庭木図鑑 植木ペディア > 山野草 > カワラナデシコ
カワラナデシコ/かわらなでしこ/河原撫子
Superb pink
【カワラナデシコとは】
・本州、四国及び九州の山野、川原、海岸等に分布するナデシコ科の多年草(二年草)。ヤマトナデシコあるいは単にナデシコとも呼ばれ、観賞用に広く普及する。その栽培は1200年前に遡り、日本において種子から育てられた最初の園芸植物とされる。
・花のみならず葉や茎の様子も風流であり、万葉集、枕草子、源氏物語、更級日記などに取り上げられる。ナデシコという名の由来には、かわいい子供の頭を撫でたくなるのと同じように、手で触れたくなるような可憐な花が咲くことによるとする説、本種で子供を拭き撫でて穢れを落とし、川に流したことによるという説がある。
・花は直径3センチほどで、5枚ある花弁の縁が糸状に細かく裂け、繊細な美しさを作り出す。花色は紫がかった淡いピンクが基本だが、稀に白花もある。雌しべには花柱が二本あるが、受粉の有無によってその長短に大きな差が生じる。
・山上憶良によって秋の七草とされており、秋の花というイメージが先行するものの、実際は梅雨の頃から咲き始める「夏の花」である。夏に花期を迎え、その開花期間が比較的長いため「トコナツ(常夏)」という別名がある。
・果実は円柱状で、熟すと中から黒い種子が飛び出す。漢方においては種子を薬用とし、煎じたものは消炎、利尿、解熱、膀胱炎、通経(整経)など効果があるとする。
・茎はやや明るい緑色で丸くて細く、株元から数本がまとまって生じて高さ30センチほどまで育つ。葉は平たくて細長く、両端が尖り、縁にギザギザはない。茎にある節から対になって生じる。
・ナデシコの仲間は丈夫な性質を持ち、海岸から高山に至るまで広い範囲に分布する。広い意味ではカーネーションもナデシコの仲間であり、園芸品種を含めると世界に300種類以上ある。学名にあるDianthusは「神の花」の意味で、欧州でも古くから親しまれる。
・ヤマトナデシコという呼び名は、中国産のカラナデシコ(唐撫子)との区別において用いられる。セキチク(石竹)とも呼ばれるカラナデシコは、万葉集にもその名が登場するほど古い時代に日本へやってきた。より小型で綺麗な花が咲くため園芸用として好まれ、これを母種としたイセナデシコもある。
・日本の女性を大和撫子と呼んだのは、本種のしなやかな茎葉や可憐な花を古い時代の女性像になぞらえたことによる。
・一般に秋の七草といわれるものは本種以外に、オミナエシ、ススキ、キキョウ、フジバカマ、クズ、ハギである。
【ナデシコの仲間】
・エゾカワラナデシコ
カワラナデシコの変種で、北海道及び中部以北の本州に見られる。同じような場所に分布しており遠目からは見分けにくいが、カワラナデシコでは3~4対ある「苞」が本種では2対しかない。
・タカネナデシコ
カワラナデシコの変種で、北海道や中部以北の本州にある高山に分布する。花色が濃く、細かに裂けた花弁が細長く伸びるという特徴がある。
・シナノナデシコ
本州中部(信濃)に多い品種で、背丈がより低く、花が紅紫色になる。花弁があまり裂けず、一般的なナデシコのイメージからはやや遠い。
・ハマナデシコ
暖地の海岸に分布する品種で、過酷な環境に適応できるよう、丈夫な茎と厚めの葉を持っている。
・ほかに自生種にはフジナデシコなどがある。また、園芸が盛んであった江戸時代には、人為的に様々な変わり花のナデシコが作出された。
カワラナデシコの基本データ
【分 類】ナデシコ科/ナデシコ属
多年草(二年草)
【漢 字】河原撫子(かわらなでしこ)
【別 名】トコナツ(常夏)
ヤマトナデシコ(大和撫子)
【学 名】Dianthus superbus L. var.
longicalycinus (Maxim.)
F.N.Williams
【英 名】Large pink
【開花期】6~9月
【花の色】黄色 紫がかった薄ピンク色、白色
【草 丈】~30cm