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カラスウリ/からすうり/烏瓜
Japanese snake gourd
【カラスウリとは】
・本州、四国及び九州に分布するウリ科カラスウリ属の多年草。日当たりのよい山林や平地の藪に自生するが、実生などによって勝手に生えたものが民家の生垣などで普通に観察できる。
・クズやヤブガラシと並ぶ代表的な蔓性植物で、秋にできる朱色の果実がよく目立つ。日本の在来種だが中国や朝鮮半島にも自生。
・開花は梅雨明け近くから晩夏までの長期に及ぶが、夕暮れ以降に咲いて夜明け前に閉じるため人目に付つきにくい。宵闇に浮かぶ青白い花を気持ち悪いとする向きもあるが、妖艶かつ繊細で美しく、俳句では夏の季語となる。
・雌雄異株で雌株には雌花が、雄株には雄花が咲く。雌雄の外見は似ているが、雌花は単独で咲き、雄花は数輪集まって咲くため遠目でも見分けやすい。雌花の中心部にある柱頭(雌しべ)は3つに裂け、雄花の中心部にある3個の雄しべは花糸が短く、葯がS字に曲がる。
・カラスウリの花が夜間に咲くのは、花粉を媒介するエビガラスズメ(夕顔別当)という蛾が夜行性であるため。花には甘い香りがあるというが筆者にはよく分からない。
・果実は長さ5~7センチの球形~長楕円形。未熟な果実にはウリ科特有の淡い楯縞模様があるが、熟すと目立たなくなる。熟した実はまずくて食用にならないが、若い果実を塩漬けにした物は食べることができる。果実の中にはクリーム色の果肉に包まれた長さ1センチ弱の種子が3~30粒ほどある。
・種子は黒褐色で、帯状の隆起がある。その独特な形状はカマキリの頭やヤッコなどに喩えられるが、大黒天が持つ打ち出の小槌に擬えて縁起物とし、財布に入れるという風習がある。
・別名のタマズサ(玉章)は昔のラブレターである「結び文」を意味し、紙を細く折りたたんでアズサ(キササゲ)の枝に結んだその様子がカラスウリの種子を想起させる。
・葉は直径10センチほどの卵形あるいはハート形だが、3~5つに浅く裂けることもあり、根に近いほど葉の切れ込みが深くなるなど変異が多い。葉の両面と蔓には粗い白毛が密生しているため光沢がなく、手で触れるとザラザラする。
・若葉や若い蔓は天婦羅、油炒め、和え物や煮物にして食べることができる。ただし、トホシテントウ(十星天道)というテントウムシの食草(餌)であり、蔓の間に卵が点在している。クロウリハムシという甲虫の成虫もカラスウリの葉を食べ、その幼虫は土中で根を食べる。
・根は大きな塊状で芋のようになる。根から伸びた蔓には稜(棘のようなもの)があり、節から出る細い巻きヒゲを他物に絡ませながら高さ3mを超えるほど育つが、その一方で接地した蔓の一端は地中に入って新たな塊根を作る。
・漢方ではカラスウリの根を「王瓜根(おうかこん)」、種子を「王瓜子(おうかし)」と呼び、煎じたものを薬用するが、本来、中国ではオオスズメウリを用いた。また、果肉や果汁は霜焼け、あかぎれなどの肌荒れに薬効があるとする民間療法もある。
・カラスウリという名の由来には、①食用にならずカラスくらいしか食べないウリとする説(実際はカラスのみならず他の鳥も食べない)、②木にぶら下がる赤い実をカラスの食べ残しと見立てて名付けたとする説、③熟した果実の色や形が唐(中国)から伝来した朱墨=唐朱(からす)に似ることによるとする説がある。
・学名のTrichosanthes cucumeroidesは糸状の花が咲く、キュウリに似た植物といった意味。
【カラスウリの品種】
・キカラスウリ(黄烏瓜)
文字どおり花や果実が黄色い品種で、カラスウリよりも耐寒性があり、北海道南部や東北を中心に分布する。
カラスウリとの違いは、葉に毛がなくて光沢があること、花冠の糸がやや太くて短く、レース状にならないこと、果実はより大きいが小槌型の種子にならないことなど。
漢方では根を「栝楼根(カロコン)」、種子を「栝楼仁(カロニン)」といい、解熱、止瀉、鎮咳、去痰などに用いる。また、根茎はでんぷん質を多く含み、かつては「天瓜粉(てんかこ)」というベビーパウダーの原料となった。
・オオカラスウリ
四国、九州及び沖縄に分布し、より大きな果実ができる。葉の表面に剛毛を生じるのも特徴の一つ。キカラスウリ同様に根や種子を栝楼根、栝楼仁と呼んで薬用する。
カラスウリの基本データ
【分 類】ウリ科カラスウリ属
多年草
【漢 字】烏瓜/王瓜/土瓜(からすうり)
【別 名】玉章(タマズサ/タマツサ)
カラスノマクラ/ゴーリ
【学 名】Trichosanthes cucumeroides
【英 名】Japanese snake gourd
【開花期】6~9月
【花の色】白
【草 丈】~300cm