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カラムシ/からむし/茎蒸・苧麻
Karamushi(Ramie)
【カラスムシとは】
・本州、四国及び九州に分布するイラクサ科カラムシ属の多年草。暖地の林縁や道端、川岸、田畑の土手などで普通に見られる大型の草本。伐採後の荒れ地などにもしばしば群生する。
・カラムシの原産地には諸説あるが、茎の皮から織物の材料を採取するため古い時代に中国から渡来し、栽培されていたものが野生化したとする説が根強い。葉や茎をちぎると和紙のように丈夫で長い繊維を生じる。
・本種の繊維で作った良質な織物は「苧麻布(ちょまふ)」と呼ばれるが、生産地名を冠した「越後上布」「小千谷縮布」「能登上布」などの反物として流通する。特に福島県大沼郡昭和村では「からむし織」と呼び、その伝統の継承を重んじている。
・カラムシの別名はチョマ、クサマオ、マオ(真麻)など。漢名は「苧」あるいは「苧麻」。「茎蒸」という漢字表記もあるが、これは茎を蒸して繊維を作ったという誤解に基づく。
・カラムシの開花は8~9月。雌雄同株で、葉の脇から伸びた花茎の上部に雌花が、下部に雄花が円錐形に集まって咲く。黄緑色をした地味な小花だが、花粉が喘息を引き起こすという調査結果もある。
・葉は長さ9~15センチの広い卵形で先端は尾状に尖り、縁には規則的なギザギザがある。葉の表面は淡い緑色だが裏面には白い綿毛が密生するため、緑がかった白色になる。表裏のコントラストが印象的で、長い柄が揺れ動く風の強い日には特に人目に付きやすい。ただし、葉の裏が白くないアオカラムシもある。
・アカタテハ(蝶)やフクラスズメ(蛾)の幼虫、ラミーカミキリはカラムシなどの葉を食草とする。カラムシを観察していると時折、柏餅のようなものを見付けるが、これはアカタテハの巣で、幼虫は葉を上手に折りながら育ち、最終的には巣の中で孵化する。
・茎はほぼ枝分かれせず地際から直立して木質化するが、冬季には地上部が枯れて倒れる。イラクサの仲間の多くは葉が茎から対になって生じる「対生」だが、本種は葉が互い違いに出る「互生」で、茎や葉柄に太い毛が斜上する。
【カラムシに似た植物】
カラムシ属の植物は約100種類あり、主に熱帯に分布。日本にはうち12種が自生する。
・ヤブマオ
・アカソ、コアカソ、クサコアカソ
沖縄を除く各地に分布し、カラムシよりもやや標高の高い、湿った場所に生じる。葉は茎から対になって生じ、葉柄が赤い。アカソは葉の先端が三つに裂け、クサコアカソはアカソよりも葉が大きい。
カラムシの基本データ
【分 類】イラクサ科カラムシ属
【漢 字】茎蒸/苧麻(からむし)
【別 名】チョマ/クサマオ
マオ(真麻)
【学 名】Boehmeria nivea var.
【英 名】Karamushi(Ramie)
【開花期】8~9月
【花の色】黄緑色
【草 丈】~200cm