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キブシ/きぶし/木五倍子
Early spiketail
【キブシとは】
・北海道西南部、本州、四国、九州及び小笠原諸島や沖縄に分布する落葉樹。早春、他の花木に先立って咲く黄色いブドウのような花が幻想的な風景を作り、主に雑木の庭に使われる。
・日本では身近な山中の林や沢筋、海岸付近で普通に観察できるが、キブシ属に属する木は7~8種で、いずれも日本と中国南西部の限られた地域にのみ分布する。
・キブシの開花は新葉が展開する前の3~4月。前年に伸びた枝に小花の密集した花穂がぶら下がる。小花は直径7ミリほどの鐘型で、淡い黄色の花弁と萼が4枚ずつある。
・雌しべは1本、雄しべは8本あるが雌雄異株で、雄株に咲く雄花では雄しべの方がより長く、雌株に咲く雌花では雌しべの方が長い。花穂は普通4~10センチだが、雄花の方がより長い。キブシには変異が多く、中には花穂が20~30センチになるものもある。
・花の後には直径6~12ミリの球形の果実ができる。でき始めは緑色で、10月頃になると黄褐色から黒に熟す。果実の中には多数の種子が含まれ、これを蒔けば増やすことができる。果実はタンニンを多く含み、江戸時代の婦人が「お歯黒」に使った黒の染料であるヌルデの五倍子(ブシ)の代用になったことからキブシと名付けられた。
・キブシの葉は長さ7~12センチ、幅3~6センチの楕円形に近い卵形で先端が尖り、縁にはギザギザがある。若葉は赤みを帯びて光沢があり、秋になると黄葉または紅葉する。キブシは枝にも光沢があり、アーチ状に横へ広がる様は蔓性植物にも見える。
・幹は株立ち状になり、直径はそれほど太くならない。材は楊枝、木栓(材木と材木を結合させる釘のようなもの=ダボ)や吞み口(樽の栓)に使われる。
【キブシの育て方のポイント】
・半日陰でも育つ丈夫な花木であり、樹勢は強い。
・自然界では湿気のある場所を好んで育つが、庭植えの場合、特に土質は選ばず、移植にも強い。
・庭に用いる場合、花色が美しく、花穂がより長い雄株が好まれる。株の雌雄を見分けるのは難しいが、雌花は全体に緑っぽく、雄花は黄色が美しい。
・狭い庭で管理するには、冬の間に元気すぎる枝を間引く。花後3年以上経過した枝や根元から生えるヒコバエは基本的に不要。
・テッポウムシ及びコウモリガの被害があるため、見付け次第、駆除する。
【キブシの品種】
・ハチジョウキブシ(エノシマキブシ)
伊豆諸島を含めた関東南部と東海地方に分布し、葉が大きくて分厚くなる品種。全体に大型であり、花房はキブシよりも長く、花も大きいため見栄えがする。
・ナンバンキブシ
山口県、四国の海岸、九州(奄美大島及び徳之島を含む)に分布し、葉が三角形になる。
・ナガバキブシ
小笠原諸島(父島、兄島、弟島)に分布する、ナンバンキブシの変種(諸説あり)で、葉の幅が狭い。
・アカバナキブシ
赤紫の花が咲く品種
・斑入りキブシ
葉に白い模様が入る品種
キブシの基本データ
【分類】キブシ科/キブシ属
落葉広葉/低木
【漢字】木五倍子(きぶし)
【別名】キフジ/マメブシ
マメフジ/マメヤナギ
ゴンズイ
【学名】Stachyurus praecox
【英名】Early spiketail
【成長】かなり早い
【移植】簡単
【高さ】1~8m
【用途】公園/鉢植え
【値段】1000円~