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ブドウ/ぶどう/葡萄
Grapevine
【ブドウとは】
・ブドウ科の落葉つる性植物で、リンゴやイチジクと共に太古から果実を食用するため世界各地で栽培されてきた。日本にもノブドウ、ヤマブドウ、エビヅル、サンカクヅルなどが山野に自生するが、果物として流通しているのは小アジア~中央アジアを原産とするヨーロッパブドウと、北米を原産とするアメリカブドウを改良したもの。
・ブドウ(葡萄)という名は、ギリシャ語でブドウを意味するBotrusに、発音の近い漢字をあてたもの。かつては中国語でもブドウであり、日本のブドウが中国を経由して渡来したことを証明している。
・中国のブドウは紀元前126年に漢(中国)の武帝の家臣であった張塞が西域(中央アジア)から中国へ持ち帰ったものを起源としており、原産地であるフェルガーナ地方(現ウズベキスタン)でもBudawと呼んでいた。
・日本にブドウが伝わった経緯は不明。果樹としてのブドウ栽培が始まったのは平安時代より前とされるが、本格化したのは明治初期に欧米から多様な温室栽培のブドウが渡来したことによる。山梨県の勝沼はブドウの産地として知られるが、これは同地の大善寺に行基が立ち寄った際、夢で薬師如来にブドウ作りを教えるように示唆されたことにちなむという。
・雌雄異株または両性株で開花は初夏(5~6月)が基本だが、栽培環境によって多少異なる。当該年に伸びた枝から葉と対になって円錐形の花序を出し、小さな花を多数咲かせる。花には緑色をした5枚の花弁があるが、その上部は癒着しており、開花すると帽子を脱ぐように落ちる。
・果実は房状になり、枝から垂れ下がる。水分と糖分が多くて甘酸っぱく、生食のほかジャム、ゼリー、ジュース、ワイン、レーズン(干しブドウ)など多様に加工されて親しまれる。果皮の色は濃い黒紫が一般的だが、品種によって緑、淡い黄色、赤褐色など異なり、果実の大きさや形も品種による。果実には2~3個の種子を含み、野鳥によって拡散されるが、食用として店頭に並ぶのは「ジベレリン処理」という手法によって種なしになっているものも多い。
・ブドウの葉は掌状で浅く3~5つに裂ける。葉の裏面には綿毛が密生する。ブドウの学名vitisはギリシャ語で「絡む」を意味し、蔓から生じる巻きヒゲによって他物に絡まりながら育つが、木が若いうちはジグザグに伸びやすい。幹は直径2センチほどで樹皮は赤みを帯びた褐色となり、樹齢を重ねると縦に剥離する。、
【ブドウの育て方のポイント】
・多くの品種は北海道から九州まで広い範囲で栽培できるが、最適は以下のような土地である。①日照時間が長い、②湿度が低く、開花期に雨が少ない、③果実が熟す7~8月の温度が高く、昼夜の温度差が大きい。特に大切なのは①であり、日陰では生育不良となる。
・土質はあまり選ばないが、水はけと通気の良い砂質壌土かつ表層が腐植質に富む土地であればより良い。
・幹(蔓)は長く伸びるが普通は剪定を繰り返して長さ2m程度に維持する。果実は交配しなくても結果するが、そのまま放置すると味や形がよくないため、花後3週間以内に間引き(摘粒、摘房)をした方がよい。また、ブドウは病害虫が多いため、大切な果実には袋を掛けて保護した方がよい。
【ブドウの主な品種】
・コウシュウ(甲州)
甲府盆地で栽培される代表的なブドウの一種。東亜系のブドウで、黒海沿岸地方を起源とするヨーロッパブドウが中国で改良された品種の流れをくむ。年間の降水量が少なく、かつ水はけの良い砂質土壌を好む。熟期は遅いが果皮が肉厚で扱いやすいため普及した。
・キョホウ(巨峰)
大粒かつ甘味のある定番のブドウ。欧米系の雑種だが、日本で作出された。
・デラウェア
日本で最も多く栽培されるアメリカブドウ系品種の一つ。小粒の赤ブドウで、他の品種よりも早い時季に熟すのが特徴。どんな気候にも適応しやすい。
ブドウの基本データ
【分類】ブドウ科 ブドウ属
落葉つる性 広葉
【別名】─
【学名】Vitis spp.
【成長】かなり早い
【移植】簡単だが、掘り起こすのが難儀。
【高さ】~10m
【用途】果樹/棚
【値段】1200円~