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キツネノカミソリ/きつねのかみそり
Red heart lily
【キツネノカミソリとは】
・本州、四国及び九州に分布するヒガンバナ科の多年草。湿気のある明るい場所を好み、山裾の林内、野原、道端、墓地などに群生する。夏に咲く花の雰囲気はヒガンバナに似るが、花弁はより少なく、多少濁ったような色合いになる。
・葉はヒガンバナと同じような線形だが、開花後に葉が出るヒガンバナとは異なり、早春に生じて開花前の初夏に消える。何もない場所に突然咲くように見えること、あるいは鋭い葉や細い花弁の様子をキツネが使うカミソリになぞらえて「狐の剃刀」と名付けられた。
・別名及び地方名はキツネノタイマツ、キツネユリ、キツネバナ、ソウレバナ、ジャランポングサ、ジゴクバナなど。花の時季だけ姿を現すとして「幻の花」と呼ばれることも。
・葉が消えてしばらくすると地下にある鱗茎(=根)から赤褐色の花茎が伸び、その先端に朱色あるいはオレンジ色の花が2~6輪ずつ上向き咲く。花弁(正確には花被片)はヒガンバナよりも少ない6枚で、やや斜めに開き、先端が少しだけ反り返るがヒガンバナほど極端に反り返らず、縁もあまり波打たない。
・ヒガンバナは長いシベがよく目立つが、本種の雄しべや雌しべは花弁と同程度の長さ。花の基部は筒状で、受粉後は子房の膨らみが目立つようになる。果実は楕円形で玉簾のようになり、中に含まれる黒い種子を蒔けば増やすことができる。
・葉は鱗茎の上部から生じ、長さ30~40センチほどになる。幅は1センチほどで根元から先端までその幅は変わらず、先端はやや丸みを帯びる。葉の表面は淡い黄緑色で、裏面の中央には真っすぐに走る溝が目立つ。
・地下にある鱗茎は黒褐色の外皮に包まれノビルに似るが、全草にアルカロイド系の有毒成分(リコリン、ガランタミン)を含む。漢方では去痰や吐瀉に、また民間療法では皮を剥いだ鱗茎をすり潰して冷湿布に用いる場合もあるが、誤食すると激しい嘔吐、下痢、痙攣、心臓麻痺等の症状を引き起こす。毒性が高いのは鱗茎(根)だが、葉の汁液によって皮膚に炎症が出る場合もあるため、素人は手を出さない方がよい。
【キツネノカミソリの品種】
・オオキツネノカミソリ
関東~九州に自生する近縁種で、雄しべと雌しべが長く、花被片から突き出すようになる。また、花被片が反りけるように咲くこと、葉の幅が先端ほど広いこと、葉の裏の溝が上半分にしかないことも本種とは異なる。
キツネノカミソリの基本データ
【分 類】ユリ科/ヒガンバナ属
【漢 字】狐の剃刀(きつねのかみそり)
【別 名】キツネノタイマツ/キツネユリ
キツネバナ/ソウレバナ
ジャランポングサ/ジゴクバナ
【学 名】Lycoris sanguinea
【英 名】Red heart lily
【開花期】8~9月
【花の色】オレンジ、ピンク
【草 丈】~50cm