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クズ/くず/葛
Kudzu
【クズとは】
・日本全国の山野、土手、草藪や道端に見られるマメ科の多年草。秋の七草の一つであり、葛根湯の原料となることで知られるが、旺盛な繁殖力で庭や緑地に侵入し、既存の樹木を枯死させることもある。
・ツルはエンピツほどの太さで硬い茶色の毛があり、あらゆる物に絡みつきながら長さ10m以上に育つ。細いツルを織ったものは葛布(くずふ)といい、着物や籠を作り、既に万葉集の時代にはこの繊維を使って織物をしたという記録がある。古事記や日本書紀にも「葛」が登場する。
・クズの葉は丸型で3枚の小葉が一組になって生じる。葉には長い柄があり、時間帯や天候によって葉の向きを変えることで蒸散や葉の温度を調整し、光合成等の効率化を図っている。
・葉はタンパク質に富み、若葉は茹でて食用に、成葉は傷口に貼れば止血に効果を発揮するという。また、葉は家畜の飼料になり、馬や山羊が好んで食べるため、ウマノボタモチ、ウマノオコワなどといった別名がある。
・葉の裏面には細かな白毛があり、風に吹かれて裏面が見える様を「恨み(裏見)」に掛けて歌に詠んだ。葉は天候によって開閉し、夜間には内向きに閉じる。
・葛根湯や葛粉の原料になるのは根の部分。肥大した根は地下深くに潜伏しており、長さは1~2m。大人の足ほどの太さがあり、重さは十数キロを超すこともある。根にはデンプンを多く含み、これを精製した葛粉は和菓子に用いる葛切や葛湯になる。
・葛粉は、根の外皮を取ったものを乾燥させた後に砕き、水にさらして沈殿させる作業を繰り返して作る。収穫の適期は10月~翌月だが、根の掘り起こしや精製の手間がかかるため、現代の葛粉はジャガイモで代用されることが多い。
・クズの開花は暑さの厳しい7~9月。梅雨明け間近の頃からマメ科らしい蝶形の小花が穂状に集まり、下から順に咲いていく。甘い香りのあるこの花は「酒を消す」といわれ、開花直後に摘み取り、風通しの良い場所で日干しし、シベを取り除いたものを煎じて飲むと二日酔いに効果があるという。花全体の長さは2センチほどで花色は赤紫が一般的だが突然変異が多く、白やピンクの個体もある。
・花の後には長さ10センチほどの鞘状の実ができる。サヤには褐色の毛があり、中には画像のような種子を10個前後含む。種子は硬質で直径4ミリほど。クズはこの種子と地下茎から生じる蔓によって爆発的に繁茂する。アメリカではテネシーダムを新設した際、土砂の流出を防ごうと日本のクズを導入して効果を得たが、今日ではグリーンスネークと呼んで厄介者扱いしている。
・一般に秋の七草といわれるものは本種以外に、オミナエシ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、ハギである。
【クズの育て方のポイント】
・根に根粒菌を共生させており瘦せ地でも育つが、確たる目的と管理を継続する労力(経済力)、気力がなければ絶対に敷地内に植えるべきではない。蔓は一日に30センチほど伸び、放置すれば建物も含めて全てがクズに覆い尽くされる。
・コミスジやウラギンシジミという蝶の食草であり、コミスジの幼虫は葉脈と葉身の一部を残してカーテン状のものを作って潜む。ウラギンシジミの幼虫は主に蕾と花を食べ、食べる部位に体色を合わせながら育つ。葉の縁がギザギザに食害されている場合、コフキゾウムシという甲虫が潜んでいる可能性が高い。
【クズに似た植物】
・フジ
クズの基本データ
【分類】マメ科/クズ属
落葉つる性広葉
【別名】真葛(まくず)/葛葛(くずかずら)
ウマノボタモチ/ウマノオコワ
【学名】Pueraria montana var. lobata
【英名】Kudzu
【成長】かなり早い
【移植】根を掘り起こすのが困難
【高さ】5m~10m
【用途】土留め/壁面緑化/薬用/食用
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