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カラスノエンドウ/からすのえんどう

Narrow-leaved vetch

小さいエンドウ豆のような草
身近な空き地にも見られるごくありふれた「雑草」
やはずえんどう,植物図鑑
カラスノエンドウの葉や茎には、柔らかな毛がまばらに生える
やはずえんどう,野草
葉の先端は巻きヒゲになり、他物に絡まって育つ
烏野豌豆,植物図鑑
カラスノエンドウの開花は3~6月
やはずえんどう,画像
花弁は5枚で上に大きな1枚があり、他4枚は組み合わさってシベを覆う
からすのえんどう
花は長さ1~2センチほど
やはずえんどう
複数の花弁に包まれた内部に雌しべと雄しべがある
からすのえんどう,雑草
葉柄基部の托葉には蜜腺があり、アリが集まる
からすのえんどう,植物
未熟な果実(豆果)の様子
黒くて小さなマメみたいな実
熟した豆果

 

【カラスノエンドウとは】

・本州~沖縄の暖地に分布するマメ科の蔓性植物。道端や土手、野原や荒れ地などで普通に見られる越年草(二年草)で、黒い豆果の様子をカラスになぞらえて、カラスノエンドウと名付けられた。

 

・本来の和名はヤハズエンドウで、小葉の先端が矢筈(弓矢で弦を引っかけるU字部分)のように浅くへこむことによる。日本に見られるのは在来種だが、他のアジアやヨーロッパにも広く自生する。

 

・葉は小さな卵形の葉が8~16枚集まり、長さ5センチほどの羽根状となる。葉の先端は2~3つに分かれて巻きヒゲ状になり、この巻きヒゲによって他物に絡まりながら育つ。

 

・カラスノエンドウの新芽が出るのは秋。低い株を作って越冬し、翌年の初夏~初秋に枯れる。葉柄の付け根には三角形の托葉があり、そこにアリが集まる蜜腺を隠れている。茎は細い四角形で株元から分岐し、地を這うように育つが上部は立ち上がる。

 

・開花は3~6月で、直径1~2センチの花が、短い柄に1~3輪ずつ咲く。花は蝶形で紅紫色が基本だが、淡い紅紫色や白色の花もある。花の構造は分かりにくいが花弁は5枚あり、立ち上がる大きな花弁で花の存在と蜜の在りかを示し、下で合体している4枚の花弁はシベを包み込む。

 

・一見すると雄しべや雌しべの在りかは分からないが、受粉を媒介するハナバチが下の花弁に乗って押し下げると、中に隠れていたシベの先端が現れてハチの身体に触れるようになっている。

 

・花の後にできる実はサヤエンドウに似た扁平な豆果で、長さは3~4センチほど。黒く熟すと二つに裂け、晴天の日には5~10粒前後ある種子を弾き飛ばす。種子は褐色で黒いまだら模様が入る。

 

・カラスノエンドウは漢名を救荒野豌豆(きゅうこうやえんどう)といい、4~5月に採取した若い茎葉やサヤを非常時の食糧とした。クセが少なく、天婦羅や油炒め、胡麻和えなどにして食べることができる。また、春に採取して日干しした全草を煎じて飲めば、血行がよくなるとする民間療法がある。

 

【カラスノエンドウに似た植物】

・スズメノエンドウ

 葉や茎がより細く、花はより長い柄の先に数輪ずつ咲くが、直径3ミリほどで目立たない。カラスノエンドウという名はスズメノエンドウよりも大きいことによるとする説もある。豆果のサヤも長さ1センチほどと小さい。

 

・カスマグサ

 カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間種(雑種ではない)で、カラスとスズメの間(マ)という意味合いで名付けられた。小葉は4~6対で長さ1~2センチほど。

 

・ハマエンドウ

 日本を含むアジア、ヨーロッパ、北アフリカなどの海岸に見られる近縁種。全体に粉白色を帯び、6~8月頃になると直径3センチほどの花を咲かせる。

はまえんどう
ハマエンドウの花
浜えんどう,植物
ハマエンドウの果実

 

 

 このほか本種の近縁には、外来種のオオヤハズエンドウやイブキノエンドウなどがある。

カラスノエンドウの基本データ

 

【分 類】マメ科/ソラマメ属

     越年草

【漢 字】烏野豌豆(からすのえんどう)

【別 名】ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)

【学 名】Vicia angustifolia

【英 名】Narrow-leaved vetch

【開花期】~6

【花の色】紅紫色

【草 丈】~100cm

 

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