガマによく似るが、雄花と雌花の間に隙間がある。自生地はガマとほぼ同じ。
ガマの基本データ
【分 類】ガマ科/ガマ属
多年草(抽水植物)
【漢 字】蒲(がま)
【別 名】御簾草(みすぐさ)
【学 名】Typha latifolia L.
【英 名】Great cat-tail
【開花期】6~8月
【花の色】黄褐色
【草 丈】100~200cm