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マタタビ/またたび/木天蓼
Silvervine
【マタタビとは】
・北海道から九州まで、日本全国の山野や谷筋、林の縁に自生するマタタビ科の蔓性灌木。木全体に揮発性のマタタビ酸を含み、発情期の猫の尿に似たこの臭いが、ネコ科動物を惹きつけることで知られる。
・若い蔓は褐色あるいは赤紫色。大変に丈夫であり、筏や吊り橋を作るための縄として使うことができる。葉は長さ6~15センチの卵形で先端は尖り、縁にはギザギザが、裏面の脈上には毛がある。蔓や葉は噛めば辛みがあるものの、若菜を天婦羅や和え物にして食べることができ、陰干しした葉は腹痛の薬になる。
・マタタビの開花時期は6~7月。その年に伸びた葉の脇に、白い五弁花が1~3個ずつ垂れ下がって咲く。花の感じがウメに似るとしてナツウメの別名があるものの、ウメというよりはヒメシャラやナツロウバイに近い雰囲気を持つ。なお、マタタビは雌雄異株であり、雄株には雄花が、雌株には両性花が咲く。
・花には微香があるものの、直径2~3センチほどと小さいことに加え、常に下向きであるため見付けにくい。しかし、花の近くの葉がハンゲショウのように半分だけ白くなるため、遠くからでもマタタビの木や花を見付けるヒントになる(ちなみに花が終われば葉は元どおりになる。)。
・マタタビの果実は長さ2.5~4センチほどで先端が尖る。未熟な果実は噛むと相当に辛いが、10月頃に熟して黄褐色になると甘味が出てくる。しかし、生で食べるよりは、乾燥させて擂り潰したり、塩漬けにして食べるのが普通であり、手を加えればマタタビ茶やマタタビ酒も造ることができる。
・果実にはドングリ型とカボチャ型があるが、後者は花の時期にマタタビノアブラムシ(あるいはマタタビミタマバエ)に寄生され、「虫こぶ」となったもの。一般的には前者を食用に、後者を薬用にという使い分けがなされており、いずれも疲労回復に効果があるという。
・立秋の頃に、虫こぶができた実を採取し、熱湯で中の虫を殺した後に乾燥させれば「もくてんりょう(木天蓼)」という生薬になり、滋養強壮、鎮痛等に効果があるという。これで作った天蓼酒を飲むと身体が温まり、冷え性、利尿、滋養強壮に効果があるという。
・マタタビという名前の由来は、旅人がこの果実を食べると元気になって、また旅に出たくなるためという俗説が有名だが、これには否定的な見解が多く、アイヌ語のマタタンブ(冬に樹にぶら下がっている土産の意味)、あるいは古い和名の「和多々比(ワタタビ)」によるとする説が根強い。
・ネコがマタタビの果実を食べると健康被害を引き起こすという俗説が根強かったが、令和5年9月、岩手大学などの研究グループは、毒性も依存性もないことをアメリカの科学雑誌に発表した。
【マタタビの育て方のポイント】
・マタタビはネコの大好物であり、果実のみならず葉にも反応する。庭に植えれば近所のネコが集合して苗木を根こそぎにしてしまうため、住宅地で育てるのは難しい。
・つる性であり、自然環境では他の樹木に絡みついて育つ。人為的に育てる場合はフェンスに這わせたり、棚を作って管理するのが一般的な方法。つるの成長は早く、年間に1m以上伸びる。麻縄やシュロ縄で誘引して、つるが四方に拡散しないようにする。
【マタタビの品種】
より標高の高い場所に見られるマタタビの仲間。開花期には葉の一部が白ではなくピンク色に変わる。
マタタビの基本データ
【分類】マタタビ科/マタタビ属
落葉広葉/つる性
【別名】ネコナブリ/ワタタビ
マタタブ/ナツウメ
【学名】Actinidia polygama
【英名】Silvervine
【成長】かなり早い
【移植】難しい
【長さ】15m以上
【用途】猫用
【値段】─
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