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カツラ/かつら/桂
Katsura tree/Japanese Judas tree
【カツラとは】
・北海道から九州まで日本全国の山地に見られるカツラ科の落葉樹で、北海道では最も樹高が高くなる木。明るく開けた場所に育ち、特に奥山の谷や沢沿い、林縁に多い。左右対称の端整な樹形や新緑と黄葉の美しさから、万葉集や古事記にもその名が登場し、日本の銘木として海外でも知られる。
・カツラの仲間は、白亜紀や古第三紀から生き延びる原始的な樹木の一つ。かつては北半球に広く分布していたが、今日では中国と日本にのみ残る。
・葉は直径3~8センチのハート型あるいは卵形で、しおれるとキャラメル、綿あめ、あるいは醤油煎餅のような匂いがする。新緑の頃にも微かに香るが、秋の香りはかなり強く、少し離れた場所にいてもカツラの木があることが分かるほど。
・カツラの別名には「醤油の木」「コウノキ(香の木)」「抹香の木」などがあり、乾燥させた葉を粉にして抹香を作る。甘い香りの正体はマルトールという成分で、これは砂糖が焦げた際にも発生する。
・京都三大祭りの一つである葵祭では、アオイの葉とカツラの枝葉を組み合わせた「葵桂(あおいかつら/きっけい)」という装飾を用いるが、これは賀茂神社を祭る賀茂氏が、カツラを御神木としていたことに由来する。
・中国ではカツラを「連香樹」と記し、モクセイを「桂花」呼ぶ。なお「桂」という字は「香りの高い木」という意味を持ち、一般的にはシナモンの仲間を意味する。また、カツラという和名の由来には諸説あるが、「香出(カヅ)」の転訛とする説が特に知られる。
・カツラの開花は春(3~5月)で、新葉の展開前。雌雄異株で花には雌雄があるが、いづれも花弁や萼はなく、しべの基部は小さな苞に包まれる。
・雌雄の花を見分けるのはやや難しいが、雄株に咲く雄花の雄しべには紅紫色の葯があり、雌株に咲く雌花には3~5本の雌しべがある。小さなバナナのような実がなるのは雌株のみで、果実は秋になると黒褐色に熟す。
・カツラの幹は最大で直径2mにも達するが、まっすぐに育ち、枝が細いため、丈が長くて節の少ない良質な材が確保できる。材は年輪のはっきりしたクリーム色が基本だが個体差があり、赤味がかったものをヒガツラ(緋桂)、色が淡いものをアオガツラと呼んで区別することもある。
・広葉樹としては柔らかくて加工しやすいため、古い時代から造船や仏像に使われた。現代でも建材、家具材(特に鎌倉彫)、碁盤、将棋盤、漆器木地、楽器、寄木、版画板などに使われる。
【カツラの育て方のポイント】
・基本的には日向を好む陽樹だが、半日陰でも育てることができる。昨今は銀座など東京の中心部でも街路樹として使われているが、自生は湿気の多い肥沃地が多く、夏の暑さや乾燥が激しいと、葉焼け起こすことや、早期に落葉することがある。病害虫の発生は年間を通じてほとんどない。
・一般家庭のシンボルツリーとして使われる機会も増えているが、元来は株立ち状の樹形が美しい大木であり、植栽には相応のスペースが必要となる。剪定によって成長を抑え、樹形を整えることは十分に可能だが、葉を刈りこむような木ではなく、手入れにはセンスと技術が必要。一度にたくさん剪定すると根元や切り口から大量の新枝が発生し、樹形が乱れる。
・大木となると根が四方に隆起し、歩行の妨げになり得るため、公共のスペースに植栽する場合は留意する必要がある。
【カツラの品種】
・ヒロハカツラ(ウチワカツラ)
中部以北に分布する近縁種で、カツラよりも標高の高い場所に見られる。カツラは幹が直立するが、ヒロハカツラは枝が横に広がり、葉はカツラより幅広で円形に近く、直径は5~10センチ。また、カツラは葉の展開に先立って開花するが、ヒロハカツラは開花と葉の展開が同時。
・シダレカツラ
江戸時代に北上山地の早池峰山で発見された突然変異種で、枝が垂れ下がる。複数まとめて植栽されるシダレカツラの黄葉は圧巻であり、稀に公園などに見られる。
【カツラに似ている木】
フサザクラ科の落葉樹。葉はカツラと異なるが、似たような花と実を生じる。
カツラと同じようにハート型に近い葉をつけ、いずれもシンボルツリーとして人気がある。
カツラの基本データ
【分類】カツラ科/カツラ属
落葉広葉/高木
【漢字】桂(かつら)
【別名】コウノキ/オオツカ/オカヅラ
カモカツラ/マッコウノキ
ショウユノキ(醤油の木)
【学名】Cercidiphyllum japonicum
【英名】Katsura tree
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】10~30m
【用途】シンボルツリー/街路樹
【値段】1000円~