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ツタ/つた/蔦
Boston Ivy
【ツタとは】
・北海道南部~九州に分布するブドウ科ツタ属のツル性植物。各地の山林に自生するが秋の紅葉が美しく、建物の壁面、石垣や塀などの装飾用あるいは盆栽として栽培されることも多い。
・ツタという名の語源には諸説あるが、「伝う」が有力とされ、木の幹や岩壁を伝って育つことによる。漢名は「常春藤」で、中国や朝鮮半島にも分布しており、有史以前に日本へ帰化したものと考えられている。
・ツルが上昇するのは、葉に対生して生じる巻きヒゲが他物に絡みつくことによるが、本種に特徴的なのは、ツルの先端に巻きヒゲが変化した丸い吸盤があること。始めに吸盤が吸着し、後に付着根(巻きヒゲ)を出すことで活着を強固にしている。
・ツタの葉は直径5~20センチ。表面は光沢のある鮮やかな緑色で、葉の縁にはギザギザがある。葉には長い柄があってツルから互い違いに生じるが、葉の大きさや形は枝によって異なる。短い枝の葉は長さ5~15センチと大きめで、先端が2~3つに裂けるが、長い枝の葉は小型の広い卵形になるか、完全に分離した3枚の小葉が一組になって生じる。
・ツタは地味な植物だが、歌に詠まれることが多く、俳句の世界では若葉の時季を「蔦若葉」、青々と茂っている夏の様子を「青蔦」や「蔦茂る」と称して夏の季語とする。別名のナツヅタ(夏蔦)は常緑性のキヅタに対するもので、冬季に落葉することによる。
・ツタの最大の魅力は燃えるような紅葉。七十二候の「楓蔦黄なり」は本種やカエデ類が色付き始めた頃で、「蔦紅葉(たもみじ)」は秋の季語。ツタは葉柄の上部に関節があるため、落葉の仕方も特徴的で、初めに葉身(葉の平らな部分)が落ちた後、葉柄が落下する。落葉後は張り巡らされたツルの様子がよく見える。
・開花は夏(6月~7月)で、短い枝の節から伸びた円錐形の花序(花の集り)に、黄緑色をした小さな花を咲かせる。花は直径3ミリほどと小さいが花弁が5枚ある。
・花の後にできる果実は直径5~7ミリほどの球形。11月頃になると藍黒色に熟し、表面に粉を吹く。水分を含むが食用にはならず、小鳥にも人気がないと見えて落葉後もしばらくは枝に残る。種子は黒褐色の楕円形。大きさは3~5ミリほどで、一つの果実に1~3粒ずつ入る。
・ツルは多数に分岐しながら長さ10m、直径3~5センチほどまで育つ。ツルには甘味があり、砂糖のなかった平安時代には早春あるいは秋に採取した樹液を煮詰め、「甘葛煎(あまからせん)」と呼ばれる甘味料を作った。このため別名にアマヅル、アマズラがある。
【ツタの育て方のポイント】
・日向を好むが半日陰にも耐える。明るい場所では上方へ伸びるが、暗い場所では地面を覆うように伸びる性質を持つ。
・土質を選ばずに育つが、基本的には湿気の多い土壌を好む。
・成長は早めであり、庭に植えて放置したものは駆除の対象になるほど。盆栽にも使われるほど芽を出す力は強く、剪定には十分に耐えるため、定期的に剪定した方がよい。冬季に地上部の全てを刈り取っても翌春には新芽を出す。
・挿し木で増やすことができるものの、生育は実生の方が良好となる。
【ツタに似た植物】
・アメリカヅタ
アメリカを原産とする近縁種で、大正時代に渡来したものが園芸用に普及する。葉は小葉5枚が一組になって生じ、小葉はツタよりも大きい。成長は早いが紅葉の美しさはツタに劣る。
・このほか本種に性質が似た植物には、エビヅル、ヤマブドウ、ノブドウ、ヤブガラシ、ツタウルシが、本種と同様に甘味料の原料となる植物にはアマチャがある。
ツタの基本データ
【分類】ブドウ科 ツタ属
落葉つる性 広葉
【学名】Parthenocissus tricuspidata
【別名】ナツヅタ/ツタカズラ
アマヅル/アマズラ
ニシキツタ
【成長】早い
【移植】困難
【高さ】5m~10m
【用途】壁体/公園/庭園/盆栽
【値段】─